【ネイチャーテック】“AI”と“共感”で北米の野鳥愛好家を熱狂させた「COOLFLY」

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スマートバードフィーダー(AI自動給餌器)と野鳥観察愛好家コミュニティアプリを展開する「COOLFLY」の創業者・朱潤民氏は2024年初めに米国の一人のユーザーから切実なメールを受け取った。体の不自由な夫がPCでも野鳥観察を楽しめるよう、専用のログイン機能を開発してほしいという内容だった。

リソースは限られていたが、朱氏はチームメンバーと連日連夜話し合い、特別プロジェクト「Operation Heartline(心の絆作戦)」の立ち上げを決断。わずか2週間で機能を実装。この一見効率度外視に見える「顧客への共感」こそが、中国発のスタートアップが北米の消費者の心を掴む決定的な転換点となった。

中国式ビジネスモデルで北米の巨大市場に参入

COOLFLYは単なる従来型のデバイス輸出企業ではない。ハードウエアを入り口とし、ソフトウエアを中核に据えることで、1080億ドル(約17兆円)を超える北米のガーデンバードウォッチング市場を狙う。米国にいる9600万人の野鳥愛好家のうち、9100万人が自宅の庭で野鳥を観察しており、その60%が定期的に野鳥に餌を与えているという。すでに中国のサプライチェーンを活用して野鳥観察用デバイスを提供する企業はあったが、多くは単なるネットワークカメラで、インタラクション性や面白みに欠けていた。

同社は、操作の9割をスマホで完結させるデバイスに加え、中国のネット業界で培われた「コンテンツ+コミュニティ」モデルを導入。AIによる鳥の種類識別やスマート編集、さらには「今日は何羽飛来したか」「新しい種類は現れたか」を報告するAIアシスタント機能を搭載した。これにより野鳥観察は「受動的な記録」から、発見の喜びを伴う「知的な探索」へと進化した。

アプリ内のコミュニティは「高い娯楽性・コンテンツ重視・最小限の交流」をコンセプトに設計されている。あえてチャット機能を排除し、自然そのものを媒介とした純粋な交流の場としたことで、ユーザーエンゲージメントが爆発。1日あたりのアプリ起動回数は最大101回に達し、従来のシニア男性層だけでなく35歳前後の若者や女性層までユーザーが拡大した。

国を超えた愛好家同士のつながり

COOLFLYは、低価格を武器に海外市場を攻めるメーカーとは異なり、一貫してブランディングを重視してきた。深圳の強力なサプライチェーンを背景に、スマートバードフィーダーや野鳥観察カメラなどの革新的な製品を次々と投入。その実績は国際的にも評価され、世界最大級のテクノロジー見本市「CES」では、「Best of CES 2025」も受賞している。

創業者の朱氏は、ガーデンバードウォッチングは「ネイチャーテック」の入り口になると指摘する。カメラには、鳥だけでなく鹿やコオロギ、ときには熊も映り込む。すべての庭は生態系の縮図だ。北米で数万人のユーザーを蓄えたCOOLFLYは、ここにきて中国市場に逆進出し、湖北省武漢市や上海市などと共同で自然教育プログラムを推進している。

より深い意味を持つのが、国境を越えたユーザー同士の結びつきだ。寧夏回族自治区のユーザーが撮影した鳥の映像は、米国のユーザーの協力によってオナガだと特定することができた。北京市の住宅地で撮影された珍しい鳥については、米国の学者や英国の愛好家を交えた議論を巻き起こした。COOLFLYの最終的な目標は、国境を越えて結びつく自然愛好者のネットワークを構築することだという。

1通のメールをきっかけに始まったCOOLFLYの取り組みは、海外展開において「価格競争」や「トラフィック」に頼らずとも、深い体験と心の共鳴を生み出すことで強固なブランドを確立できることを証明している。

*1ドル=約158円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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