従来のセメントに代わる低炭素型固化材、中国で活用進む。新興企業が生産拡大し、グローバル展開も視野

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中国では、セメント・コンクリート業界の二酸化炭素(CO2)排出量が全体の10%に上るという。中国政府がCO2排出削減を目指す中、同業界は低炭素化に向けた試練とチャンスに直面している。

建設業界がCO2排出のピークアウトを達成するうえで、一般的なポルトランドセメントの代わりに、大量の固形廃棄物を使って作られた「低炭素型固化材」を使うことが新たな選択肢として注目されている。エネルギー市場分析のブルームバーグNEF(BNEF)によると、低炭素型固化材を手がけるスタートアップ企業は2010年以降、累計9億ドル(約1300億円)を調達してきた。

2015年9月に設立された「華晟創元(Huasheng Genesis)」は、高性能な低炭素型固化材の開発・製造を手がけている。北京市の「専精特新(専門化、精密化、特色化、斬新化)」中小企業と中国の国家ハイテク企業に認定され、23件の特許を保有、5つの業界標準の制定に関わっている。セメントやコンクリートの低炭素化技術の改良に注力し、冶金、化学工業、火力発電から出る固形廃棄物を原料として、従来のセメントに代わる低炭素型固化材の製造をメインに展開している。これまでに、湖南省郴州市、内モンゴル自治区シリンゴル盟、雲南省玉渓市、陝西省宝鶏市の4カ所に生産拠点を建設し、全体の生産能力は100万トンを超えた。

同社は高炉水砕スラグをはじめ、石炭系固形廃棄物、リン系固形廃棄物、非鉄スラグ・冶金スラグなどのさまざまな固形廃棄物を原料に、独自の配合で低炭素型固化材を量産できることが強みだ。

創業者の陳向陽氏は「川下の顧客と共に、固形廃棄物ベースの流動化処理土や特殊モルタル、超高性能コンクリート(UHPC)、路盤充填材、生態系修復用充填材といった製品の開発や活用シーンの開拓を進め、低炭素型材料の製造から活用に至る総合ソリューションを確立した」 と語る。

陳氏によると、同社が製造する低炭素型固化材は、CO2排出量が従来のセメントの約10%、エネルギー消費量がわずか20%にとどまる。また価格が安いため、顧客の使用コストは15~50%減少するという。

低炭素型固化材は、鉱山充填(埋め戻し)、地盤工学、生態系修復、路盤材、コンクリート製品、建設補助材など、従来のセメントが使われていた分野の大部分で幅広く活用できる。同社は、この中から鉱山充填に絞って事業をスタートさせた。

同社は、鉛・亜鉛やタングステン、リン、石炭などの鉱山をターゲットとしており、現場付近に生産ラインを設ければ、顧客は少なくとも15%のコストを削減できるという。陳氏は、多くの鉱山が新たに充填拠点を設計する際、低炭素型固化材の採用を最優先に検討しており、向こう5年ほどは活用が急速に広がっていくとの見方を示した。

鉱山充填のほかにも生態系修復、道路等安定処理、ごみ処理、ヘドロ固化などに使う専用の固化材を開発し、実用化を進めている。

陳氏は、生態系修復と道路等安定処理の市場も今後数年にわたり爆発的に成長し、コンクリート製品においても低炭素型固化材の活用が着実に進むと予測した。

海外市場も積極的に開拓している。現在は、アフリカ・ザンビアの大規模鉱山プロジェクトで提携しており、低炭素型固化材の生産ラインの建設を計画している。また北欧のファンドと提携して、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)への対応を進め、欧州市場に参入する準備を進めている。

今後も生産能力の拡大を続け、既存の生産拠点4カ所に加えて、今年末までに7~8カ所の生産拠点を建設する計画だ。

中国のセメント・建材業界では、政府が進めるCO2排出削減によって、グリーン化と低炭素化が必然的な流れとなっており、低炭素型固化材は大きな可能性を秘めている。2035~60年には、従来のセメントのうち少なくとも半分が低炭素型固化材に代わるとの予測もある。

昨年黒字化を果たした華晟創元は、来年から再来年にかけて研究開発投資の拡大を計画している。陳氏は「引き続き研究開発を通じて技術革新を進め、技術力を高めていく方針だ。低炭素型固化材の先進技術とセメント業界の先進設備・技術を組み合わせ、低炭素型固化材の生産量を増やしたい」と話した。

*1ドル=約146円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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