高齢者をAIで見守る中国、転倒を即検知 プライバシーにも配慮

高齢化が進む中国では、自宅で暮らす高齢者の見守り市場に参入するスタートアップや投資家が増えている。こうしたなか、高齢者向け見守り機器を開発する「元生智能(Yesen)」が、プレシリーズAで銀創資本(Incho Capital)などから1000万元(約2億4000万円)以上を調達した。資金は製品の改良や海外市場の開拓やに充てられる。

元生智能は2022年設立、主に65歳以上の独居高齢者や子どもと離れて暮らす高齢世帯向けの見守り端末を手掛ける。創業者で最高経営責任者(CEO)の鄧竜生氏と、共同創業者の房少傑氏は、ともに子ども向け教育機器大手メーカーの小天才(imoo)出身で、学習用タブレットや子ども向けスマートウオッチなどの製品開発を主導した経歴を持つ。

2025年初め、最初のデバイス「親鹿Z9」をリリースした。その後は需要の拡大を受け、26年に転倒検知機能を強化した「Dシリーズ」と、改良版の「Z9E」を投入した。新製品ではミリ波レーダーとカメラで得た情報をAIが解析することで、転倒事故をより迅速かつ正確に検知できるようにし、誤検知や見逃しを低い水準に抑えているという。また、ミリ波レーダーを使って心拍数や呼吸の状態をリアルタイムにモニタリングし、異常を検知すると自動で家族に通知を送る機能も備える。

新製品ではミリ波レーダーとカメラで得た情報をAIが解析

製品設計では、高齢者のプライバシーや使い勝手に配慮した。「D1 Plus」は通常の映像表示に加え、人物などを線画で表示する「プライバシーモード」を搭載する。安全を見守りつつ、本人のプライバシーを尊重できるようにした。部屋数が多い住宅でも、複数の端末が自動で中継し合い、家全体をカバーする。通知音を高齢者が聞き取りやすい音域に調整するなど、細部にも工夫を凝らした。

鄧CEOは、高齢者向けデバイスの開発で求められるのは機能性だけでなく、利用者の感情や尊厳、プライバシーへの配慮が欠かせないと指摘する。同社は、ユーザーのリアルな声をもとに、細かな改良を重ねてきた。例えば、音声データの送信開始を通知する機能を追加し、「常に会話を聞かれているのではないか」という高齢者の不安を和らげた。

中国では2022年末時点で65歳以上の人口比率が14%を突破、これに伴い高齢者向け産業が急成長期に入ったと鄧CEOは判断した。その後も介護保険制度の普及や高齢者人口の増加が続き、見守り需要は拡大している。鄧CEOは現在の高齢者向けテック市場を「カテゴリーとしては存在するが、決定的なブランドはまだない」段階と分析する。自社ブランド「親鹿(Keenluk)」を、市場を代表する存在に育てたい考えだ。

介護スタッフが絶望的に不足する中国、ハイテクで高齢者対策

海外展開にも積極的に取り組んでいる。現在はカナダやマレーシア、オーストラリアなどで法人向けの販売を進めており、2026年下半期には海外のアマゾン・ドット・コムを通じて自社による直接販売を始める計画だ。また、年内には24時間365日対応の緊急支援サービスを始める予定で、ケア体制の強化を目指す。

*1元=約24円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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