中国発「空飛ぶトラック」、最大積載量3.5トン・航続距離1000キロに挑戦

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中国政府は2024年の政府活動報告に初めて「低空経済」を盛り込み、バイオテクノロジーや民間宇宙技術開発、低空経済などの分野を新たな成長エンジンとして発展させる方針を打ち出した。また、工業情報化部など4部門が共同で「一般航空向け装置の技術革新と活用プラン(24~30年)」を発表し、30年までに一般航空機の普及を促進する計画を明らかにした。

中国はすでに世界最多の民生用ドローンの特許技術を持ち、多くの企業が電動垂直離着陸機(eVTOL)の分野に参入している。

その中で「牧羽天航空科技(Muyutian Aviation Technology)」(以下、牧羽天)は、大型積載可能なeVTOLの開発に注力しており、製造までを自社のエコシステムで進められるメーカーだ。有人飛行用と貨物輸送用の2種類を手がけており、主力の貨物輸送用は物流だけでなく、空中での非常用通信や森林火災の消火、人工降雨、海上での捜索・救助などにも使える多機能な輸送プラットフォームだ。

eVTOLが垂直離陸して一定の高度に達した後、固定翼での飛行に移行し、再び垂直着陸するまでの流れは「トランジション飛行」と呼ばれる。牧羽天の王勇会長は「トランジション飛行は、eVTOLの開発で技術的に最も高いハードルとなっている。世界では1000件近くのプロジェクトが進められているが、これまでに最大離陸重量が1トンを超える機体でトランジション飛行に成功したメーカーはわずか8社にとどまる。当社はその5番目のメーカーであり、1トン級ハイブリッドeVTOLでは世界で初めてトランジション飛行を成功させた」と話した。

牧羽天が開発する貨物輸送用eVTOLは「空飛ぶトラック」とも呼ばれている

現在、多くのeVTOLメーカーは電動モーターのみを採用しているが、王会長は「電動技術には安全性や信頼性の課題があり、飛行制御システムもまだ完全に確立されていない。業界全体が理論と技術の模索段階にある」と指摘した。一方で、牧羽天は燃料と電気を動力源とする「ハイブリッド技術」を採用している。効率の良い燃料エンジンとフレキシブルに制御できる電気モーターの特長を併せ持っており、離着陸時は電気を使い、飛行中には燃料を使いながら発電機付きエンジンでバッテリーに充電することで地上での充電が不要となるため、複雑な環境下でも効率的で安定した飛行が可能になる。このハイブリッド技術により、電動タイプより積載量と航続距離が数倍になり、飛行時のコストも削減できるという。

牧羽天が開発する貨物輸送用eVTOLは「空飛ぶトラック」とも呼ばれ、「AT1300」と「AT8000」という2モデルがある。AT1300は離陸重量1.3トンのハイブリッドeVTOLで、最大積載量が500キロ、航続距離が1000キロに上る。今年に入ってすでに、トランジション飛行テストを終えた。現在は耐空証明を申請中で、年末までに中国民用航空局の型式証明(TC)を取得する見通しだという。

AT8000は、最大積載量が3.5トンで、航続距離は1000キロを誇る大型eVTOLだ。王会長は「最大離陸重量は8トンに上り、世界第2位の米国製品の4.2~4.3トンを大きく引き離している」と強調する。主に道路インフラが整っていない地域や、迅速な輸送が求められる物流シーンでの活用を想定している。すでに機体の設計は完了しており、現在、プロトタイプによるテスト飛行が進行中。今年後半には、初飛行を予定している。

王会長は「中国の(大型貨物機・大型ドローン・小型ドローンを使う)三段階航空輸送システムはトンキロ当たりのコストが6元(約130円)に上る一方、当社の製品はドアツードアのサービスを提供可能で、トンキロ当たりのコストは3元(約60円)で済む」と述べ、コスト削減効果を強調する。また「3000~4000km圏内の輸送では、当社eVTOLの方が大型貨物機より効率的だ」とし、将来的に従来の物流手段を置き換える可能性にも言及した。

牧羽天は、eVTOLのコンセプトやデザイン、性能、構造に加え、駆動用モーターや電気システムの設計から製造までの全工程を自社の管理下に置いている。また、高性能な航空機用モーターを独自開発し、活用シーンに応じた柔軟な設計が可能なため、機体とモーターを最適化し、全体の性能向上を実現している。

*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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