AIに“目と頭脳”。中国・Deep Mirror、空間知能の実用化で先行

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空間コンピューティング技術を活用して、人工知能(AI)が3次元空間を認識・理解する「空間知能(Spatial Intelligence)」の開発が進んでいる。

中国のパイオニア企業「宸境科技(Deep Mirror)」は、視覚モデルやマルチセンサーフュージョン、3Dナビゲーション、動的3Dマッピングといった技術を駆使して、屋内外のさまざまな場面で利用できるインタラクションプラットフォームを構築する。AIが人型ロボットなどで「具現化」(=エンボディドAI)へと進化するなか、Deep Mirrorは空間知能とAIを融合させ、人間を超える「目」と「頭脳」を備えた汎用型のフィジカルAI(Physical AI)認識モジュールを打ち出した。その特徴は大きく3点ある。

第一に、あらゆるシーンの認識を可能にしたこと。ピュアビジョン方式の空間認識ソリューションを独自開発し、動きのある環境でも高精度の6DoF測位や3Dセマンティック理解、自律経路計画を実現、低テクスチャや動きの激しい場面にも適応できるようになった。これにより、エンボディドAIの応用範囲拡大や導入コストの引き下げが期待される。

第二に、自律的な進化機能を備える。長期記憶と動的更新アルゴリズムにより、ロボットが環境の変化を継続的に学習し、異なる場面でのタスク遂行や複数ロボット間の連携を実現する。

第三に、低コストかつ効率的な導入を可能にした。ハードウエアのモジュール化設計と軽量アルゴリズムを組み合わせることで、ロボットメーカーの開発ハードルと製造コストを大幅に低減している。

技術面での優位性

Deep Mirrorは空間知能分野で大きな成果を上げており、なかでも3D環境の理解と非構造化環境への適応力が際立っている。関連するコア技術は以下の通り。

動的3Dマッピングシステム:複数のセンサーを組み合わせたSLAM(自己位置推定と環境地図作成)技術により、高精度の3Dセマンティックマップをリアルタイムで作成。長期記憶や複数ロボット間での情報共有を可能にし、複雑な環境でも自律走行を支える。

自己学習型視覚モデル:物理世界のデータとシミュレーションを統合して学習し、環境を幅広く理解できるようにする。地図のタグ付けや人の介入がなくても、難易度の高いさまざまな場面に適応できる。

異種センサー校正:ナノ秒単位のハードウエア同期とピクセル単位の修正により、複数のセンサーから得られるデータの整合性を確保し、認識精度と判断効率を向上させる。

同社のシステムは軽量構成と高いハード互換性を特長とし、人型ロボット、四足歩行ロボット、無人搬送車、ドローンなど多様な機体に迅速に組み込める。

大規模な商用化へ

Deep Mirrorは技術開発と商用化の両輪戦略を推し進めている。独自開発の空間知能プラットフォームを活用して、数千万元(数億円)規模のプロジェクトをすでに実施しており、受注案件を通じた実環境での検証と、その結果をアルゴリズムにフィードバックする仕組みを構築した。これにより、複雑な環境下での安定稼働を検証するとともに、不足している高品質な実データを蓄えて、AIモデルの高度化と製品改良に向けた基盤を整えることができている。

同社のシステムは鉄鋼・冶金、スマート港湾、都市管理など幅広い分野で大規模に活用されている。大手ロボットメーカーとも提携して、ソフト・ハード一体型のエンボディドAIの共同開発を進め、「とりあえず使える」ロボットから「あらゆるシーンで使い勝手の良い」ロボットへの進化を強力に後押ししている。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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