座禅や瞑想に“科学”を。心と体を整える「人体工学座具」、日本上陸へ

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

EXCITEのRSSに登録特集編集部お勧め記事注目記事36Krオリジナル

座禅や瞑想に“科学”を。心と体を整える「人体工学座具」、日本上陸へ

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

中国・杭州に拠点を置くデザインブランド「心冥想(SHINE MEDITATION)」が、日本市場への本格進出を視野に動き出している。率いるのは、中国最高峰の美術大学ーー中国美術学院(CAFA)の高鳳麟准教授で、20年以上にわたり人体工学(エルゴノミクス)とデザインの研究を続けてきた。同ブランドの代表作は、瞑想や座禅などに活用される「人体工学瞑想座具(ざぐ)」だ。

一見すると椅子や座布団に見えるこの製品だが、本質はまったく違う。人の骨格構造に基づいて設計されており、背もたれなどの支えが一切ない設計でありながら、自然に正しい姿勢を保つことができる点が特徴だ。長時間座っても疲れにくく、むしろ心身の集中を深める助けとなるという。

日本では、瞑想や座禅に器具を使うことはあまり一般的ではないが、心冥想は人体工学という実践的な科学技術を取り入れることで、より効果的に“心を整える”ことを可能にしている。そんなプロダクトが、今年9月10~12日にインテックス大阪で開催される「大阪国際ライフスタイルショー」で出展され、来場者は実際に座って体験することができる。

中国美術学院の高鳳麟准教授(真ん中)

科学で“健康に座る”

「瞑想や座禅のための道具である以前に、まずは健康のための座具なのだ」

高准教授が「座具」に本格的に取り組み始めたのは2008年からだ。長時間の胡坐で腰や膝を痛める人が多い現状を見て、研究を開始したという。2012年には竹を編んだ試作モデルを発表し、周りから好評を博した。2015年には量産可能なレザー仕様に進化させ、国際的なデザイン賞「iFデザインアワード」や「レッド・ドット・プロダクト賞」を相次いで獲得した。

「多くの人が正しい姿勢で座りたいと思っても、身体の構造上それを維持するのは難しい。私たちの製品は、そのサポートをするための器具だ」と高准教授は説明する。

人体の骨格構造に基づいた設計で、無理なく正しい姿勢をサポート
使用シーンに応じて、正座用や折りたたみ式など複数のタイプを開発

心冥想は10人に満たない小さなチームで活動しているが、研究者としての姿勢を貫き、製品を「実験室」から社会へと届けることに重きを置いてきたという。長年にわたる研究の成果を活かし、瞑想や座禅の実践を“痛みを我慢する修行”から、“集中を深める体験”へと変えるきっかけを提供したいと考えている。

幅広い活用シーン

この座具は、瞑想やヨガといった精神修養の場面にとどまらず、リモートワークやリラックス時間、さらには子どもの集中力トレーニングにも活用できる。人間工学に基づいたデザインにより、子どもから高齢者まで幅広く使用可能だ。

中国国内では、ライフスタイル情報サイト「一条」や、知識共有プラットフォーム「得道(DEDAO)」などと連携し、すでに2万台規模を販売した。海外市場でも米国やオーストラリアの代理店を通じ、累計で約1万台が販売されたほか、2017年に東京デザインウィークに出展した際には、その場で完売するという反響を得た。

洗練されたデザインで、インテリア空間にも美しくなじむ

​​また、建築家・坂茂氏が設計した淡路島のリトリート施設「禅坊靖寧」では、実際に心冥想の座具も導入されている。 同社が正式に許可した米国代理店経由で提供されたものだという。自然の中で座禅体験などを提供するこの施設で、アナウンサーの内田恭子さんや、元プロ野球選手の斎藤佑樹さんなど多くの著名人とのコラボイベントも行われており、話題を呼んでいる。

デジタル技術も活用

心冥想の特徴は、座具だけにとどまらない。近年はスマートフォンアプリ(ミニプログラム)を通じて「心冥想減圧」を展開し、呼吸法や瞑想の音声ガイド、感情調整などのストレスをコントロールする多様なコンテンツを提供している。また、ウェアラブル機器などと連携させ、脳波・集中度の分析とも連動することで、科学的なアプローチから心身の健康を支援する取り組みを進めている。

「私たちの目的は、単なる椅子を売ることではない。身体と心をつなぎ、人々が無理なく整えることをサポートしたい」と高准教授は強調する。

スマートフォンアプリ「心冥想減圧」

日本の「座る文化」に選択肢

日本には正座や座禅といった「床に座る文化」が古くから根付いており、心冥想の人体工学座具はこうした文化との親和性が高いとみている。

高准教授は、「瞑想や座禅といった宗教的な場面だけでなく、家庭や茶室、健康関連のコミュニティなど、多様な場面に広がる可能性がある」とし、「日本市場における挑戦は、私たちにとっても学びの場だ。座る文化を大切にしてきた日本の方々に、心身を整える新しい選択肢を提供していきたい」と語る。

同社は現在、日本市場への本格的な参入を見据え、アマゾンや楽天市場への出店を計画中だ。また、今回の大阪国際ライフスタイルショーを通じて代理店や販売パートナーとの協業も模索していく方針だ。

(取材・36Kr Japan編集部)

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録