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中国電気自動車(EV)最大手の比亜迪(BYD)は7月9日、独自の運転支援システム「天神之眼」を搭載した車両について、自動駐車機能を使用した際に事故が起きた場合、自社で損害賠償責任を負うと発表した。保険会社を通さないため、翌年の保険料には影響しない。この取り組みは、自社の技術に対するBYDの大きな自信を示している。
BYD自動車新技術研究院の楊冬生院長は7月28日、BYD車ユーザーの自動駐車機能の利用率が従来の30〜40%から60%以上に上昇したと説明した。NOA(ナビゲート・オン・オートパイロット)の利用率については、道路状況が複雑な市街地道路では20〜30%にとどまるが、高速道路では最大90%に上るという。
今年2月、BYDは全21車種にA、B、Cという3つのタイプの「天神之眼」を搭載すると発表した。最上位のAタイプは、米NVIDIAのSoC「Orin-X」2つ(演算処理能力508TOPS)とLiDAR3基を採用し、最高級ブランド「仰望(Yangwang)」に搭載。BタイプはOrin-X1つ(254TOPS)とLiDAR1基または2基を採用し、「騰勢(DENZA)」ブランドと「BYD」ブランドの一部で展開する。
最も装備の軽いCタイプは、NVIDIAの「Orin N」と地平線機器人(Horizon Robotics)の「Journey 6M」を採用。LiDARは搭載しておらず、主にBYDブランドに使われる。現段階ですでに高速道路や都市高速道路でのナビ機能や自動駐車機能などが備わっており、年内には都市部での「記憶型」ナビ機能が実現する見通しだという。
新たな運転支援機能を次々と打ち出すBYDだが、最大の強みは駆動力と車台(プラットフォーム)だと考えている。4モーター独立駆動の「易四方(e4プラットフォーム)」や3モーター独立駆動の「易三方(e3プラットフォーム)」は運転支援の効率を大幅に高め、市街地道路向けNOAの利用率向上の鍵を握る。

運転支援システムの開発については、業界の注目を集めてはいるものの未成熟な視覚言語行動(VLA)モデルに多額の投資はせず、E2E(エンド・ツー・エンド)ソリューションや視覚言語モデル(VLM)を主軸とする方針だという。
現在のところ、BYDに演算力の高いチップを独自開発する計画はなさそうだ。自動車新技術研究院の楊院長は運転支援システムの本当の課題はアルゴリズムとデータだとした上で、アルゴリズムモデルを駆使すれば、演算力100〜500TOPS程度のチップでも十分に使えるはずだと指摘。今後も開放的な姿勢で、アルゴリズム開発企業との協業と自社開発との二本柱で事業を進めていくという。
以上のことから、BYDは「安全」と「普及」を中心に据えて自動運転システムを開発していく方針だということが見て取れる。単に技術の急速な進化を追い求めるのではなく、実際のユーザー体験と信頼性を確立することにより多くの力を傾けていく。
BYDの目標は、運転支援機能を普段の運転に溶け込ませ、利用率を向上させていくことだ。10万元(約200万円)以下の車種のユーザーも、安心して運転支援機能の使用を習慣化してほしいと願っている。
*1元=約20円で計算しています。
(翻訳・田村広子)
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