スマホもEVもすぐ話題に、シャオミが強い本当の理由――中国ビジネスに欠かせない「流量」の考え方とは

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

大企業編集部お勧め記事注目記事36Krオリジナル

スマホもEVもすぐ話題に、シャオミが強い本当の理由――中国ビジネスに欠かせない「流量」の考え方とは

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

中国で知っているテック系企業の経営者の名前を思い浮かべるなら、スマートフォン大手のシャオミ(小米)の雷軍CEOは最初に出てくるかもしれない。ひと昔であれば、アリババのジャックマー(馬雲)氏が有名だった。他にもよく話題になる経営者は、バイドゥの李彦宏氏、テンセントの馬化騰氏、GREEの董明珠氏などが挙げられるだろう。

これまで、モーターショーといえば車だけでなくコンパニオンが来場客の視線を集めていたが、今年大きく変わった。4月25日に開幕した2024年北京国際モーターショーでは、シャオミの雷軍氏自らが会場にやってきた。代表であり企業の広告塔となる雷氏の周りには人だかりができ、それだけで話題となりひいてはシャオミの新車への関心を持たせたのだ。雷氏の知名度は圧倒的で、多くの自動車会社を恐れさせている。理想汽車(Li Auto)のような有力EVメーカーですらもシャオミが自動車を製造した後、オンラインでの存在感は急激に低下した。会場に雷氏がやってきたことで、他の自動車メーカーも焼け石に水とは承知の上で、続々とトップ陣が会場に入り客寄せに励んだ。

テスラの値下げ攻勢に動じない、中国・小米汽車「15〜20年で世界トップ5の自動車メーカーに」【北京モーターショー】

中国マーケティングでよく使われる「流量」とは

シャオミは強い。中国で登場した無数のスマートフォンメーカーが激戦を繰り広げる戦国時代を生き抜いて、中国を代表するにまで成長した1社となっている。その強さは、製品クオリティやコスパはもちろんのこと、加えてネットユーザーを引き付けるマーケティング戦略もある。当初は、スマートフォンの予約販売台数を小出しにして、そのたびにニュースが出て注目を集め、その手法は「小米方式」と言われた。シャオミのファンを意味する「米粉(Mi Fan)」という言葉もあるが、実は特定ブランドのファンであり続ける人の割合は中国は日本に比べてすごく少ない。なので有名ブランドのシャオミでさえ、ファンを抱え込み続けるために情報を出し続け、消費者にシャオミの情報に関心が行くようにした。

シャオミしかり、中国におけるどれだけファンを抱え込んだかというときに使う単語が、中国進出や中国マーケティングでよく使われる「流量(トラフィック)」だ。シャオミの場合は雷氏自身がIPとなり流量を増やしている。シャオミに限らず、急に話題となり、天猫や京東をはじめとしたECサイトで爆売れするブランドが出てくるのも、流量で露出した影響によるものだ。KOLと呼ばれるインフルエンサーが話題を出し、フォロワーを増やしたりした流量が多い状態で自社のライブコマースや旗艦店に消費者を誘導することで、販売実績に連動する。淡々とモノづくりをするだけで、流量を活用しない中国企業は宝の持ち腐れで間違っているとまで酷評する記事もある。何もしなくてもいい製品であれば評価してくれる日本とは真反対だ。

「冷静になる」中国消費市場で勝つ。EC専門家が選んだ中国マーケ10大トレンド

例えば、日本でも販売されているLaifenという中国で人気なドライヤーブランドがある。ダイソンに似た製品で、低価格を武器に価格に敏感な消費者を獲得し売上を拡大した。しかし売上で勝っても総合的にダイソンを上回るわけではなく、世界的にはダイソンのほうが人気だ。それは魅力的な新製品をリーダー企業として世界で出し続けているからであり、そのために研究開発に惜しみない投資を行い、技術を蓄積しているためだ。中国新興ブランドの多くは売れてはいるが研究開発不足で、価値創造や品質管理においても大手海外ブランドとの間には依然として差がある。

次に目指すは「高価格化・ハイエンド化」

新興中国ブランドでよくあったのが、立ち上がったばかりの消費者向けの食品や商品を扱うスタートアップが莫大な資金調達を受けるというもの。これを流量に費やして、一気に知名度を高めて中国の若者に買わせて企業が成長するというやり方だ。今でこそこうした資金調達はだいぶ減ったが、この手のやり方が蔓延していたので、札束でものを言わせるような世界において仲介するKOLやプラットフォームにかなり金が流れ込んでいる。

「低価格」では生き残れない。ハイエンドの壁に挑む中国企業【CES】

そしてその次のステップで中国ブランドが目指すのは、商品の高価格化・ハイエンド化である。研究開発に投資する企業もあるが、OEMに依存する企業も多い。そしてハイエンド化した結果、各ジャンルにおいてしばしば価格に似合わないと中国ブランドが国内消費者から批判を受けるニュースをよく見かける。中国ブランドは、「国潮ブーム」で外国ブランドに負けないという愛国心を武器に中国国内での自立ができるようになった。だが、中国市場で外国ブランドに勝っただけであり、世界市場ではブランド力の面では大きく劣る。これが中国ブランドが台頭したときに今も起きる問題だ、と中国メディアは指摘する。

中国の「国潮」ブームとは何か 【山谷の特別解析記事】

また別の中国メディアはこうも指摘する。世界で評価される日本製品は、流量ではなく品質で評価されている。売れるために流量を集めるためにKOLに依存するのではなく、日本企業のようにより多くの注目を集める製品を中国ブランドは開発すべきだ、という指摘だ。なるほど確かに製品開発で中国企業よりも品質を求める日本企業は多いだろう。しかし逆に言えば、日本企業が中国や世界展開する際にはもう少し、「いいものは気づいて人気になり買ってもらえる」という受動的で待ちの姿勢ではなく、自らアピールしていくのも大事ではなかろうか。

中国製EVの猛攻で日本車が敗北?「BYDは王者トヨタに勝てない」―中国の自動車専門家が予言

(文:山谷剛史)

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録