エンボディドAIの鍵を握る「世界モデル」に注力ーー中国・GigaAI、ファーウェイ系から資金調達

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エンボディドAIとそれを支える基盤モデルの開発に注力する「極佳視界(GigaAI)」はこのほど、シリーズAでファーウェイ傘下の哈渤科技投資(Hubble Technology Investment)と華控基金(TH Capital)から約1億元(約20億円)を調達した。

今年8月末にもプレシリーズAとその追加ラウンドで計数億元(数十億円)を調達している。わずか2カ月余りの間に3回の資金調達に成功したことは、資本市場による同社への高い評価を示すものと言える。

極佳視界は、「世界モデル」をベースに物理世界で動作する汎用AIに特化した、中国初のスタートアップ企業だ。主力製品として、自動運転やエンボディドAIに対応した世界モデルプラットフォーム「GigaWorld」、エンボディドAI用基盤モデル「GigaBrain」、さらにロボット本体の開発も手がける。

世界モデルとは、デジタル空間内に物理世界とその法則を再現したシミュレーションモデルを指す。AIは行動前にこの“仮想空間”で次の瞬間を予測し判断することで、未知環境でも試行錯誤を最小化し、安定した動作を実現できる。

現在、世界では主要テック企業が続々と世界モデルの研究開発に参入している。米NVIDIAは世界基盤モデル「Cosmos」を発表し、自動運転やロボティクスへの応用を進めている。中国のファーウェイも世界モデルを「今後の十大技術トレンド」の筆頭に掲げ、極佳視界に投資するなど、活発な動きを見せている。

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創業者の黄冠CEOは、「ChatGPTが情報世界を変えたように、AIは今後2〜3年以内に物理世界にも劇的変化をもたらす」と語る。同氏の言う「変革」とは、エンボディドAIが100種類の一般タスクのうち90%を、成功率95%以上でこなす未来を指す。

極佳視界はエンボディドAIが現時点で抱えている課題を3つにまとめた。まず、高品質データが不足しており、実機データの収集は非効率なうえコストがかかること。次に、シミュレーションデータと現実環境の間にギャップがあり、そのまま応用するのが困難なこと。そして、従来のシミュレーターではモデル化誤差が生じるため、強化学習の効果が十分に発揮されないことだ。

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極佳視界のチーフサイエンティスト朱政氏によれば、同社の世界モデルはまさに前述の問題を解決するものだという。

世界モデルプラットフォーム「GigaWorld」は、光の照射や材質、力学などを正確に再現し、物理的に正確でリアルな仮想環境を生成する。AIの学習に必要な汎用性の高い大量のデータを低コストで提供でき、すでに自動運転やエンボディドAIの分野で活用が始まっている。

2025年7月には、世界モデルで動作する世界初のエンボディドAI用基盤モデル「GigaBrain-0」プレビュー版を発表、9月にはその正規版を公開した。同モデルは空間推論能力を備えており、手順が多い複雑なタスクも遂行できる。学習データの90%以上を世界モデルで生成し、実データは10%未満のため、データ収集の手間やコストを大幅に抑え、追加の学習データがなくてもロボットが新しい環境やタスクに対応できるようになった。

事業戦略では、量産を優先する方針をとっている。すでに複数の人型ロボット(ヒューマノイド)関連のイノベーションセンターや実証拠点と連携し、仮想空間と実環境を組み合わせたトレーニング体制を構築。GigaWorldが生成する多様なシナリオを活用し、ロボットが組み立て作業や倉庫物流といった実際の現場に迅速に適応できるよう訓練を進めている。

また、グローバルのロボット企業とも連携し、GigaBrainの導入を進め、介護・飲食・接客など日常生活領域での応用も模索している。例えば、キッチンで食材を認識し、取り出し、加熱する一連の作業を自律的にこなすことも可能になるという。

今後について同社は、「物理世界におけるAI革命」を見据え、エンボディドAI向け基盤モデルの高度化と汎用ロボット本体の開発を加速するとともに、代表的ユースケースの商用化にも力を注いでいく方針だ。

*1元=約22円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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