3D生成AIをものづくりに 中国・数美万物、自社工場で試作・検証

3Dモデル生成AIを活用したものづくりに取り組む中国スタートアップ企業「数美万物(Math Magic)」はこのほど、シリーズAと追加のA+ラウンドで、合計約5000万ドル(約80億円)を調達した。出資はBAI Capitalと華業天成資本(HyT Capital)が主導し、雲暉資本(V Fund)や紅杉中国(HongShan)、IDG Capital、美団龍珠(Meituan Longzhu)、清流資本(Crystal Stream)、錦秋基金(Jinqiu Capital)なども参加。調達資金をAIモデルの開発や製造・納品体制の整備に充てる。

数美万物は2024年初めに設立された。創業者の任利鋒氏は、バイトダンス(字節跳動)で動画投稿アプリ「抖音(Douyin)」の立ち上げに携わり、同社傘下のの仮想現実(VR)機器メーカー「PICO」の副社長も務めた。現在はAIで生成した3Dモデルをフィギュアや工芸品などの製品づくりに生かそうとしている。

「数美万物」創業者の任利鋒氏

製品をつくるには、平面のデザイン案を3Dモデルに起こし、材料や加工方法に合わせて修正する必要がある。任氏によると、ジュエリーやフィギュア、工芸品の分野では、この工程を担う熟練人材が不足している。数美万物はAIでモデリングの手間を減らし、デザイン案を実物にするまでの工程を効率化する考えだ。

同社は製造現場で得た膨大なデータを活用し、3Dモデル生成AI「Hi3D」を開発した。8月に公開した新バージョン「Hi3D V3.0」は、立体形状を表す際の解像度を、従来の1536×1536×1536ボクセルから2048×2048×2048ボクセルに高めた。社内外の専門家が評価したところ、この細部の表現力は「人が制作できる3Dモデルの限界レベル」に達しており、一部装置の加工精度も上回っているという。

ただ、画面上で精細な3Dモデルができても、そのまま製造できるとは限らない。3DプリンターやCNC加工機などの装置を使うため、データに形状の欠損がないことに加え、装置や加工工程に適した形式にする必要がある。

「Hi3D」の3Dプリント実験室

同社はAIで生成した3Dモデルが実際に生産可能かを検証するため、珠江デルタ地域に自社工場を建設し、北京市には3Dプリントの実験室を設立した。生産チームがモデルを出力し、造形物に破損や穴がないか、造形用データへの変換でエラーが生じないかを確認する。問題が見つかれば開発チームに伝え、AIモデルや製品の改良につなげる。

任氏は、自社工場には製品をつくるだけでなく、試作を繰り返して製造データを集める役割があると説明する。材料や装置、加工方法を変えながら検証し、AIが生成したモデルを実物にしやすくする狙いだ。通常の受託工場では、生産ラインを使って試行錯誤を重ねることは難しいという。

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同社はゲームや映像向けにも3Dモデル生成サービスを提供するが、ものづくり向けを重点分野とする。ゲーム向けにはデータ量を抑え、扱いやすいモデル構造が求められる。一方、製造向けには加工機器や生産工程との適合が欠かせない。任氏は、1つの基盤モデルだけで双方の課題を解決するのは難しいとみている。

今後は基盤モデルの開発を強化するとともに、珠江デルタ地域の製造企業との連携を深め、海外展開も進める。生成したモデルを加工しやすいパーツに分解可能な技術や、寸法などを後から変更しやすい3Dデータの生成にも取り組む方針だ。

*1ドル=約157円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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