BYD、日本市場で勝負の値下げ “最後の一押し”狙う新価格と新モデル

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中国の電気自動車大手比亜迪(BYD)の日本法人「BYD Auto Japan」は2025年4月1日より、日本向け車種のモデルレンジと価格を一部改定すると発表した。同社は日本市場において「創業期から成長期」への転換期にあるとし、値下げ戦略によって消費者への「最後の一押し」を目指している。

今では世界トップの新エネルギー車(含PHEV・BEV)メーカーとして知られているBYDだが、2015年に京都府のバス事業者「プリンセスライン」に大型電気バス「K9」を5台納入したことをきっかけに、日本でのEV事業を本格的にスタートさせた。その後、全国の事業者へ電気バスや商用EV、電動フォークリフトの納入を経て知名度を高め、2022年7月には日本の乗用車市場への本格的参入を発表した。

日本向けには、コンパクトSUV「アット3」、コンパクトハッチバック「ドルフィン」 、そしてミドルセダン「シール」の3車種を発表し、それぞれ2023年1月、同年9月、2024年6月に発売された。

中国BYD、1〜3月販売が初の100万台突破 海外でも110%増の20万台

BYDは日本での乗用車販売開始以来、2025年3月末までの累計販売台数は4211台となった。2025年に入ってからはアット3が164台、ドルフィンが208台、そしてシールが144台を販売。台数だけ見れば少なく映るかもしれないが、知名度がほぼ無い状態で始まった乗用車販売、しかも中国メーカーであることを考慮すれば、かなり健闘していると言えるだろう。なお、電気バスは2025年4月現在、日本全国で約350台を納入している。

こうした中、「BYD Auto Japan」はモデル構成と価格の見直しを発表した。

まず、新たに設定されたのは「ドルフィン」の新モデル「ドルフィン Baseline」だ。こちらは従来の通常モデルと同じスペックと主要装備を持ちながら、普通充電用200 Vケーブルやフロアマット、三角表示板、NFCカードキーをオプション装備品にしたモデルとなる。ドルフィンのこれまでの販売比率は通常モデルとLong Rangeが56:44となっており、意外にもその差は少ない状況だ。さらに価格を抑えたBaselineに置き換えることで、低価格モデルの販売比率はさらに上がることだろう。

BYDは2024年11月にドルフィン導入1周年を記念し、限定車「ドルフィン Baseline」を100台限定で発売され、予想以上の反響を受けた。その結果、今回正式なカタログモデルとして恒常ラインに追加された。また、高出力モーターと大容量バッテリーを備えた「ドルフィン Long Range」は、374万円という新価格が設定された。これにより、ドルフィンの価格帯は以前の363万〜407万円から299万〜374万円へと刷新され、幅広い顧客層への訴求力をさらにつけていく。

両モデルのボディサイズは共通で、全長4290 mm x 全幅1770 mm x 全高1550 mm、ホイールベース2700 mm。Baselineは最高出力94 hp・最大トルク180 Nmの前輪駆動、バッテリー容量44.9kWhで航続距離は400km(WLTCモード)となる。一方、Long Rangeは201 hp・310 Nmとかなりパワフルな仕上がりで、58.56kWhのバッテリーへと拡大し、最大476kmの航続距離を実現している。

今回の価格改定はドルフィンだけではない。日本で最初に発売された「アット3」にも適用される。2024年3月に新モデルが登場した際には、価格が440万〜450万円へと引き上げられていたが、今回は装備を据え置いたまま、418万円からの販売に切り下げられた。

かなり魅力的な価格設定となったわけで、発表から10日が経過した現在、現場ではどんな変化が起きているのだろうか?BYDオート営業部に聞いてみたところ以下の回答を頂いた。

「値下げ価格のインパクトは大きく、20代のカップル層の来店が増えた印象です。初めてのマイカーも多いそうで(初めてのEVってことかもしれませんが)、やはり燃油高止まりの昨今、可処分所得も厳しい中、若い層の倹約家も含めてのご来場に今後も積極的にアプローチしたいと考えています」

なお、これらには以前と同じく政府から「CEV補助金」が適用される。助金額はアット3、ドルフィンともに35万円であり、実質的にドルフィン Baselineは264万2000円、ドルフィン Long Rangeは339万円、アット3は383万円で購入できる。まさらに、一部自治体では独自の補助金も上乗せされる場合もある。

BYDは日本での乗用車販売以前から密かに注目されており、なおかつ価格を抑えた「バリュー・フォー・マネー」の販売戦略や長澤まさみ氏を起用した宣伝戦略などで話題づくりを得意としてきた。それがこの2年強の販売台数につながっているわけだが、これからはいかにこの勢いを維持し、引き続き競争力を見せつけていくかが肝心となっている。BYD Auto Japanも「創業期から成長期」への転換に入っていると認識しており、今回の価格改定はそれに向けた意思表示と言える。

確かに日本の同級クラスのガソリン・ハイブリッド車種と比較すると依然として割高だが、より手の届きやすい価格設定で、購入まであと一歩のところで決めかねていた消費者層にとっての「最後の一押し」になるかもしれない。これまでのBYD購入層を「アーリーアダプター(新製品を比較的早い段階で受け入れる層)」と位置付けるのであれば、これからはそれに追随する「アーリーマジョリティ」や、ガソリン車からの乗り換えをさらに促進する段階に入っていく形となる。また、すでにクルマを持っている層の2台目需要も狙えることだろう。

BYDはショールームと整備拠点を備えた正規ディーラーを2025年末までに100店舗へ拡大する計画を進めており、4月中旬時点でその数は40店舗、ショールームを備えない仮拠点「開業準備室」を含めると61店舗になる。また、年内には日本市場向けにPHEV車種の発表も予定しており、BEVの日常使用に不安を感じているユーザー層への訴求力も高まっていくだろう。

中国BYD、日本市場にPHEV投入。EVとPHEVの「両輪戦略」で攻勢

(文:中国車研究家 加藤ヒロト)

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