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AI技術を活用して新たな金属材料を開発する中国スタートアップ「創材深造(Deep Material)」がこのほど、シリーズAで合世家資本と晨暉資本(Aurora Private Equity)から数千万元(数億円)の資金を調達した。資金は新材料の開発や改良、ハイスループット実験室の増強、AIモデルの高度化、業界特化型ソリューションの大規模運用に用いられる。
創材深造は2021年に設立され、金属新材料の開発プロセスにAIを活用するという革新的な試みを進め、現在はアルゴリズムやAIモデルから実験室、材料のデータ体系まで全てを自社で手がけている。9月10日には独自開発の材料開発AI「DM Agent」を発表、金属を中心に性能向上、コスト効率、そして高度な製造プロセスへの応用を目指す。
金属材料の開発では、質の高いデータの取得がボトルネックとなってきた。同社は自社開発のハイスループット実験装置を活用して、一貫性の高い実験データを効率的に生成し、それをもとにAIモデルが配合や工法を最適化するという手法を確立。これまで場合によっては10年以上かかっていた開発期間を最短2カ月に短縮し、コストの大幅削減に成功した。
創業者の王軒沢氏は、これからの材料開発企業には「アルゴリズムで開発を効率化するスキル」と「産業化を実現するスキル」の両方が必要だと指摘し、「量産工程を自社でコントロールできなければ、いくら研究開発してもその価値は薄れる」と強調した。このため同社は2023年以降、受託型の開発から脱却して、需要の大きな高難度の材料カテゴリを自社主導で開発する方針に切り替えた。
最初に開発した3Dプリント用の高強度アルミ合金は、引張強度が550MPaを超え、航空機材用の基準も満たしている。貴金属成分を含まないため、コストは海外製品の3分の1ほど。すでに航空宇宙分野の研究機関や、デジタル機器の受託生産大手で検証や導入が進んでいる。
世界的に3Dプリント用金属材料の普及率はまだそれほど高くない。Precedence Researchによると、金属積層造形市場は2024年の約58億7000万ドル(約8700億円)から、今後10年間で200億ドル(約3兆円)に成長する見込みで、年平均成長率は約13.7%に達するという。しかし、安定して使える3Dプリント用の金属材料は30種類にも満たず、その多くがアルミ合金や耐熱合金、チタン合金、ステンレスなど標準的な素材に集中しているため、航空宇宙やデジタル機器に求められる高強度・軽量といった特殊性能には十分応えられていないのが現状だ。
「業界にとって最大のチャンスは、新材料で製品の限界を打ち破ることだ」と王氏は強調する。近年は中国製造業側の受容も高まり、家電など量産分野からも「軽く・強く・安価」な材料への要望が増えているという。
創材深造は材料だけではなく、ハイスループットの実験装置や材料開発AIも提供しており、いずれも国内トップクラスの大学や研究所、メーカーの開発部門などで活用されている。データ生成→AI設計→量産までを自社で束ねるモデルにより、用途拡大の余地は大きい。
*1元=約21円、1ドル=約147円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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