ドローン30時間飛行 中国新興、水素燃料電池で「空」に挑戦

航空機向けの燃料電池動力システムを手がける中国スタートアップ「易氢動力(Easy H2 Power)」はこのほど、紅鳥啓航基金と貴州科創天使基金が主導する追加のエンジェルラウンドで数千万元(数億円)を調達した。資金は、航空機向け液冷式燃料電池の開発・検証および空冷式燃料電池の商用展開に充てられる。

水素燃料電池は自動車などで実用化が進んできた一方、航空用途では出力密度や信頼性、安全性などへの要求が高く、本格的な商用化には至っていない。近年はドローンや電動垂直離着陸機(eVTOL)の開発が活発になり、長時間飛行を可能にする動力源の一つとして水素燃料電池への関心が高まっている。

燃料電池は水素を使って発電するため、電池そのものに電力を蓄えるリチウムイオン電池とは仕組みが異なる。水素タンクなどを含むシステム全体の設計にも左右されるが、重量当たりのエネルギー量を高めやすく、燃料補給にかかる時間も短い。

易氢動力は2022年、清華大学教授で自動車工学の第一人者である欧陽明高氏と、同大学の卒業生らが中心となって設立された。創業チームは2018年に航空機向け燃料電池の研究を開始し、2020年には中国初となる航空機専用の30キロワット(kW)液冷式燃料電池プロジェクトを始動した。

航空機向け燃料電池には、自動車向け以上に軽量化や出力密度、環境適応性、信頼性が求められる。低温・低圧などの環境でも安定して稼働する必要があるほか、航空機として安全性を確認する耐空証明への対応も必要となる。同社はこうした要件に対応するため、主要部品を航空用途向けに一から開発することにした。

現在、異なる市場を対象に、液冷式と空冷式の燃料電池動力システムを打ち出している。

液冷式はeVTOLや大型航空機向けで、長期的な主力製品と位置づける。出力は当初の30kWから90〜110kWまで向上しており、将来的には300kW級を目指す計画だ。製品はすでにプロジェクト化の段階に入っており、中国商用飛機(COMAC)のほか複数のeVTOLメーカーと共同で、耐空性の検証を進めている。

一方、空冷式は比較的出力が小さく、ドローンなどへの搭載を想定する。液冷式に比べて構造が簡素で製品化までの期間を短縮しやすいため、同社は空冷式を先行して商用化し、液冷式の開発と並行して事業基盤を構築する戦略をとる。

空冷式燃料電池動力システム

現行の空冷式製品は3世代目にあたり、ドローンによる設備点検などで導入が始まっている。同社によると、巡回点検や低空物流といった分野では、リチウムイオン電池を搭載した機体と比べて3~4倍の航続距離を確保できるという。また、システム一式の価格も純電動方式に近い水準まで低下したとしている。

同社の空冷式燃料電池動力システムを搭載した高高度ドローンは、連続飛行30時間を達成している。2026年上半期は、ドローンによる巡回点検分野で数百万元(数千万円)を売り上げており、下半期には低空物流などへも用途を広げる計画だ。

液冷式については、耐空証明の取得や完成機の検証に時間を要するため、本格的な商用化は2~3年後を見込む。

創業者で最高経営責任者(CEO)の張科勛氏は、中国では再生可能エネルギーを使って製造する「グリーン水素」の供給網整備や、ドローンなど低空域を活用する産業の拡大が、水素航空機の普及を後押しするとみる。水素の製造・供給コストが低下すれば、航空分野でも燃料電池の採用余地が広がるとの見方を示している。

*1元=約23円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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