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電池リサイクルサービスを提供する中国スタートアップ「蘇州博萃循環科技(Botree Recycling Technologies)」(以下、BOTREE)がこのほど、シリーズBの追加ラウンドで太平香港保険科創基金から数千万元(数億円超)を調達した。シリーズBでの累計調達額は約1億元(約20億円)に達した。今回の資金は製品開発と海外プロジェクトに充てられる。
BOTREEは2019年5月に設立され、前処理から金属の取り出し、分離精製、再利用まで、電池材料のリサイクル全般を手がける。現在はアジア太平洋や欧州、北米、中東などの十数カ国で事業を展開。国内外の電池やエネルギー分野のトップ企業に、技術サービス、スマート設備および大型エンジニアリングプロジェクトの設計と運営を提供しており、稼働中のプロジェクトは60を超えている。
中国市場は「技術実証に最適な土壌」
米マッキンゼー・アンド・カンパニーは、2030年に世界の乗用車市場は8000万台を超える規模となり、うち電気自動車(EV)などの新エネルギー車が50%前後を占めると予測する。車載電池の寿命は通常5〜8年とされているため、今後は電池のリサイクルが世界的に喫緊の課題となってくる。
創業者の林暁氏は「中国は世界最大の電池リサイクル市場であり、エンジニアリング技術を実証するには最適な土壌だ」と語る。
欧州連合(EU)は2023年8月に発効した「欧州電池規則」で、生産者に廃電池の回収・処理責任を課し、2031年末までにコバルト(Co)とニッケル(Ni)の回収率を95%、リチウム(Li)は80%まで引き上げることを求めている。一方、中国の主要リサイクル企業はすでに、コバルトとニッケルで95%以上、リチウムでも90%以上の回収率を達成しているという。
林氏は、BOTREEをエネルギーインフラの運用・保守サービス事業者として位置付けている。将来的には駆動用電池(モビリティ分野)や蓄電池(エネルギー分野)が、社会のインフラおよび公共資産の一部となるため、統一的かつ専門的な運用・保守やサービス体制が必要になると指摘する。
BOTREEは、自社で廃電池を回収・リサイクルするのではなく、電池リサイクル企業や電池メーカー、自動車メーカー、エネルギー企業などの大手法人顧客向けに技術や設備、運用・保守サービスなどを提供している。
同社は2つの技術路線で材料の異なる電池に対応する。三元系リチウムイオン電池などの段階的な改良が可能な電池では、ニッケルやコバルト、リチウムなどの金属材料を取り出し、高ニッケル三元系リチウムイオン電池のように性能やエネルギー密度の高い新たな電池を製造できるようにした。
一方、材料性能が理論上の限界に近いリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池では、材料そのものを直接リサイクルする路線を採用した。林氏は「この技術には同じ規格の原料が不可欠なため、川上から川下まで安定的な廃電池回収ネットワークを構築する必要がある」と語る。
同社の電池材料回収システムは、ニッケルやコバルト、リチウムを同時に取り出し、直接電池用の材料を生産できる。試算によると、従来の技術と比べて設備費は3割以上、材料抽出に伴うエネルギー消費も1割以上削減できるという。
技術輸出から合弁事業の現地展開へ
BOTREEはグローバル展開を積極的に進めているが、「海外で材料のリサイクルサービスを提供するには、現地工場を建設する必要があるため、ハードルは高い」と林氏は話す。
2025年1月、スペインのILUNIONおよびEFT-Systemと合弁会社を設立し、現地に年間処理量6000トンのLFP電池リサイクル工場を建設すると発表した。工場は、従業員の7割を障がい者とする特別就業センター(SEC)として運営される。BOTREEとILUNIONの2年にわたる協業が、今回の合弁会社設立の基盤になったという。
林氏によると、プロジェクト実施にあたり、まず中国国内に顧客のための生産ライン1本を用意し、実際の製品を見てもらう。EUの安全規格『CEマーク』を取得し、現地で工場運営を担う人材を育成したうえで、最終的に設備を欧州に運び、設置と試運転を完了させる。
この協業モデルは、かつて海外自動車メーカーが中国に合弁会社を設立した方式に類似しており、まずは技術サービスで収益を上げ、その後、設備販売や運営収益の分配などに収益源を拡大していく。
今後は、世界各国それぞれのニーズに合わせたソリューションの開発と最適化を進め、電池リサイクル産業により良いサービスを届けていく方針だという。
*1元=約20円で計算しています。
(翻訳・田村広子)
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