エアサス、電⼦制御で乗り⼼地快適 中国「SDRIVE」がMPV開拓
エアサスペンションを手がける中国のスタートアップ企業「時駕科技(SDRIVE)」がこのほど、某大手自動車メーカーの主力多目的車(MPV)向けの独占受注を獲得し、2026年10〜12月期にも量産出荷を開始すると発表した。創業者の烏偉民氏は「快適性が売りのMPVは、エアサス技術の価値を最も発揮できる車種だ」と述べる。
2021年に設立されたSDRIVEは、エアサスシステムの中核部品、ソフト・ハードウエアおよびソリューションの開発・生産に注力してきた。エアサスの国産化が加速するなか、独自技術と先行投資で競争力を築いた。

エアサスシステムの中核部品、ソフト・ハードウエアおよびソリューションの開発・生産
小型・静音・低コスト
ハードウエア面では、空圧ポンプ、電磁弁、コントローラー、乾燥機、フィルターなど複数の機能ユニットを高度に統合した密閉式空気供給モジュールを打ち出す。内気循環技術を採用しており、主流の外気導入方式と比べ小型かつ静かで効率も高い。しかも、同社の試算によると車両システム全体のコストを数千元(数万円)抑えることが可能なため、20万元(約460万円)クラスの車種でもエアサスの導入が加速する可能性がある。
ハードウエア面の核となるのが、空圧ポンプ、電磁弁、コントローラー、乾燥機、フィルターなど複数の機能ユニットを高度に統合した密閉式空気供給モジュールだ。外気を取り込む主流方式とは異なり内気循環技術を採用しており、小型・静音・高効率を実現した。同社の試算では、車両システム全体のコストを数千元(数万円)削減できるといい、これまでエアサスの採用が難しかった20万元(約460万円)クラスの車種への普及が加速する可能性がある。

設計面では、ソフト・ハードウエアを分離したオープンアーキテクチャを採用
設計面では、ソフト・ハードウエアを分離したオープンアーキテクチャを採用。次世代の中央演算プラットフォームや電気・電子(E/E)アーキテクチャにも柔軟に対応できる。ソフトウエアでは独自アルゴリズムが道路状況や運転状態をリアルタイムで解析し、車体姿勢とサスペンションの硬さを動的に調整することでよりなめらかな乗り心地を実現する。
フルアクティブサスペンションで先手
自動運転の実用化が加速するなか、「滑らかな走り」へのニーズも大きく高まっている。同社は、フルアクティブサスペンションがシャシー技術をめぐる競争の次のポイントになると判断した。現在のところ、ファーウェイ系高級EVの「尊界S800(Maextro S800)」や蔚来汽車(NIO)の「 ET9」などが搭載するフルアクティブサスペンションはすべて海外製で、国産化率は低いままだ。

フルアクティブサスペンションを搭載する「NIO ET9」。現状では同技術の国産化は進んでいない(北京モーターショーにて)
SDRIVEはこの空白域に早期から着目し、国内競合に先駆けて開発に着手した。技術的にはドイツの自動車部品大手ZFに近い「システム+油圧」ソリューションを選択した。烏氏「油圧式は耐久性が高く技術的にも成熟しており、量産化までのスピードで優位性がある」と説明する。一方、「磁気レオロジー+リニアモーター」方式の実用化には3〜5年を要するとみている。
すでに中国サプライヤーとして初めてフルアクティブサスペンションの中核技術開発を完了し、海外の大手顧客向けに概念実証(POC)を進めている段階だ。フルアクティブサスペンション開発の最後のステップであるプレビュー(予測)技術については、コンピュータビジョン関連企業への投資を通じて実現する計画だという。
高圧空気システムの総合企業へ
SDRIVEはエアサスペンション事業を足がかりとし、高圧空気システムを総合的に手がける世界初の企業へと成長しようとしている。現在は、車の座席やタイヤ、カメラ洗浄などに高圧空気を活用する方法を模索している段階だ。
2026年3月には、浙江省平湖市に建設した年産能力50万セットのスマート工場が竣工し、量産体制が整った。今後は「半アクティブからフルアクティブへ、中国から世界へ、自動車からエンボディドAI(身体性を持つ人工知能)へ」という3つの方向性を軸に、中国のスマートシャシー産業の再編をけん引する方針だという。
*1元=約23円で計算しています。
(翻訳・田村広子)