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電気自動車(EV)で中国最大手の比亜迪(BYD)は、2018年に人-コンピューター-クルマ-クラウドの4要素をつなぐ車載インテリジェントコネクテッドシステム「DiLink」を発表した後、インテリジェントネットワーク(IN)とほぼ全てのセンサー情報を業界に先駆けてオープンデータ化した。BYDの大きなセールスポイントである「DiLink」の発表は、BYDが、従来型自動車メーカーから、インテリジェントネットワークサプライヤーへ変革するための重要なステップでもある。
「開放してこそ生き残ることができ、閉鎖すれば廃れていく」という信念の持ち主である同社の商品企画・自動車新技術研究院の楊冬生院長は、「インターネット企業が我が社にもたらすのは、プレッシャーではなく、さらなるパワーだ」と語る。
ITの革新と普及により自動車利用のスタイルに変化が起こっている。完成車を消費者に売り、使ってもらうだけの従来の自動車メーカーとは異なり、自動運転やインターネットにつながるインテリジェントコネクテッドカー(ICV)メーカーは、販売後もユーザーの利用シーンに積極的に対応し続ける。「自動車はモノからコトへと変わりつつある」という状況への対応において、「難しいのは、技術面ではなく、考え方を変えることだ」と楊院長は語る。
以下の内容は、楊院長が自動車メディア「未来汽車日報」の取材を受けた際のインタビュー内容の抜粋である。中国ICVの第一人者として、同院長は自動車業界の将来や市場競争をどう見ているのだろうか。
――BYDは2018年にICVのほぼ全てのセンサー情報と66項目のコントロール権限をオープン化したが、なぜこのような選択をしたのですか。
――「これまで自動運転車の価格は合理性に欠けていた。1台100万元(約1500万円)以上する車も珍しくないが、自動運転を研究するスタートアップにとっては高すぎる。BYDがオープンプラットフォームを提供したことで、自動運転システムを備えた車が20万元(約300万円)で買えるようになった。自動運転の開発加速にも繋がるだろう」
――現在、バイドゥ(百度)やファーウェイ(華為技術)も自動運転のオープンソースプラットフォームを手掛けていますが、BYDの強みは何ですか。どのような企業と連携していきますか。
――「自動運転は、専門ごとに分業がなされている。例えばバイドゥの自動運転の基盤である『アポロ』は画像認識や意思決定技術に優れているが、BYDは方向転換や運動制御等、制御面の技術に長けている。当社は他社と協力し合っており、他社が強い分野には踏み込まない等、明確な棲み分けができている」
――ICVのボトルネックは何ですか。インテリジェントコネクテッドシステム市場が成熟期を迎えるのはいつ頃と思いますか。
――「多くの人がICVと自動運転を混同している。ICVのシステムは自動運転だけではなく、インターネット全体と関わるものなので、正しく定義する必要がある。開放してこそ生き残ることができ、閉鎖すれば廃れていくものだが、業界内のオープン化は不十分である」
「自動車の100%がインターネットに接続して初めて市場が成熟期を迎えたと言える。現在インテリジェントコネクテッドシステムの搭載率はまだまだ低く、1年間の新車台数約2000万台のうち、ICVは10%に満たない」
――今後、車載システム市場は大手企業による寡占状態になっていくのでしょうか。
――「車載インテリジェントネットワークはインターネットの一部分に過ぎないが、各自動車メーカーにとって、車載システムは重要な差別化ポイントになっている。現在『吉利汽車(GEELY)』や『長城汽車(GWM)』等の自動車メーカーも次々と自社のシステムを計画している。今後は各社が独自のプラットフォームで個性を発揮していくだろう」
――ICVの普及によって、日常生活はどのように変わりますか。
――「将来的には、ICVが超能力のようにユーザーの感情を読み取って、一人ひとりの異なるニーズを満たすようになるだろう」
「例えば、ドライバーの身体に異変が生じたときに、ドライバーの表情から判断して、車が自動的にドライバーを病院に連れていく。さらに、病院に着くまでの間にドライバーの個人情報と様子のビデオを病院に送信することで、病院側は事前に状況を判断し、救命の準備ができる。ICVが普及すれば、私たちの生活にこうした変化をもたらしてくれる」。
(翻訳・桃紅柳緑)
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