「NVIDIAになる」ファーウェイの野望 通信技術を武器に、AI半導体の壁を越えられるか

中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が、通信分野で培ってきた技術力を、AIコンピューティング市場で戦うための武器に変えつつある。監事会主席の郭平氏はこのほど開催された社内座談会で、ファーウェイがICT(情報通信技術)およびコンピューティング分野で目指すのは、「NVIDIA(エヌビディア)になることだ」と述べた。

同氏は、ファーウェイの最大の強みは自社開発のAIモデルそのものではなく、顧客が優れたAIモデルを構築できる環境にあると強調。世界のあらゆるAIモデルを、同社のAIチップ「昇騰(Ascend)」、サーバー向けCPU「鯤鵬(Kunpeng)」、スーパーノード、クラスター上で効率的に稼働させることを目指す。ファーウェイはAIチップの販売にとどまらず、AIモデルの開発や運用を支えるコンピューティング基盤全体の提供まで見据えているのだ。

ファーウェイのAIチップ、中国シェア「エヌビディアを上回った可能性」 供給能力が課題

通信インフラの蓄積を、AI時代の武器に

消費者にとって、ファーウェイを代表する製品といえばスマートフォンだが、同社の主力事業は今も通信インフラである。2025年のICTインフラ事業の売上高は3750億1400万元(約9兆円)と、端末事業の3444億7300万元(約8兆3000億円)を上回った。通信ネットワークからサーバー、クラウドサービスに至るまで、長年にわたって培ってきた技術力が、AIコンピューティング市場に進出するための土台となる。

折りたたみiPhone発表、ライバルに追い風か ファーウェイ「販売76%増」

チップ単体から「つなぐ技術」の競争へ

AIモデルの学習では、多数のチップを連携させる必要がある。データ転送速度が遅かったり、接続エラーが頻発したりすれば、チップ単体の性能がどれほど高くても、システム全体の効率は上がらない。そのためAIコンピューティングをめぐる競争では、チップそのものの性能に加え、チップ間の接続、メモリおよびシステムの安定性を含めた総合力が問われることになる。

ここにファーウェイの強みである通信技術が生きてくる。同社は、複数のコンピューティングノードを高速の接続技術でつなぎ、メモリ空間を共有することで、1台の大型コンピューターのように動作させるコンピューティング基盤システム「スーパーノード」を打ち出した。このようなシステム設計を通じ、多数のチップを連携させて処理する際の効率向上を狙う。

中国AIチップ「1万枚出荷」が9社以上。国産シェア35%に急拡大、NVIDIA「一強」に風穴

ファーウェイは2026年9月、AIチップ「昇騰910C」を384枚搭載するスーパーノードがすでに1000セット以上導入されており、「昇騰950」を使ったスーパーノードも本格的な商用展開が始まっていると明らかにした。次世代チップの「昇騰960DT」は2027年1~3月の投入を予定しており、当初の計画から3四半期の前倒しとなる。これと並行して、光相互接続やストレージシステムの開発にも取り組んでおり、コンピューティング基盤システム全体の性能向上を進めている。ただ、システムの規模が大きくなれば、電力供給や放熱、運用・保守の面で負担が増す。そのため、コンピューティング基盤システムを評価する際には、チップの数や理論上の演算性能だけに注目するのではなく、処理にかかる時間や消費電力、総コストを含めて検討する必要がある。

先端メモリ「HBM」、量産と調達の壁

一方で、高帯域幅メモリ(HBM)の調達という壁もある。AIチップは大量のデータを絶えず読み込む必要があるため、メモリ帯域幅が不足するとチップの演算性能を十分に引き出せない。現在、HBMを安定して量産できるのは韓国のサムスン電子とSKハイニックス、米マイクロンの3社に限られる。米国商務省が2024年12月からHBMを対中輸出規制の対象に加えたため、ファーウェイはこの3社からHBMを調達できない状況にある。

報道によると、ファーウェイは輸出規制の前に確保した在庫を使用するとともに、HBMの自社開発にも取り組んでいる。昇騰950DT向けHBM「HiZQ 2.0」は容量144GB、帯域幅4TB/sと、高いスペックを実現した。その他の中国メーカーもHBMの開発を進めている。米テック系メディアThe Informationは8月31日、中国半導体メモリ大手の長鑫存儲(CXMT)がHBM3Eの限定的な試験生産を開始したと報じた。一方、韓国メディアChosunによれば、一般的にHBMの量産には80%前後の歩留まりが求められるのに対し、同社のHBM3は25%前後にとどまるという。エヌビディアを追うファーウェイにとって、先端メモリの供給体制と歩留まりが、乗り越えるべき大きな壁となっている。

DRAM世界4位の中国CXMT、新世代技術で量産 チップ容量5割増

NVIDIA追撃の鍵は?

さらに大きなハードルとなっているのが、ソフトウエアをめぐるエコシステムだ。エヌビディアの開発基盤「CUDA」は、プログラミングツールに加え、さまざまな用途に対応したアクセラレーションライブラリや開発リソースを提供しており、すでに20年近くにわたって多くの開発者から利用されてきた。顧客はコンピューティング基盤を選ぶ際に、既存のコードやツール、開発チームのノウハウをそのまま活用できるかどうかをまず考慮する。新しい開発環境に乗り換えると、コードを改めて対応させたり、動作をテストしたりする必要が生じるからだ。

ファーウェイは、昇騰のソフトウエアプラットフォーム「CANN」を軸に開発者の取り込みを図り、主要な開発フレームワークへの対応も拡大している。年次イベント「Huawei Connect」では、CANNコミュニティーの月間アクティブ開発者が5200人を突破したことが公表された。また、コンピューティング基盤の昇騰が、中国のコンピューティング基盤としては初めて、AI開発フレームワーク「PyTorch」の公式サイトから直接インストールできるようになったことも明らかになった。

郭氏は座談会で、DeepSeek創業者の梁文鋒氏の見解を引用し、AI技術の急速な進化によって、CUDAエコシステムが築いてきた優位性も弱まる可能性があると指摘した。

ただし、開発者数や対応フレームワークの拡大が、そのまま競争力につながるわけではない。既存の開発環境からの移行負担を抑え、実際の運用で使いやすさと信頼性を示せるか。そこが、ファーウェイの「NVIDIAになる」という構想の成否を左右する。

NVIDIA依存脱却へ、DeepSeekが独自AIチップを1年前から極秘開発

 *1元=約24円で計算しています。

 (翻訳・畠中裕子)

日本企業のDXを促進するプラットフォーム「CONNECTO」
無料コンテンツ公開中

最新記事