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近年、中国発のデジタル製品の存在感が高まっている。日本のECショップや家電量販店には、様々な中国メーカーの製品が並ぶようになった。
なかでも知名度が高いシャオミ(Xiaomi)は3月に浦和美園で直営店をオープンしたのを皮切りに、埼玉、千葉、東京と店舗を拡大し、中国製デジタル製品がより身近な存在になっている。
本記事では、世界的にも米国と並び注目される中国のデジタル製品の中から、今年話題になったものを紹介したい。
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ヒューマノイドが話題をさらった
1年を通して話題になったのが、ヒューマノイド(人型ロボット)だ。1月28日の春節前に放映される国民的テレビ番組「春晩」内で、Unitree(宇樹科技)のヒューマノイド「H1」が16台が、人とともに伝統舞踊を披露し、インパクトはとにかく大きかった。春晩では例年、新しいテクノロジーをお茶の間にわかりやすく伝える場として知られ、これにより、ヒューマノイドという近未来的な製品も一気に一般人でも浸透するようになった。インパクトはとにかく大きかった。
【こぼれ話】中国の春節前日の番組「春節聯歓晩会(春晩)」で宇樹科技(UNITREE)のロボット「H1」が集団で踊るパフォーマンスをしました。その時の様子や予行練習の風景が動画に。同番組ではドローンやメタバースなど、その時々で最新トレンドのハイテク技術を導入し紹介することでも知られています pic.twitter.com/JEXqXafVk4
— 36Kr Japan@中国テック・スタートアップ専門メディア (@36krJ) January 29, 2025

かつて日本企業も苦労してきた「人のような動き」を中国企業が実現した背景には、大規模モデル(生成AI)技術の普及が大きい。話題性を高めることにより、視聴者が関心を持ち、その関心を背景にロボットを購入し貸し出す業者の需要も拡大した。UnitreeやUBTECH(優必選科技)などのロボット企業は、オンラインや展示会などで続々とヒューマノイドによる新たな動きを披露したが、それには単なる技術を魅せるだけではなく、レンタルニーズなど確かな経済効果があった。
4月19日には北京で、世界初となる人とロボットが並走する「人型ロボット・ハーフマラソン」が開催され、中国のヒューマノイド20体が参加。その様子はライブ動画で配信され、国内外から大きな注目を集めた(優勝は北京人形機器人創新中心の「天工Ultra」)。
また8月14日には、ヒューマノイドによるスポーツ大会「2025年世界人形機器人運動会」が開催。中国だけでなく世界16カ国から280チーム、500台を超えるヒューマノイドが参加し、徒競走などの陸上やサッカーをはじめとした球技やダンスや格闘技で競い合い、話題を呼んだ。
大型会議や展示会が開催されるたびにヒューマノイドが登場し、注目を集めた。たとえば7月に開催されたAIフォーラム「WAIC 2025」では、150台以上のヒューマノイドロボットが、同じステージ上で宅配便の仕分け、バーテンダー業務、組立ライン作業、そして人間とロボットの協働といったデモンストレーションを実演。
また8月に北京で開催されたロボットフォーラム「WRC 2025」では、220社が参加し、ヒューマノイド関連製品123点が新たに発表され、各社は製品やソリューションをアピールした。
こうしたオンラインとオフライン双方での露出や、ロボット企業の技術向上や価格低下を経て、今年は1万台のヒューマノイド販売を記録しヒューマノイド「量産化元年」と呼ばれた。来年以降、さらなる低価格化と性能向上は間違いなくおきるだろう。
DeepseekショックーーAI入り製品が続々登場
世界を揺るがした中国製デジタル製品として、「DeepSeekショック」という言葉で広く知られた生成AI「DeepSeek」も、今年の中国を代表する存在といえる。話題になるや予想以上のユーザーが殺到し、コンピューティングリソースに負担をかけ、今年は何度となく利用できない事態となり、個人や企業ユーザーに影響が出た。
DeepSeekほどは話題にならなかったが、アリババの「Qwen(千問)」、バイトダンスの「Doubao(豆包)」、テンセントの「Hunyuan(混元)」といった大規模モデルが続いて台頭した。オープンソースモデルにおいて中国勢の存在感が際立った。
今年は生成AIに加え、作業を代行・整理するAIアシスタントが登場。海外市場を主戦場とした「Manus」はその代表例で、特に国外で高評価を得た。
また、バイトダンスのDoubaoのAIアシスタントを内蔵した中国向けスマートフォン「nubia M153」は、命令するとアプリの壁を越えて様々な作業を代行する点が注目を集めた。既存のスマートフォンよりも遥かにスマートに稼働する様子に、多くの中国のガジェットファンが驚いた。ただ発売からしばらくして、微信(Wechat)ほか、いくつかのアプリがAIアシスタントによるアプリ操作を禁止し、利便性が低下。異なる企業のアプリへのアクセスをどう解消するかが今後の課題だ。
AI搭載のハードも数多く登場した。2025年後半から深圳の電子街「華強北」ではAI翻訳機、AIギター、AIリング、AIスマホケース、AI眼鏡といったAI製品が外国人向けに売られていると報じられていたが、その傾向は生成AIブームとともに一層強化。
華強北では、生成AI搭載音声デバイスが低価格で流通し、それを組み込んだぬいぐるみなどのおもちゃが販売された。また、ディスプレイ付きのペン型スキャナーが登場し、文章を読み取って翻訳したり、内容に応じて回答したりできるようになった。近年手軽におもちゃ感覚で買える新しい電子製品が少なかったが、久しぶりに多数出てきている。その背景には中国から海外に売る越境ECブームがあり、Temu、Shein、AliExpress、TikTok Shopなどの越境ECサービスでも手頃な値段で購入できるようになった。
パーツの寄せ集めの低価格な製品が多く登場する一方、生成AIを活用したARグラスが各社から登場し、じわりと注目を集めた。中でもRokidの「Rokid Glasses」は台風の目ともいえる注目の製品で、メガネの透明レンズ上に情報が表示される、まさに未来のメガネの姿を見せてくれた製品だ。
製品発表会ではRokidの祝CEOがレンズに表示された台本を読みながらの発表を行ったほか、レンズ上に生成AIでの質疑応答結果や翻訳結果やナビゲーションなど、様々な情報を表示し、また音声でも伝えることができる。Rokid GlassesをはじめAI機能を付加したARグラスは未来を感じる製品ではあるが、まだ普段使いの品質まで届いていないのか、ダブルイレブンセールでは売れたものの、返品率が高かった。今後はバッテリーをはじめ、部品改良が進むことで、完成度の向上が期待される。
余談だが、Unitree、DeepSeek、Rokidはいずれも杭州の企業であり、杭州発のテック企業が一定の注目を集めた1年でもあった。海外向けハードウエアの深圳とは異なる文脈で、多くの関係者が視察に訪れた。
(文:山谷剛史)
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