帰宅しても仕事 スマホから逃れられない社会人たち

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2019年12月、「996(朝9時から夜9時まで週6日間働くこと)」が中国国家言語資源研究センターが発表した「2019年度十大ネット用語」に選ばれた。

996への反発は強いが、インターネットや科学技術が発達した時代においては、常時身近にある高機能なモバイルデバイスによって、人々は職場から退勤した後も仕事に追われることとなり、仕事とプライベートの境界線が曖昧になっている。

帰宅してもスマホで24時間対応

「私は15のWechatグループチャットに入っており、職場では毎日10時間も働いている。しかしスマホは24時間立ち上げたままで、業務メッセージを受信したらその都度処理し、グループチャットに返信しなければならない」。こう話す呉静氏は、中国国内の大手交通運輸企業に勤務し、支社の後方支援部門のチームリーダーを務めている。スマホにインストールしているソーシャルネットワークアプリのうち、仕事に関連するグループチャットはどれくらいかと尋ねたところ、彼女はWechatのグループを数えて上述のように答えてくれた。

呉静氏が所属している業界は比較的特殊で、緊急対応が必要な場合も多い。例えば天候、設備故障の修理、人身事故、乗客のトラブルなどが業務の運行に影響する。そのため、彼女の直属の上司は「グループメッセージが発信されたら30分以内の返信が必須」とのルールを定めた。

「私たちの仕事は命に関わる仕事だ」と呉静氏は言う。これは業務の特殊性によるもので、他の多くの同僚と同じく、彼女も疲労やストレスによる心理的な問題への対応を後回しにしている。とはいえ、このような仕事の現状を変えることはできないと呉静氏はきっぱりと言う。家には高齢者も子供もいて、住宅や車のローンもあり、親の世話や子供に良い教育を受けさせるための支出は軽視できないからだ。

1日中、グループチャットに拘束される

「陳さん、12月の資金計画を送りました。支払いも含めて早急に処理してください」「陳さん、第二期の伝票のサインがまだです。必ず今日中にサインをして提出してください」「陳さん、第三期のG13区画で設計上の要求により新たに補強版が追加されましたが、それにより5号棟の基礎部分が壊れ、現場で対応する必要があります」。陳凱さんはこの日1日で12ものグループチャットに追加された。

「疲れるのはもちろんだが、『スマホに支配される恐怖』というのが適切だ」と陳さんは言う。実際のところ、コストエンジニアである陳凱さんにとってはパソコン、図面、ソフトウエアと向き合う時間が一番長い。しかし図面を描いたり、見積を作成したりする以外に、各作業を行う作業員との膨大なコミュニケーションも必要となる。

陳さんによると、スマホを30分間チェックしないと、画面にはWechatの未読メッセージを示す赤いアイコンと、自分宛てのメンションメッセージが表示されているという。これは強烈なストレスであり、彼は時に逃げ出したい衝動に駆られるという。

しかし、社会全体がこうした状況であり、人々はこのような状況に慣れてしまっており、働き過ぎかどうかと考える人はいない。

テクノロジーの濫用がもたらす過労

「一方では豊かな物質を享受しつつ、他方では仕事に強いストレスを感じている」。この言葉は森岡孝二氏の著書『働きすぎの時代』に由来する。

森岡孝二氏は生涯にわたり過労という社会問題に取り組み、上述の著書の中で日本社会における過剰労働の現状とその背後にある一連の原因について分析を行った。

現在の中国も同じ問題に直面している。ハイテク化と生産力の急激な向上が続き、人々は余裕ができるどころかますます忙しくなっている。

情報のグローバル化が進むにつれ、時間が競争の鍵となる多くの職業はますます忙しくなり、世界とつながる方法は多様化し、仕事とプライベートの境界線が曖昧になっている。

しかし、科学技術そのものに間違いはなく、現実に存在する問題は往々にして科学技術の発展の目的から逸脱し、濫用していることが原因といえる。企業やリーダーに人道的な制度と管理が欠けており、それが際限のない残業の原因となっている。

これ以外にも、捨てがたい物質的な豊かさ、耐えられない会社からの糾弾のまなざし、あるいは負けず嫌いな競争心などが、人々に過労を余儀なくさせている。
(翻訳・普洱)

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