中国スタートアップ、「自己発電式」振動センサー開発 インフラ・エネルギー分野に挑む

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振動センサーの開発を手がける中国系スタートアップ「振電智感(Zhendian Sensor)」がこのほど、エンジェルラウンドで約1000万元(2億円)を調達した。出資は麟閣創投(Kylinhall Partners)が主導し、水木清華校友基金(Tsinghua Capital)も参加。資金は、センサーの開発や試験生産ラインの構築、商用化チームの立ち上げに用いられる。

振電智感は2025年、中国の清華大学とオーストラリアのニューサウスウェールズ大学の博士号出身者が共同で設立した企業で、新型センサー技術とエネルギーハーベスティング(環境発電)プラットフォームの開発を進めている。

主力製品は、物体の振動を検出する振動センサーで、機械システムの故障診断や橋梁・パイプラインなど構造物や航空宇宙機器のモニタリング、新エネルギー設備のメンテナンスなど幅広い分野で活用されている。創業者兼CEOの強振峰氏は「大規模インフラ建設の時代が終われば、次はメンテナンス市場が急成長する。振動センサーの市場規模は2030年までに686億元(約1兆4000億円)に拡大するだろう」と見通す。

振動センサー市場では、米PCB Piezotronicsやデンマークのブリュエル・ケアー(B&K)といった海外大手が技術的にリードしており、中国製品は中低価格帯に集中している。従来の圧電技術は外部電源を要するため活用シーンが限られているほか、応答周波数を上げて消費電力を抑えるのが難しい、データドリフトが発生しやすいといった課題があった。特に超伝導装置、パイプラインなどの防爆性や耐環境性能が求められる用途では、中国製センサーの採用はほとんど進んでいない。

振電智感は摩擦帯電技術を活用し、共振マイクロ構造とエレクトレット材料を組み合わせて自己発電式振動センサーを開発した。「外部電源不要」と「高い耐環境性能」によって、鉱山や長距離パイプラインなど電力供給が制限される厳しい環境で、コストが高く活用シーンが限られていた従来型センサーの課題を解決した。さらに回路を使わない設計により、防爆性能が求められる現場でも安全性を確保する。

同社の製品は、すでに超伝導磁石やパイプライン、風力発電装置など特殊な環境での作動試験を終え、磁場に対する耐環境性能や防爆性能が求められるモニタリングの分野で、中国製センサーの技術的な空白を埋めた。現在は、特殊用途に応えるセンサーを開発中で、製品ラインの拡充を図っている。また、無線センサーやエネルギーハーベスティングの開発も進め、インテリジェントエッジデバイスの電力供給に対応することを目指す。

出資者の麟閣創投は、工業のメンテナンス市場が急速に成長するのに伴って、センサーがより重要な役割を果たすようになるとの見方を示す。振電智感の革新的なソリューションは、従来型センサーの課題を解決し、中国製センサーがハイエンド分野へ進出するのに貢献していると評価した。精密製造や風力発電の大手も製品を採用しており、今後も先進製造技術の導入を後押ししていく考えだ。

また水木清華校友種子基金も、振電智感の製品が幅広い用途を持ち、中国市場での「国産切り替え」需要に応え得ると評価。将来的に北京証券取引所(BSE)での上場を期待しているという。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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