「一日も無駄にしたくない」Unitree創業者、フィジカルAIは最短1~2年で飛躍
「AIの重要性を十分に認識し、その可能性を信じている人は、私を含め、世界にまだほとんどいない」
中国の人型ロボット大手、宇樹科技(Unitree Robotics)は10月22日、創業以来初となるエコシステムパートナー向けの大会を浙江省杭州市で開催した。創業者の王興興氏は「AIを信じる、できる限り信じる」と題して講演した。
王氏は、汎用AIモデルの急速な進歩により、フィジカルAIは今後1~3年で大きな飛躍を遂げる可能性があると予測。「早ければ1~2年、遅くとも2~3年」との見方を示した。また、同社のロボットが今年末から来年にかけて一般家庭で働くようになり、音声指示を受けて部屋の片付けなどをこなせるようになることを期待しているという。
こうした判断のきっかけとなったのが、米OpenAIがこのほど公開した「GPT-6 Astra」だ。王氏は、社内で同モデルを使った実験を行ったことに触れ、プロンプトを与えるだけでロボットが絵を描き、自ら絵の具を替えたり、筆を洗ったりする動きも見せたことを明らかにした。囲碁の実験では、碁盤を認識し、指定された位置に石を正確に置くことができたという。いずれも対象の作業に関する追加学習を行わない「ゼロ学習」で実現したと強調した。
一方で、現在のAIモデルが得意とするのは作業計画や移動経路の判断であり、実際の操作では失敗も多いことを認める。物をつかむことは問題なくできても、精密部品の組み立てでは、位置や力のかかり方に応じて即座に動作を調整しなければならない。AIモデルの入出力を実機の動きとどう結び付けるかが、フィジカルAIの実用化に向けた重要な課題となっている。
AIを使ってロボットを訓練
宇樹科技はこれまで、関節や駆動システム、運動制御など、ロボット本体の開発を得意としてきた。業界の競争が「ロボットを動かすこと」から「実際の作業をこなすこと」に移るなか、同社は「頭脳」への投資も強化している。
国内外のAIモデル企業との提携に加え、独自モデルの開発も進める。昨年からは事前学習と深層強化学習を取り入れて、さまざまな動作の訓練効率を高める全身運動制御モデルを開発している。
開発中の「フィジカルAI自己進化V1」も明らかにした。AIが自らコードを作成し、シミュレーション環境で訓練・検証した後、実環境で試す。その結果を自動評価システムに戻し、改良を繰り返すという仕組みを想定している。
従来、ロボットに新たなスキルを身に付けさせるには、技術者によるデータ収集や度重なる調整が必要だった。同社はこの過程を自動化し、大規模に訓練できる仕組みづくりを目指す。ただし、現時点で公表されているのは主に構想であり、実際にどれほどの成果を上げられるかは今後の検証を待つ必要がある。
「まともに歩けず、走れないロボットが働けるのか」
「宇樹科技のロボットはなぜ作業をせず、ダンスなどのパフォーマンスばかりしているのか」。こうした疑問に対し、王氏は、格闘技や球技は人間がトレーニングを積むのと同じように、安定性や動作の精度を鍛えるためだと説明した。格闘技では衝突や転倒も伴うため、ロボットの信頼性を試すことにもなるという。
「まともに歩くことも走ることもできないロボットに、どんな作業を期待できるというのか」(王氏)。
実用化に向けては、ロボット本体や主要部品、アルゴリズム、データ、シミュレーション、産業向けソリューションなどを手がける起業チームを支援する「宇創計画」も立ち上げた。ロボットのプラットフォームや開発ツール、量産技術、活用の場、産業資本などを提供し、今後5年間で200社以上の関連企業を育成したい考えだ。
未来を支える5つのリソース

王氏は、ロボット産業の発展には大規模な生産体制、フィジカルAIモデル、膨大な演算能力、半導体の生産能力が重要になると指摘した。
同社の人型ロボット「G1」は累計1万~2万台が生産ラインから出荷されたものの、将来の業界には年間数千万台を生産できる能力が必要になると予測する。
そのうえで、これから最も重要になるリソースとして、データ、演算能力、半導体の生産能力、エネルギー、鉱物資源の5つを挙げた。
業界については「市場は非常に大きいが、競争も激しい」と語った。自身については、やりたいことや学びたいことが多く、時間が足りないと明かし、こう述べた。
「今は最高の時代だ。一日たりとも無駄にしたくない」
(36Kr Japan編集部)
