海外製品の3分の1の価格で水素・蓄電市場を狙う、中国アニオン交換膜企業の挑戦

アニオン交換膜(AEM)を手がける中国企業「志青博材(ZhiQing Material)」がこのほど、追加のエンジェルラウンドで1000万元(約2億3000万円)規模の資金を調達した。レドックスフロー電池大手の大連融科儲能集団(Rongke Power)が出資を主導し、既存株主の熔拓資本(Roton Capital)も参加した。資金は主に中核材料の開発やプロセス確立に充てられる。

2023年6月設立の志青博材は、水電解による水素製造やレドックスフロー電池向けAEMの開発・量産に特化する。創業者の彭漢青氏は武漢大学出身で、AEM研究に約10年携わってきた。樹脂合成から膜材料の製造までを一貫して手がける技術体系を確立しており、樹脂反応装置1台で数十キログラム規模の安定生産を実現したほか、大面積の水電解用・レドックスフロー電池用隔膜を供給できる体制を整えている。

価格は海外製品の3分の1

AEMは陰イオンを選択的に透過させる機能性高分子膜だ。水電解では電解槽を弱アルカリ性環境で運転できるため、高価な貴金属触媒を使わずに済み、設備コスト全体を大幅に削減できる。プロトン交換膜(PEM)電解槽に匹敵する高い電流密度と応答性も備える。レドックスフロー電池では、活物質のクロスオーバー(漏れ)を効果的に抑制し、電池寿命と容量保持率の向上に直結する。

志青博材のアニオン交換膜

 

志青博材は独自の合成プロセスを採用し、主要な性能指標を大幅に高めることに成功した。引張強度は50MPaを超え、膨潤率は8%未満に抑えられている。水電解のテストでは、電流密度1A/㎠、圧力差0.6MPaの条件下で、酸素中の水素濃度は0.5%以下に、セル電圧は1.7Vまで低減した。しかも、サプライチェーンと連携することで、価格を海外製品の3分の1に抑えており、コスト面でも大きな優位性を持つ。

2025年3月に製品の販売を開始してから、すでに国内外の顧客20社以上に60件余りの納入を済ませており、産業現場での検証段階へと着実に歩みを進めている。水電解の分野では、複数のAEM電解槽関連企業による認証をクリア。レドックスフロー電池分野では、国内企業による導入が進むほか、欧州や韓国の企業ともテストに向けた調整を進めている。

「膜だけでは不十分」——ソリューション全体で勝負

AEMの市場浸透には5〜10年かかると見る同社は、焦らず競争力を積み上げる戦略をとる。創業チームは「膜性能を高めるだけでは不十分で、ソリューション全体が高度に整っていなければ意味がない」と強調する。今後1〜1年半をかけてサプライチェーン各社と連携しながらソリューション全体をブラッシュアップし、競争力の確立を目指す。

志青博材の消水素膜(水素透過抑制膜)

今回の資金調達を受けて、製品の開発や改良を継続しながら、AEMの性能向上とコスト削減を進めていくという。またAEM技術を、二酸化炭素電解還元や海水淡水化、電気透析などの分野にも広げていく方針。あわせて、生産拠点の整備を進め、段階的に生産能力を高めていく計画だ。

調査会社Global Growth Insightsによると、世界の水電解市場は2025年に5億5000万ドル(約880億円)に達し、35年には37億7000万ドル(約6000億円)へと拡大が見込まれる。長時間蓄電の本命技術と目されるレドックスフロー電池も市場が拡大しており、中投産業研究院の試算によると、2030年には世界市場が300億ドル(約4兆8000億円)に達する可能性を示唆する。

拡大が続く両市場を前に、志青博材は国産化とコスト競争力を武器に先行ポジションの確立を目指す。

*1ドル=約160円、1元=約23円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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