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電気自動車(EV)ブランド「問界(AITO)」で知られる中国の中堅自動車メーカー「賽力斯集団(Seres Group)」(以下、セレス)は4月28日、香港取引所に新規株式公開(IPO)を申請した。すでに上場している上海取引所との重複上場となる。
目論見書によると、2024年の売上高は前年比305.5%増の1451億元(約2兆9000億円)、売上総利益率は16.6ポイント増の23.8%だった。最終損益は前年の24億元(約480億円)の赤字から59億元(約1200億円)の黒字に転じた。米フロスト&サリバンによると、賽力斯はテスラ、比亜迪(BYD)、理想汽車(Li Auto)に続いて世界で4番目に黒字化を達成した新エネルギー車(NEV)企業だという。
セレスは香港上場での調達予定額を明らかにしていないが、156億香港ドル(約2800億円)を調達する計画だとの情報もある。目論見書によると、調達した資金の7割は研究開発費に、2割を新たなマーケティングチャネルの構築や海外販売、充電サービスに充て、世界的知名度の向上を図るという。
同社の前身は1986年に設立された重慶小康工業集団で、当初は燃料自動車と部品製造を手がけていた。2016年にNEV分野に参入し、「賽力斯(SERES)」ブランドを立ち上げた。22年に賽力斯集団に社名変更し、高級スマートEVメーカーに転身した。
ここ数年は、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と共同開発した問界ブランドが好調で、中国NEV市場で存在感を増している。主力モデル「M7」の2024年の販売台数は約20万台で、30万元(約600万円)クラスの市場で首位となった。「M9」の販売台数も約15万台と、50万元(約1000万円)クラスでトップだった。
しかし、セレスが抱える「密かな悩み」も顕在化し始めている。ファーウェイが主導するEVブランド連合「鴻蒙智行(HIMA)」に奇瑞汽車(Chery Automobile)の「智界」、北京汽車集団(BAIC)の「享界」、江淮汽車(JAC)の「尊界」などが新たに加わったことで、問界がファーウェイからの独占的な「寵愛」を失いつつあるのだ。なかでも、問界M7と価格帯やスペックが近い智界R7は、ここ数カ月連続で鴻蒙智行のベストセラーとなっている。
*1元=約20円 1香港ドル=約18円で計算しています。
(36Kr Japan編集部)
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