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昨年11月に実施された大セール「双11」後、ECトップ3社のアリババ、「京東(JD.com)」、「拼多多(Pinduoduo)」がそれぞれ第3四半期の業績を発表した。発表前には拼多多の好調な業績が一貫して注目を集め、時価総額は一時バイドゥと京東を超えるまでに成長した。拼多多が今後、二番手のECプラットフォームになるのではとの呼び声もますます高まっている。3社の業績の中から、注目に値するデータのいくつかを取り上げてみよう。
EC第2位の座をめぐる争い
規模が大きく競争が激しいECビジネスでは、アリババ、京東、拼多多の三つどもえの戦いが特に大きな注目を集めてきた。
まずGMV(総流通総額)を見てみると、アリババと京東は財務報告の中でGMVを公表していないものの、アリババの張勇(ダニエル・チャン)CEO兼会長は同社の創立20周年年次総会で、2020会計年度の目標であるGMV1兆ドル(約108兆円)をすでに達成したと発表している。これに対し、京東が2018年第4四半期末に発表したGMVは1兆6800億元(約26兆円)、また拼多多の12カ月間のGMVは2019年9月30日時点で8402億元(約13兆円)となっている。
GMVで見れば、拼多多の取引規模は依然として京東のおよそ半分、その京東の取引規模もアリババの約4分の1にとどまっている。このようにアリババは2社を圧倒的にリードしており、2位の京東も拼多多に二倍の差をつけている。
次に時価総額に注目すると、11月の時点で京東の時価総額は466億ドル(約50兆円)、拼多多の時価総額は395億ドル(約40兆円)だが、アリババの4876億ドル(約530兆円)には遠く及ばない状況だ。
売上高の伸び率について見ると、アリババの第3四半期の売上高は市場予測および前年同期を上回る1190億2000万元(約18兆円)と、伸び率が11期連続で40%を超えている。これに対し、京東の純収入は前年同期比28.7%増の1348億元(約21兆円)で、伸び率は加速傾向にある。拼多多の売上高は前年同期比123%増の75億1390万元(約1160億円)だった。拼多多の成長率は同業他社を大幅に上回ってはいるものの、成長率の高さはプラットフォームの規模そのものが小さいことと、昨年6月より実施している100億元値引キャンペーンによるものが大きい。
さらにユーザー数の伸びにも注目したい。アリババの年間アクティブバイヤー数(頻繁に買い物をする顧客)は1900万人増の6億9300万人となった。顧客獲得コスト(CAC)は2016年の526元(約8000円)から2年後の2018年には390元(約6000円)に減少した。
一方で京東と拼多多のデータをみると、拼多多の年間アクティブバイヤー数は前期比1億5080人増の5億3630万人となり、京東の2億230万人を上回った。京東の顧客獲得コストは2016年の142元(約2200円)から2018年には1503元(約2万3000円)に増大している。拼多多の2018年の顧客獲得コストは143元(約2200円)だった。
データ上では顧客獲得コストが最も低く、ユーザー数の増加が最も大きい拼多多だが、企業としてなかなか次のステージに進めないというジレンマを抱えている。拼多多はばらまき型の割引戦略が実際に成果を上げたことを証明する必要があり、これまでのユーザー数増加による売上増からリピーターによる売上増を実現することが、最大の課題となっている。
地方都市および大都市の攻略
地方都市への進出および大都市ユーザーの獲得はテック企業の常套手段だが、ECプラットフォームもこれと同様だ。
地方都市を重点とする拼多多に続き、アリババは共同購入サービス「聚劃算(Juhuasuan)」、廉価商品をそろえた「淘宝特価版」を、京東は共同購入アプリ「京喜(Jingxi)」をリリースした。これらはまさしく三~四級都市の利用者獲得を狙った戦略だ。
第3四半期の業績によれば、京東の新規ユーザーの7割は地方都市の在住者だった。またデータサービス企業「個推大数据」のデータによれば、昨年9月時点で聚劃算および京喜両アプリのユーザーのうち6割近くが三級都市以下の在住者だったという。
京喜は昨年の「双11」期間中に1元(約16円)の商品を1億個販売し、これにより当日のアクティブユーザー数が前月比1257.95%増と激増した。京東の全ECサイトの新規ユーザーのうち4割が京喜経由だ。
必死で地方都市市場を攻めるアリババと京東に対し、拼多多は大都市での市場拡大を画策している。モバイル関連データ統計会社「Quest Mobile」によれば、拼多多の過去1年間の増加は主に一~二級都市在住者であり、ユーザー比率は24.2%から34.7%に増加したという。
ただしハイエンド分野で絶対的優勢を占めるアリババと京東は、プラットフォームの好感度と商品に対する手厚い保障により、拼多多にとっての大きな壁となっている。3社のアクティブユーザーによる消費額を見ると、同時期のデータではないものの、拼多多は1566.7元(約2万4000円、昨年第3四半期)、アリババは8757元(約13万6000円、昨年第1四半期)、京東は5493元(約8万5000円、2018年第4四半期)となっており、拼多多の1人あたり平均消費額は京東の3分の1にも達していないのが現状だ。
最後に、企業に対する資本市場の期待値を動的に示す株価収益率(PER)を比較すると、アリババのPERは22、京東では87.68、拼多多は赤字のためPERデータなしということで、ここでも予想通りアリババがリードしている。
アリババは他を凌ぐ事業規模を基盤に、予測可能な範囲においては向かうところ敵なしとなっている。京東にとっては拼多多の急成長が刺激となっており、ナンバーツーの地位を守るべく事業をさらに加速させるほかにない状況だ。
作者:「Tech星球」(WeChat ID:tech618)、馬微冰
(翻訳・神部明果)
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