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産業向け音響診断AI技術を手がける中国スタートアップ「諦声科技(Ensonic)」がこのほど、シリーズDで1億元(約20億円)余りを調達した。北京市先進製造業基金(Beijing Advanced Manufacturing Fund)が出資を主導し、賽富投資基金(SAIF Partners)や交銀資本(BOCOM Capital)なども参加した。調達した資金は技術開発や海外市場の開拓、産業リソースの統合に用いられる。
諦声科技は2017年に設立され、非接触型の音響モニタリング技術を活用して産業機器の故障予測や管理サービスに注力している。主力製品として、変圧器の声紋モニタリングシステム、高速鉄道の走行部異音検出装置、音を視覚化する音響イメージング装置などをすでにリリースしている。
マイクアレイやAIを使った声紋認識アルゴリズムを自社開発したほか、産業機器の音響データベースを独自に構築した。事業範囲は電力、軌道交通、エネルギーなどの分野に及び、国家電網(State Grid)、中国中車(CRRC)、香港鉄路(MTR)などの大手企業を顧客に抱えている。
同社の技術は、機械が発する音とそれが伝わるメカニズムの研究に基づいている。非接触方式で稼働中の設備から音響信号を収集し、電力系統や軌道交通、製造業の数々のシナリオを含む故障音データベースでAI認識アルゴリズムのトレーニングと改良を進めたことで、設備の異常を早期に検知し、適切なメンテナンスを提案できるようになった。
AIを活用した音響モニタリング技術は、産業機器のスマート化を進める重要な手段と見なされている。これまでの巡回点検は作業員の経験に頼る部分が大きいため、効率が悪く、複雑なシーンに対応することが難しかった。また、接触式のセンサーは機械内部への取り付けに伴う改造コストがかかり、安全上のリスクも大きい。これに対し、音響モニタリングは機械に触れずに音や振動で内部の故障を検出することができ、変圧器内部の部品の緩みや、高速鉄道の車輪軸受の亀裂などの検知が可能になる。
世界的には、デンマークのブリュエル・ケアー(B&K)やイスラエルの3D Signalsなどが早い時期からこの分野に注力してきたが、データの安全性や現地環境への適応性、価格などがネックになり、中国ではそれほど普及していない。中商産業研究院の予測によると、音響技術を応用した設備モニタリングの市場規模は近いうちに3500億元(約7兆円)を超える見込みで、巨大なブルーオーシャンとなっている。
諦声科技は、まず電力網や軌道交通など独占性が高く、予算の大きな業界に的を絞って自社の競争優位性を確立してきた。創業者の丁東亮氏は「中国の産業機器は、例えば超高圧送電網や高速鉄道の特殊な車輪構造など、海外とは異なる技術を採用しているため、音響特性モデルを再構築する必要がある」と説明する。さらに、今後はデータの閉ループ運用や、異なるシナリオへの効率的な応用が業界競争の焦点になるとの考えから、自動車の振動騒音(NVH)試験や超音波モニタリングといった新たな分野の開拓を計画しており、香港鉄路のリソースを活用して東南アジアへの進出も目指すという。
丁氏は、ハードウエアとシステムの連携が大きな鍵を握ると考えている。同社が独自開発した遠距離指向性マイクアレイは、すでに多くの産業現場に導入されており、ノイズを除去するAIアルゴリズムを搭載したことで、さまざまな音が飛び交う環境でも有効な音響信号を抽出できる。また、10年をかけて電力網や軌道交通などに関わる170種類以上の故障シナリオを蓄積し、電力科学研究院や鉄道科学研究院と共同で段階的な診断体系を構築した。ある超高圧変電所では、過負荷や機械内部の部品の緩み、冷却器の異音などを90%の精度で識別できているという。
*1元=約20円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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