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AIを活用したデジタルヒューマンを開発する中国企業「風平智能(Fullpeace)」がこのほど、シリーズAで約1億元(約20億円)を調達した。璀璨資本(Bright Capital)と華鯤資本基金が共同で投資し、滙財資本、北京大学人工知能創新センターの雷鳴主任、清華大学関係のファンドなどを含む既存株主全てが参加した。この資金はデジタルヒューマンや、AIマーケティングソリューションの最適化などコア技術の研究開発に用いられる。
風平智能の林洪祥CEOは、中国でいち早くビッグデータとAIに取り組んできた専門家で、初めて創業したネット保険プラットフォーム「大特保(Datebao)」が2019年に買収されると、新たな事業として風平智能を創業した。
同社は、インシュアテック(保険+テクノロジー)に特化していた大特保での経験と強みを生かし、AIが保険商品をレコメンドする「保険査査(Baoxianchacha)」を開発した。保険査査は深層学習モデルのTransformerをベースに、保険商品の情報を中心としたテキストや動画を生成することができ、情報を必要とするさまざまな利用者の需要に低コストで応えることができる。
最初の創業では保険やマタニティ・ベビー、ゲームなどの分野にも取り組み、試行錯誤を繰り返した結果、林氏はこれらのビジネスに共通しているのはAIとコンテンツであり、ライブ配信に後押しされ市場でのニーズが高まっていることに気づいた。そこで風平智能は2022年に、質の高いAIマーケティングコンテンツを生成するデジタルヒューマンを単独で商品化した。
デジタルヒューマンには大きく分けて、3Dアバターと、ほぼリアルな人間に近いものとがあり、風平智能が開発に取り組むのは後者だ。
デジタルヒューマンに取り組む企業が独自のコア技術を持つケースは多くないが、風平智能はデジタルヒューマン・プラットフォーム用の画像モデル、音声モデル、および中規模パラメータのモデルを含め、自社で開発した大規模言語モデル(LLM)を持つ。LLMについては、主にオープンソースを基にチューニングや整理統合を施して個別のシーンに対応できるようにしている。
そのほかにも風平智能は、デジタルヒューマンの改良、双方向型デジタルヒューマンの感情理解や自律的行動制御といった難しい課題の解決に力を注いできた。
林氏は、モバイルインターネット時代のアプリ改良と現在のAI発展が目指すものは同じで、いずれも好ましい事業化モデルを模索することと考えている。抖音がレコメンドアルゴリズムという基盤技術をエンターテインメントと組み合わせたのは大変うまくいった成功例であり、こうした経験は風平智能の業務にも応用可能だ。デジタルヒューマン技術とマーケティングを組み合わせることで、優れた事業化モデルや収益化の手段を実現できる。
風平智能は2022年に、法人向けのデジタルヒューマンによるライブ配信プラットフォーム「風平IP智造」を発表した。昨年、同社の提携企業が実施したライブ配信では、デジタルヒューマンを導入した場合のGMV(流通取引総額)が1日当たり1億元(約20億円)を超えた。現在は法人向け事業に占める割合は小さく、API技術の提供やマーケティングソリューションAI動画の提供による売上高のほうが大きい。
ライブ配信を行うにはプラットフォームとの提携が必要だが、利益配分の難しさなどプラットフォーム特有の課題もある。そのため風平智能では現在、消費者向け高画質動画の提供と、主に金融や医療分野におけるAIチャットに力を入れている。なかでもデジタルヒューマン生成プラットフォーム「1号AI」は今回の資金調達における重要なポイントで、投資収益率(ROI)が非常に優れている。
1号AIは、デジタルヒューマンとAI、RPA(Robotic Process Automation)技術を組み合わせ、AIの頭脳を持つリアルな外見と声のデジタルヒューマンを生成することができる。ユーザーには2タイプあり、ひとつは医師や弁護士、教師など小規模法人もしくは大規模個人事業者が自分の代わりに働いてもらう。
もうひとつは消費者、つまり提供されるサービスを利用する側の人たちだ。専門システムと連携するAIと対話したり、弁護士や保険コンサル、医師といった専門家にビデオ通話で質問したりできる。
企業向けに提供する高品質のデジタルヒューマンは価格が数千元~数万元(数万円~数十万円)とさまざまで、消費者向けでは用途に応じて百元(約2000円)以下のものもある。最も売れているのは数千元のものだ。
風平智能はすでに損益分岐点に達しており、利益が増え続けている。今回調達した資金は主に消費者向けのサービスに使うとともに海外業務の展開をより拡大するとしている。
*1元=約20円で計算しています。
(翻訳・36Kr Japan編集部)
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