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中国のeVTOL(電動垂直離着陸機;空飛ぶクルマ)メーカー「沃飛長空(Aerofugia)」が、今年7月に開催された「2025国際低空経済博覧会」で、自動車部品大手の富維集団(Faway Group)と共同開発したeVTOL用スマートコックピットを発表した。電気自動車(EV)を中心に開発競争が進むスマートコックピットを、有人eVTOLに応用したのは中国で初めてとなる。
開発されたスマートコックピットは、次世代の航空機用エコ難燃材を使って可動式コンソールボックスやシート、照明システム、空調など革新的な技術を導入し、安全性を確保しながらより快適な乗り心地を実現した。
同時に、同社初の量産型eVTOL「AE200」も展示された。半固体電池を使う純電動の動力システムを採用し、8つのローターを搭載するティルトローター機として滑走路を必要とせず離着陸が可能だ。機内は3列に4~6つのシートを配置できるフレキシブルなレイアウトを採用し、3列目のシートを電動で折り畳めば貨物輸送にも対応する。航続距離は200km、巡航速度は最高248km/hで、低空域の観光や都市間移動、緊急救援などの用途を想定している。
すでに航空会社の華龍航空(Sino Jet)と航空機リースの工銀金租(ICBC Leasing)が数百機を購入する意向を表明したという。また、航空会社の四川航空(Sichuan Airlines)や航空機サービスの中信海直(CITIC COHC)などと戦略的提携を結び、「AE200」の活用シーンを検討している。
収益性が高いのは貨物より人員輸送
「AE200」は中国でも早期に耐空証明の申請を開始した有人eVTOLで、審査の進捗度は他社より1~2年リードしている。航空宇宙専門誌Aviation WeekのeVTOLメーカーランキング世界上位10社のうち、沃飛長空は総合的な開発・証明取得のスピードでトップに立った。
共同創業者の費嵐氏によると、AE200は年内に6人乗りeVTOLとして中国初の有人飛行試験完了を目指し、2026年に耐空証明書の取得を見込んでいる。
このスピーディな開発を支えているのは、大株主である自動車大手の浙江吉利控股集団(Geely)の強力な支援がある。沃飛長空はゼロベースのスタートアップとは異なり、吉利が展開する低空モビリティ事業の重要な役割を担っており、サプライチェーンや経営エコシステム、リソースの面で強力なバックアップを受けている。例えばAE200のコックピットや電動駆動システム、充電システムなどの設計・製造では、吉利のサプライチェーンを活用している。
「低空経済元年」と呼ばれた2024年以降、中国のeVTOLメーカーは30社を超え、それ以前に比べて倍増したという統計もある。参入メーカーが増えるにつれ、動力システムの選択肢も純電動やハイブリッドなどいくつかに分かれた。
費氏は「当社は国内の既存インフラや今後の展開を踏まえ、純電動方式を採用している。新エネルギー車(NEV)の普及により充電インフラが整っており、純電動の強みを最大限に発揮できる」と説明した。その一方で「長距離飛行には800km以上の航続距離が必要であり、ハイブリッド方式にも一定の役割がある」と補足し、両方式が相互に補完し合う関係にあることを指摘した。さらに「将来的に電池技術が進歩すれば、純電動eVTOLの航続性能は一段と高まるだろう」との見解を示した。
中国政府が今年、低空経済発展戦略で有人飛行よりも貨物輸送を優先する方針を打ち出したため、多くのメーカーがこぞって貨物eVTOLの開発を進め、航続距離や飛行時間、積載能力の向上に注力している。一方の沃飛長空は、2020年の設立当初からティルトローター式有人eVTOLの開発を続けている数少ないメーカーだ。費氏は「人員輸送は貨物輸送に比べて価値が高く、運賃収入による収益性も大きい」と説明する。
eVTOLを大規模に普及させるにはコストコントロールがポイントになる。同社によると、15分程度の短距離飛行では、ヘリコプターが1人当たり約2000元(約4万円)であるのに対し、eVTOLならその3分の1から5分の1に抑えられる見込みだ。ハイヤーと比べれば運賃は2~3倍となるものの、移動時間はわずか5分の1に短縮でき、都市の新たな移動手段として期待されている。
*1元=約20円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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