高性能OCT検査装置と手術用顕微鏡を国産化、海外展開にも積極:中国「TowardPi」

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眼科医療機器の研究開発を手がける中国企業「図湃医療(TowardPi Medical)」がこのほど、シリーズDで2億元(約40億円)を調達した。出資は経緯創投(MPCi)が主導し、高特佳投資(GTJA Investment)も参加した。図湃医療は、清華大学の研究成果をベースに技術の蓄積と製品の開発を進め、事業化にこぎつけた。設立から7年ほどで7回の資金調達を終えている。

コア技術の光干渉断層撮影(OCT)は高速、撮影深度、高分解能を特長とする。従来のOCT装置はスキャンスピードが1秒当たり7万~10万回、撮影深度が2.7~4.5ミリだったが、同社は清華大学の研究チームが開発した波長掃引式OCT技術によって、スキャンスピードを1秒当たり最大40万回、撮影深度を最大14ミリに向上させ、超広角の光干渉断層血管撮影(OCTA)とパノラマ合成も可能にして実用性をさらに高めた。

共同創業者の王穎奇社長は「撮影深度が向上したことで、目のあらゆる構造を一度に捉え、眼科に関連する大部分の病状をカバーできるようになった。病院側にとってのメリットは、1台の装置で診断に関わる多くの問題を解決でき、装置の数と人件費の削減にもつながることだ」と説明した。

2023年に中国の公立病院が落札を公表したOCT装置のうち、同社製品の売上高は全体の26.6%を占め、落札価格は平均157万6000元(約3300万円)だった。今年のOCT装置の販売台数は300台近くに上る見込みだ。

同社がさらに力を入れる手術用顕微鏡は眼科で最も重要な大型手術装置だが、中国では海外メーカーが市場を独占しており、国内メーカーの製品が臨床現場で使われることはほぼ無い。

中国メーカーは従来の光学および機械設計において技術的な違いを生み出そうとしているが、それは非常に難しいという。こうした中、手術用顕微鏡の分野でも進むデジタル化とスマート化が、中国メーカーに大きなチャンスをもたらしている。

手術用顕微鏡のイメージ

例えば手術用顕微鏡の開発で、同社は周波掃引式OCT技術によってスキャンスピードと解像度を上げ、それを顕微鏡の技術に融合することで「OCTとOCTAを使ったリアルタイムな3D手術ナビゲーション」を可能にした。従来の手術ナビゲーションは断層データのみを提供し、しかも医師が必要とする断面データを確実に提示できるとは限らなかった。同社の3D手術ナビゲーションは、さまざまな部分の構造を3Dデータとしてリアルタイムに分析できるため、医師は患者の病歴を踏まえて病状を診断し、手術の効率と精度を高められる。

最近開催された学会で、図湃医療は手術用顕微鏡の「撥雲」と「拂雲」の2シリーズを発表し、今年7~9月の発売を予定している。

王社長は、製品開発の方針について「水平」と「垂直」をキーワードに挙げた。水平とは、消化管内科、耳鼻咽喉科や眼科、脳神経外科などにまでOCT装置と手術用顕微鏡の活用を広げることで、垂直とは、眼科の中でもレーザー治療装置といった他の技術や製品の展開を模索することだ。

同社は、ここ2年で各種製品を集中的にリリースして収益化を加速させ、2024年の売上高は3億元(約60億円)を超える見込みだ。

海外事業では、欧州連合(EU)やアジア太平洋の先進国を中心に50カ国以上で代理店と契約を結び、すでにある程度の売り上げを生んでいる。今後もグローバル化を進め、将来的には中国と海外の売上高をほぼ同じにすることを目指す。

*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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