高性能EV、現実は“制御不能”のリスク⋯中国では『0-100km/h加速は5秒以上』と規制強化検討

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

特集編集部おすすめ記事注目記事

高性能EV、現実は“制御不能”のリスク⋯中国では『0-100km/h加速は5秒以上』と規制強化検討

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

中国公安部はこのほど、自動車に関わる国家標準「自動車運行安全技術条件」の改訂意見募集稿を公表した。乗用車の安全性に関する内容が複数追加されたが、そのうち最も注目されているのは、起動時のデフォルトモードで「0-100km/h加速は5秒を下回ってはならない」とした点だ。この規定は電気自動車(EV)の過剰な性能がもたらすリスクに正面から切り込んだものだとみられる。

高性能がもたらす制御不能のリスク

意見募集稿の解説では、純電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)で、発進時の急加速を制御できずに事故を起こすケースが頻発していると指摘している。主な原因のひとつが高加速モードの濫用だ。多くのドライバーが日常の運転にも高性能もしくは高加速モードを使用している。もうひとつは、ドライビング技術が不十分なこと。運転に対する心構えや高性能車を適切に扱うスキルが欠けているのだ。

シャオミEV、重大事故で3人死亡 「自動運転機能」めぐり波紋広がる

この「5秒ルール」は、自動車教習所で使用されるガソリン車の大多数で0-100km/h加速が5秒以上であることに由来する。新規定では、デフォルトモードでの性能が一般的なドライバーの対応可能な範囲を超えないよう求めている。

中国では0-100km/h加速の性能が5秒以下の車種が多数販売されている。テスラの「モデル3」パフォーマンスモデル、小米汽車「SU7 Max」、小鵬汽車「P7」高性能モデルのように、多くが4WDの高性能モデルだ。理論上は、4WDではトルクが4輪に均等に配分されるため、大出力の後輪駆動車に比べ急加速時に制御不能になる確率は低い。新規定は極端な性能をデフォルトモードで制限することで、より幅広いユーザー層の安全を確保する目的がある。

メーカーにより異なる警告表示

新規定は、メーカーに対し独自の性能モードに関する注意喚起の表示を標準化することも間接的に求めている。極限性能をオプションとして提供する際、メーカーごとに注意喚起とリスク管理が異なる。例えば、テスラの「モデル3」や「モデルY」のパフォーマンスモデルには「トラックモード」がある。このモードでは車両走行安定補助システム(ESP)の無効化や、最大460馬力を後輪に集中させるといった駆動力配分が可能になる。しかしテスラは操作画面で「経験豊富なドライバーがサーキットにおいてのみ使用する。公道では使用しないこと」と明確に注意喚起しており、複数回の確認操作を経なければ起動できない仕組みになっている。

一方で、小米のSU7 Maxも最大出力673馬力、0-100km/h加速2.78秒という性能を誇り、同様に駆動力配分の調整が可能だが、画面上に目立つ「サーキット専用」の表示はなく、公道での使用を禁止するといった警告が強制的にポップアップ表示されることもない。

納車待ち58週の大ヒットEV⋯シャオミ「YU7」を北京で体験、“性能過剰”に課題も

EV監督・管理の厳格化

今回の改訂意見募集稿に追加された内容には、回生ブレーキに関わる項目も含まれている。回生の強度が大きすぎるために意図しない挙動や操作ミスを引き起こすことがないよう、回生ブレーキ作動時の減速度を0.8 m/s² 以下と規定した。また遮光フィルムの貼付も禁止された。フィルムが貼ってあると事故発生時に窓ガラスを割ることができず、救助の妨げになるためだ。

近年、車両のオートロックが作動しない、格納式ドアハンドルがポップアップしない、先進運転支援システム(ADAS)が誤判断するといった報道が目につくようになった。工業情報化部や市場監督管理総局などはすでに、運転支援機能を「自動運転」とするなど誤解を生む名称の使用禁止をはじめ、緊急時に電気系統を遮断するメカニズムやバッテリーの熱暴走アラートなどを対象に、多くの規定を修正している。

EV流行の「隠しハンドル」、リスク顕在化⋯中国が新規則案、9割が設計見直しか

「運転支援=自動運転」誤解に歯止めーー中国が運転支援機能の国家標準策定へ、ドライバー監視を強化

EVの普及に伴い、監督管理部門は潜在的な安全リスクを重視するようになってきた。中国では関連する法律と技術基準の整備を進め、事故発生リスクの低減に取り組んでいる。

(翻訳・36Kr Japan編集部)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

次の一手をひらくヒントがここに。

会員限定ニュース&レポートをお届け。