デジタルツイン技術で地球の「クローン」を作る 「51WORLD」が香港で上場へ

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デジタルツイン技術を手がけるテック企業「51WORLD(北京五一視界数字孿生科技)」がこのほど、プレIPOで2億元(約40億円)の資金調達を実施した。同社はこれまでも、光速中国(Lightspeed China Partners)、雲九資本(Sky9 Capital)、センスタイム(商湯科技、SenseTime)などから資金を調達している。

関係者によると、51WORLDは香港証券取引所がハイテク専門企業のために導入した新たな上場規則「チャプター18C」に基づき、間もなく上場を申請する計画だという。2023年3月末の導入以来、この新規則に基づき上場申請を行ったのは、バイオテック企業の晶泰科技(XtalPi)、車載チップメーカー黒芝麻智能(Black Sesame)、協働ロボットメーカー越疆科技(Dobot Robotics)の3社のみ。

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2015年に設立された51WORLDは、3Dグラフィックスや物理シミュレーション、人工知能(AI)テクノロジーをベースとしたデジタルツインとソリューションを提供する。同社は17年以降、仮想空間に地球を丸ごと複製する「地球クローン計画」を打ち出している。

米NVIDIAのジェンスン・フアン(黄仁勲)CEOも、今年6月に開催されたコンピューター関連の大型展示会「Computex 2024」で、将来の気候変動を予測する地球のデジタルツイン「Earth-2」を発表している。

デジタルツインとは、現実世界のデータを収集して仮想空間内に「クローン」を作る仕組みのこと。現実世界と全く同じ環境を仮想空間に再現し、その中でさまざまなシミュレーションや検証、予測、制御ができるようになる。

デジタル経済が勢いを増すなか、デジタルツイン技術は産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支える基盤として、製造業や都市管理、自動運転、建築設計などの分野で広く活用されるようになっている。

51WORLDは、コンピューターグラフィックス(CG)とシミュレーションを中心としたコア技術を構築し、デジタルツインプラットフォーム「51Aes」 、データシミュレーションプラットフォーム「51Sim」 、デジタル地球プラットフォーム「51Earth」という3つの主要プロダクトを発表した。

51Aesはデジタルツインと関連ソフトウエアを提供する。例えば緊急事態への対応では、対象区域全域の環境情報を監視・把握し、潜在的なリスクに対してアラートを発することにより、緊急対応における多部門の連携を可能にする。51Aesは監視やアラート、意思決定支援、救助活動、社会動員などに対して技術面で強力なサポートを提供する。

Aesの活用例(出典:51WORLD)

デジタルツインは構築に時間がかかり、コストもかさむため、51Aesは企業が迅速に運用開始できるようデジタルツインのSaaSプラットフォーム「WDP」を立ち上げた。WDPを通じて企業は開発ツールと高性能なオープンAPIを利用できるほか、マルチソースのデータインポートにも対応しており、企業がデジタルツインを気軽に利用できるようにした。

51WORLDは2017年、自動運転やエンボディドAIなどに代表される新たな分野に特化した51Simを開発した。データ駆動型シミュレーションを始めとするコア技術を駆使し、自動運転向けにシミュレーションテストなどを提供している。51Simは現在商用化され、数百社の企業にサービスを提供している。

消費者向けには今年3月、オンライン制作・公開プラットフォーム51Earthをリリースし、3Dデジタルシティ、地球のクローン作成ツール「51Earth Builder」、開発者向けソフトウエアスイート「51Earth Dev Kit」を無料で公開。3Dコンテンツクリエイターやデザイナー、一般ユーザーが都市の3Dデータを取得するコストを削減し、3Dコンテンツの作成を簡素化することで、アプリケーション開発効率を向上させる。

関係資料によると、51WORLDの3つの主要プロダクトは、世界200都市以上の企業1000社以上に利用されているという。主な顧客には、中国移動(チャイナモバイル)、中国聯通(チャイナユニコム)、中国電信(チャイナテレコム)、ファーウェイ(華為科技)、NTTデータ等が名を連ねている。また北京郊外に位置する雄安新区のBIM(Building Information Modeling)管理プラットフォームや、インドネシア・ジャカルタのCIM(Construction Information Modeling)プラットフォームなど、多くのデジタルツイン応用プラットフォームを実現させた。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・北村一仁)

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