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ファーウェイは現在、IoT事業の「軌道修正」を進めており、同社のIoT製品は主力のスマートフォンと同列に扱われ始めている。
ファーウェイが昨年11月下旬に行った新商品発表会で主役となったのは、スマートフォンではなくタブレットやスマートスピーカーだった。同社のIoT製品はこれまでスマートフォンの脇役として発表されてきたが、ファーウェイのコンシューマービジネス部門の余承東(リチャード・ユー)CEOは36Krに対し、今後はこうしたIoTメインの新作発表会を定期的に実施していくと述べている。同社におけるIoTデバイスの重要度は、スマートフォンと同程度にまで高まりつつあるといえる。
ファーウェイはこれまで、主にスマートフォンに注力することで世界第二の地位を守り続けてきた。昨年の出荷台数は2億4000~5000万台とサムスンに迫る勢いをみせている。現在のスマートフォン事業の伸び率は依然として高いものの、サムスンやアップルのこれまでの業績からして、出荷台数だけでいえば今後数年で頭打ちとなる可能性がある。
まさにこうした状況に対処するため、ファーウェイはPCやタブレット、スマートスピーカー、スマートウオッチなど8種の製品を次の成長分野に据えた。
これらの製品領域において参入が若干遅かったファーウェイだが、タブレットやスマートウオッチなどの分野ではすでに注目に値する成績を残してきた。タブレットに関しては、昨年の出荷台数は1000万台を超え、トップメーカーの仲間入りを果たした。IT専門調査会社のIDCのデータによれば、昨年第3四半期のタブレット出荷台数は、中国国内で初めてアップルを抜いてトップとなり、シェアは37.4%に達している。
足場を固めたファーウェイの次なる目標こそハイエンド市場への参入であり、その手始めとなったのがタブレットとスピーカーだ。
タブレットとスピーカーから狙うハイエンド市場
ファーウェイの最新製品であるタブレット「MatePad Pro」とスピーカー「Sound X」は、前モデルに比べ大幅に値上げされた。両製品はこれまでとは別路線を行くハイエンドモデルとして展開されている。
同社のこれまでのタブレットは、2000元(約3万2000円)以下から買える低価格機種だった。しかしMatePad Proは一番安いもので3299元(約5万3000円)と前モデルより1200元(約1万9000円)もアップしたほか、ハイスペック版は5999元(約9万6000円)と他社のハイエンドモデルと肩を並べるほどだ。リチャード・ユー氏によれば、今後はディスプレイがさらに大きく、より高額なMatePad Proシリーズの製品が発表される可能性があるとのこと。今後は同社の販売チャネルや対企業販売における強みを生かし、アップルのシェアをさらに奪う可能性も大いにある。
一方でスマートスピーカーSound Xの価格も、前モデルの399元(約6400円)から1999元(約3万2000円)に大きく引き上げられた。アップルの中国版HomePodの販売価格は2799元(約4万5000円)であり、これと大差がない。製品の特長もアップルとよく似ている。スマートスピーカーとしての基本機能に加え、音質が非常に重視されており、フランスの著名オーディオメーカー「Devialet(デビアレ)」の技術が採用された。
Sound XがMatePadと異なるのは、同スピーカーの価格帯が中国国内の消費者にとってはかなり挑戦的であり、短期的には大量販売が見込めない点だ。だがリチャード・ユー氏は、Sound Xの音質はアップル製品を大きく上回っており、国内販売台数は必ずアップルを抜くと述べている。とはいえ、海外では現地の言語に合わせた開発が必要であり、グーグルやアマゾンの音声アシスタントは現時点ではまだ使用できない。自社のAIアシスタントの開発にはしばらく時間がかかりそうだ。
シャオミとアップル両社を見据えたIoT戦略
IoT対する期待度は総じて高く、ファーウェイ、シャオミ、アリババなどの国内トップ企業がいずれも関連製品を展開している。
表面的にみれば、ファーウェイとシャオミのIoT戦略はよく似ている。両社はいずれも比較的早期からIoTプラットフォームを立ち上げ、自社のハードウエアの展開と同時進行させてきた。シャオミの戦略は「1+4+X」と呼ばれ、1はスマートフォン、4はテレビ、スマートスピーカー、ルーターおよびノートパソコン、そしてXは自社のエコシステム内のパートナー企業により提供されるその他のIoT製品を意味する。こうした無数のパートナー企業のサポートのおかげで、シャオミのIoTデバイスのラインナップは他社を凌いでナンバーワンとなっており、これらのデバイスが最も優れた業績を挙げている。同社が自社生産する四大IoTデバイスの売れ行きも好調で、いずれも各分野で上位のシェアを獲得している。
シャオミと同様、ファーウェイも8種類の主要IoT製品を自社開発し、それ以外はパートナー企業により生産されているが、具体的な販売方針はシャオミと大きく異なる。シャオミのIoT製品はスマートフォンのコストパフォーマンス戦略を踏襲しており、結果として低い利益率を招いている。一方でファーウェイが選んだのはハイエンド路線だ。上述のとおり、同社の新製品MatePad ProとSound Xはいずれもハイエンド製品であり、リチャード・ユー氏によれば、ファーウェイはこれらの製品に関してアグレッシブな販売目標を設定しておらず、ハイエンドユーザーの獲得をより重要視しているという。
つまり、ファーウェイのIoT戦略は、ハイエンド製品に関してはアップルをベンチマークとしたものといえる。昨年の国内スマートフォン市場に目を向けてみると、最終的な勝負の決め手となったのは技術、ブランド、販売チャネルであり、単なるハイコストパフォーマンスではない。これらのいずれにおいても優位だったのが国内シェア4割を獲得したファーウェイであり、最もコストパフォーマンスに優れたシャオミのスマートフォンが失ったシェアは最も大きかった。
ファーウェイのIoT製品の伸び率はスマートフォンを明らかに上回っている。世界市場におけるスマートフォン販売台数の伸び率は20%前後なのに対し、複数のIoT製品では3桁成長を達成した。昨年第1~3四半期の販売台数をみると、PCでは前年同期比214%増、スマートスピーカーでは同260%、スマートウエアラブルデバイスでは同272%増となっている。
リチャード・ユー氏は、IoT製品の売り上げが今後コンシューマー事業全体の3~4割を占めるようになると見込む。IoT製品は副次的な製品という位置づけを徐々に脱却し、スマートフォンと肩を並べ同事業を力強くけん引するエンジンとなりつつある。
(翻訳・神部明果)
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