ネット活用型キッチンカー、フードデリバリー業界の問題にひとつの答え

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中国では昨年、ネット経由フードデリバリーの市場規模が3980億元(約6兆3700億円)に達した。シェアの9割以上を生活関連O2Oサービス企業「美団点評(Meituan Dianping)」とフードデリバリー大手「餓了麼(Ele.me)」の2社が独占している。

オンラインプラットフォームとキッチンカーを組み合わせた「巧了(Qiaole.club)」を展開する「卡米湾互聯網技術(commii.com)」創業者の張大軍氏は、フードデリバリー業界にはいくつかの問題があると指摘する。第一に、配達にかかる時間。所要時間は平均30分で、食品の温度や鮮度に影響する。第二に、加工プロセスの不透明性。「闇工場」など食品の安全性に関するリスクが存在する。第三に、デリバリー代行業者の手数料や配送料金が高騰し、店側が代金の値上げを避けられない状況となっていることだ。

張氏らはこうした問題を見据えて巧了の立ち上げに乗り出した。「近場のデリバリー」サービスとして、キッチンカーで特定の場所に乗り入れ、対象エリア内のユーザーから注文を受け付けることにより、調理プロセスの透明化と調理後の即時配送を実現する。活用場面としてはオフィスや観光名所、屋外イベント、商店街などを想定している。

現在はサービスの実証試験を進めているところだ。キッチンカー1台のコストは車両本体や自動車登録手続きなど含め8~10万元(約130~160万円)。1台につき2名のスタッフが配置され、調理と配送を担う。巧了は昨年6月と9月に2台のキッチンカーを運行。1日3時間の実証試験を行ったところ、1台当たりの売上高は800~1000元(約1万3000~1万6000円)、粗利益率は約55%だった。また、公式SNSアカウントのフォロワー数も1万人を突破した。

キッチンカーはデータの入口にもなる。収集したユーザーデータをオンラインプラットフォームに送信し、データを活用したマーケティングを行う。具体的には、キッチンカーに取り付けたネットワークカメラでユーザーの視覚データ(服装、アクセサリー、年齢、性別など)や周辺の人の流れ、客足などのデータを収集し、「移動フードデリバリーに関するデータバンク」を構築する。また、AIツールを用いたデータ分析によりユーザーの好みを予測し、オンライン上で精度の高いおすすめ商品を表示するほか、カスタマイズサービスも提供する。

巧了が考えるビジネスモデルは、飲食または小売を手掛けるチェーン企業をパワーアップさせる法人向けプラットフォームだ。オフラインでは事業者のニーズに合わせて移動店舗をカスタマイズし、オンラインでは運営・管理サービスとAI技術を提供する。将来的には加入飲食・小売業者から得る手数料が事業者の売り上げの中心になる。オンラインプラットフォームで提供するサービスも電子商取引(EC)、ターゲティング広告、ソーシャル消費、グルメ観光などに広げていく。

張氏は巧了のコアコンピタンスとして次の3つを挙げる。第一に、従来型フードデリバリー業界の欠点を持ち合わせていないこと。消費者側からみれば、既存のフードデリバリー業界には配達範囲の制限があり、特定エリアのユーザーは選択肢も限られていた。だが、キッチンカーに注文拒否は存在せず、生産量も余裕がある。店側からみれば、キッチンカーには賃料という固定費が存在しない上、シェフなども必要とせず、運営コストを引き下げることができる。さらに、キッチンカーは観光名所の環境を破壊せずに済む。第二に、味。デリバリーフードの均質化が進む中、巧了は若者に焦点を合わせ、地方色を取り入れたファストフードや軽食を提供する。

第三に、特許という砦。巧了はすでにソフトウエアに関する特許7件を取得している。他にも、キッチンカーの主な電気設備に用いることができる電池をハルビン工業大学と共同で開発している。

中国ではここ数年、キッチンカーの普及が進み、メーカーは100社を超えた。ただし、張氏は中国のキッチンカーの発展は始まったばかりであり、インターネットやビッグデーダなどの技術と結びつくことで、より多くの業界を跨ぐビジネスチャンンスがもたらされるとの見方を示す。

巧了は今後、500万元(約8000万円)の資金調達を行う計画だ。調達後2年以内に加入企業は100社以上、プラットフォームの生産額は1800万元(約2億9000万円)、純利益は500万元(約8000万円)に達する見通しだという。キッチンカーは黒竜江省ハルビン市、海南省海口市およびその周辺で運行する予定だ。
(翻訳・池田晃子)

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