結局は中国「ニューリテール」の敗北か…無人コンビニ「便利蜂」が大量閉店 ”システムの過信が失敗のもと”

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結局は中国「ニューリテール」の敗北か…無人コンビニ「便利蜂」が大量閉店 "システムの過信が失敗のもと"

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中国のスマートコンビニチェーン「便利蜂(Bianlifeng)」は、かつて中国の技術を活用した「ニューリテール」の代名詞として注目を集めたが、このところすっかり影が薄くなっている。

2017年に設立された便利蜂は、ビッグデータとアルゴリズムを用いた在庫管理やサプライチェーン管理で頭角を現し、わずか3年で全国20都市に1500店以上を出店。20年5月下旬には、北京市内に展開する500店余りが黒字化を達成したと発表した。

当時、36kr Japanが公開した記事「創業3年で店舗数がセブンーイレブンを超えたスマートコンビニ『便利蜂』、成功の鍵とは」コンビニ大国の日本で大きな反響を呼び、閲覧数(PV)が数十万に達した。

【徹底比較】創業3年で店舗数がセブンーイレブンを超えたスマートコンビニ「便利蜂」 成功の鍵とは(一)

2021年、便利蜂の店舗数は2800店となり、チェーンストア業界団体の中国連鎖経営協会(CCFA)が発表したコンビニランキングで11位に浮上した。同社は、この勢いに乗って23年までに1万店を達成すると宣言した。ところが、22年には店舗数が2005店に減少し、ランキングは15位に後退。新型コロナウイルスの流行も影響し、人員削減と給与カットを開始した。24年5月現在の店舗数は1510店で、ランキング25位に沈んでいる。

店舗数の縮小は、便利蜂のキャッシュフローが悪化していることを示している。しかし、企業情報検索サイト・天眼查によると、2020年5月に実施した資金調達が最後で、同社としては珍しく出資者も調達額も明らかにしていない。

便利蜂の計画では、景気が回復して大都市のオフィスビルの稼働率が改善されれば、全体的な店舗数も徐々に増加していくはずだという。状況がどう変化しようとも、同社は人間のスタッフよりも自動化システムを活用した店舗管理のほうが優れているとの信念を貫いている。

システムの過信が失敗のもと

便利蜂は、「アルゴリズム革命」をうたい文句に加盟店を募集してきた。デジタル化あるいはスマート化されたツールを活用し、競合他社よりもはるかに少ない従業員数で店舗運営できることが売りだ。

創業者の荘辰超氏は北京大学を卒業した数学の天才で、人間には環境の変化に対応して迅速な意思決定を下すことはできないと考えている。荘氏は「人間と自動化システムを連携させた場合、どちらの強みも最大限に発揮できない」との考えから、最終的に自動化システムの判断を完全に信頼する方針を固めた。

2018年からは、物流や商品製造を含むコンビニ運営の各プロセスを全て自動化し、蓄積したビッグデータとアルゴリズムで動かしている。店舗の立地選定や商品選び、従業員の研修やシフト編成、店舗運営などにもアルゴリズムが生かされている。

しかし、現実は理想どおりには進まない。2023年9月、便利蜂はフランチャイズ加盟店の募集を開始した。加盟事業者は当初、アルゴリズムが収入を増やし、仕事の負担を軽減してくれると信じていた。しかし実際に運営してみると、従業員たちはデバイスやシステム、専用アプリを運用するのに多くの時間を費やし、多額の損失にも直面する結果となった。SNSには「便利蜂の従業員はシステムの決定に完全服従する『ロボット』で、人としての温もりがない」といった内容の投稿が相次いでいる。

フードテックメディアの毎日食品(Foodaily)が、便利蜂の実情を詳しく報じている。勤務中の従業員の耳元では、常に「対応すべきタスクがあります」という音声が鳴り響き、対応が終わるまではタスクを表示するPDA(携帯情報端末)が振動し続ける。タスクは大小さまざまで、細かいプロセスまでシステムに管理される。

例えば「白菜入りの肉まんを5個蒸す」というタスクを与えられると、従業員はPDAで白菜入り肉まんのパッケージに表示されたQRコードをスキャンし、PDAに「5」と入力する。スマート電子レンジに入れた肉まんが蒸しあがると、取り出して写真を撮影し、システムに送る。これでようやくタスクが完了する。

便利蜂の店舗では通常、掃除や調理、商品棚の整理など、営業中のタスクが80余りあり、週末には100を超えることもあるという。全てのタスクは所要時間が決められている上、夜間営業中のタスクはとくに多くて忙しい。夜シフトの従業員は「ちょっと手を休めても、次のタスクが待っている。毎日疲れきっている」とし、ミスがあればペナルティを課されると嘆息した。

もっと耐え難いのは、アルゴリズムが頻繁に誤った指示を出すことだという。例えば、実際の商品在庫が「3」あるのにPDAでは「0」と誤表示されると、システムが商品の補充を要求してくる。もし商品を補充しなかったり、別の商品を補充したりすれば、タスク未完了として罰金が科されるというのだ。

創業者の荘氏の構想では、運営上の意思決定をシステムに任せることで、店長や従業員は接客に時間を使うことができ、消費者により満足してもらえるはずだった。しかし実際は真逆で、店長も従業員もシステムに完全に支配され、煩雑な作業が気持ち良く接客する余裕を奪ってしまった。クレーム投稿サイト・黒猫投訴に寄せられた便利蜂への苦情は1515件に上り、ローソン、ファミリーマート、セブンイレブンに対する苦情の総数を上回った。

日本でセブンイレブンを立ち上げた鈴木敏文氏は著作の中で、小売業に必要なのは変化への対応だと強調している。

中国連鎖経営協会が発表した2023年の中国コンビニ店舗数トップ10には、中国企業8社と外資系企業2社が入った。外資系はいずれも日系コンビニで、ローソンが6330店で5位、セブンイレブンが3906店で7位。ファミリーマートは2707店で11位だった。

23年中国コンビニ業界、地元勢の拡大続く。日系1位はローソン、ファミマはトップ10圏外に

※こちらの記事は再掲載です。

原文:(8月7日付)「アルゴリズムに人間の店員が支配される」、全てをシステムが決める中国の自動化コンビニ「便利蜂」の大誤算

(編集・36Kr Japan編集部、翻訳・田村広子)

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