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2025年の中国は、不動産不況など景気減速が伝えられる一方で、中国企業はハイテク製品やLABUBU(ラブブ)などのIPを武器に、日本をはじめとした海外市場に活路を見出し、その存在感を高めた。
脱競争主義の「寝そべり族(躺平)」といった言葉も近年流行語となるなか、消費者の財布の紐は固くなったのか、日本の商品は大丈夫なのかーーそうした視点も交えながら、2025年の中国トレンドを振り返る。
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LABUBU、超人気からの陰り
中国の対日観は2025年後半にかけて悪化したが、コレクショントイやフィギュアなどのグッズ自体は年間を通して人気が継続している。また「自分だけのオリジナルグッズを持ちたい」、「作って売りたい」というニーズの高まりを背景に、利用の技術的ハードルが下がった3Dプリンターがよく売れ始めた。日本のIPは人気であり、劇場版鬼滅の刃は記録的な売上となった。
2025年のIPを語る上で、前年に引き続きLABUBU人気は外せない。日本でも見ることが増え、中国発のIPが徐々に認知されている。さらにそれは中国のみならず世界中で大ブームとなり、LABUBUの発売元であるアートトイブランド「POP MART」の業績を大きく押し上げた。2025年上半期の純利益は前年同期比で約5倍に達し、時価総額は一時8兆円規模にまで膨らんだ。
一方、その人気ゆえに模倣品が大量に出回り、投機目的のレア商品の争奪戦も相次いだ。LABUBUの模倣品・海賊版も爆発的に増加し、世界最大規模の小商品卸売市場「浙江省・義烏」や世界最大級の電気屋街「深圳・華強北」などでは正規品に比べて激安な30~60元(約600円〜1200円)程度の粗悪なコピー品が大量に流通し、敢えてそれを集める外国のコレクターがいることも報じられた。
こうした消費者の動きに海賊版対策を強化したほか、投機目的の買い占め対策で大量に流通させた。しかし、最新製品で品質にファンから不満が漏れ、下半期には人気に陰りがでて、ディスカウントストアで原価割れ価格で販売される事例も見られるようになった。
非ゲーマーを取り込んだ「ゲーム発・聖地巡礼」
旅行分野では、山西省へ旅行に行く人が目立った。2024年には西遊記をベースとした大作ゲーム「黒神話:悟空」がリリースされ、大きな話題になった。その勢いは止まらず、ゲームを遊ばない人をも巻き込んで、同タイトルの主な舞台である山西省の観光地に趣き、CGではない本物を見てみようという聖地巡礼が2025年に入って見られた。同タイトルでは中国各地36カ所を実写取材して制作していて、うち27カ所が山西省に集中し、玉皇廟や小西天など同省の多くの古建築が再現されている。
SNSでは山西旅行に関連するハッシュタグが多数登場し、こだわりの撮影動画が多数アップされ、同タイトルゆかりの地の旅行サービス予約数が急増。山西省の観光局もこの人気の波にのり、聖地巡礼の旅行情報のフォローや、現地限定の旅行記念グッズを販売。もともと若い旅行者の間で地域限定の旅行記念グッズを購入する習慣があったので売れに売れた。山西省はこれまで観光においては地味な印象だったが、大作ゲームにより地域の文化や観光名所を一気に認知させる文化体験型・IP連動型観光の成功事例となった。
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外食やデリバリーが低価格化
2025年の消費トレンドとしてまず挙げられるのが、コスパ重視の外食だ。
人々は賃金上昇の鈍化と物価上昇の急激な高まりという現実に直面し、コスパ重視で食事を選ぶようになった。その結果、サイゼリヤやスシローといった外食チェーンが高い人気を集めた。スシローには数時間待ちの長蛇の列になったという報道もあった。その背景には、高級な内装や豪華に見せた食事ではなく、価格を抑えつつ変わらぬ料理や体験にお金を払いたいというニーズがある。
たとえばサイゼリヤはイタリアン料理でありながら、ほとんどの料理の価格は20元(約400円)以下であり、大都市において極めてお手頃価格だ。サイゼリヤは2024年度から2025年度にかけて、中国市場の好調もあって売上高と純利益ともに過去最高を記録した。
スシローも一人あたり数十元(数百円)で、様々な種類の寿司を楽しむことができる。店によっては高級日本料理屋での1回で1000元(約2万円)を超える中国の大都市において、スシローは「きちんとした日本食」を格安に楽しむことができる店として位置付けられている。そのためスシローは、はま寿司とともに「寿司界のサイゼリヤ」と中国のネット上でしばしば呼ばれ、好意的に受け止められている。
日本発のチェーン店だけではない。ピザハットは「必勝客WOW」、ケンタッキーフライドチキンは「肯悦(KCoffee)」というより低価格のサブブランドを展開し、中国の飲食チェーンでは麺類の「花小小」や火鍋の「維拉」など、コスパを売りにするチェーン店が急増している。
ドリンクではラッキンコーヒーなどのコーヒーチェーン店がコーヒーを9.9元(約200円)に引き下げた。それ以上の価格で販売している個人のコーヒー店は、消費者がコスパを重視することを背景に客足が遠のき、業界のリストラが進んだ。
食事の低価格化に拍車をかけたのが、デリバリー競争だ。美団、アリババの淘宝閃購+Elemeの2強だった業界にJDドットコム(京東集団)が参入し、3社それぞれが顧客獲得を狙って大規模な補助金を投入した。過去にもデリバリーでの補助金による割引イベントは発生していたが、現在はこれまでと異なりデフレ基調での補助金投入であり、今後中国人の外食習慣に何かしらの影響・副作用がでそうだ。
中国式「おひとりさま」一点豪華主義へ
では流行をけん引する中国の若者は何も買わなくなったのか、というとそうではない。ジャンルを問わず、値段の高いものが売れ、その購入の根っこには「自分が長く使ういいものを買う」ということが共通している。若いネットユーザーが集うビリビリ動画での「好物(おすすめの購入品)ランキング」では、安全性や効果を重視した化粧品、特定のスポーツに特化した靴や自転車、単なるレジャーを超えたアウトドア用品などが上位に入った。
振り返ると、ゼロコロナ体制下の2020年から2022年にかけては、巣ごもり需要を背景に、低コストで目新しいものや精神的な満足感を求めて小型家電、化粧品、香水などの需要が急増した。2023年にはコロナ明けの「リベンジ消費」が主流となり、旅行、公演、オフライン体験が人気に。翌2024年には、物価や生活費の全体的な上昇からの反動で一気に消費意欲は反転し、買わなくなった。またインフルエンサーが販売するものを考えずに買ってしまう衝動的な購入が止まり、理性的な消費へと転じた。その一方でグッズや様々な形態のコンサートといった知人友人家族と共有する消費でなく、個人が楽しめるモノやコトが人気となった。
長期で見れば、全体トレンドは毎年大きく振れるというのが中国の消費者向けトレンドであり、2026年になにが売れるのかを予想するのは極めて難しい。ただ、未婚化・少子化が加速するのは間違いなく、2024年や2025年の延長で、個人で楽しむモノやコトへの需要は引き続き高まるだろう。スシローやIPグッズなどが支持されたように、中国市場における根強い日本人気にも、今後も注目していきたい。
(文:山谷剛史)
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