新型コロナ、病棟で活躍する配膳ロボットの現状と課題

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現在流行している新型コロナウイルス肺炎は強い感染力を持つ。院内感染を防ぐには、医療スタッフが患者に直接触れないだけでなく、最低1メートルの距離を保つことも必要だ。このような状況では、必要な物をどのように患者に届けるかが問題になる。武漢で完成したばかりの仮設病院「火神山医院」は「配送レーン」を設置、スタッフと患者の直接接触を回避しているが、中国の既存の病院のほとんどはこのような設備を備えていない。

新型コロナウイルス肺炎の流行を受け、もともと外食産業などで使われていた配膳ロボットの医療分野への転用に注意が向けられた。36Krは感染拡大地域での配膳ロボットに関する状況について、中国の主要な配膳ロボット開発メーカー「擎朗智能科技(KEENON Robotics)」と「普渡科技(PuduTech=Pudu Robotics)」に話を聞いた。

「テクノロジーでウイルス撲滅を支援」。普渡科技の公式サイトより

緊急事態のため、病棟では配膳ロボットの迅速な設置が求められており、ロボットによる配膳ができればそれでよく、細かい要求があるわけではない。したがって、基本的にはメーカーの現有ロボットをそのまま使用するか、院内歩行ルートとの調整や障害回避のためにプログラムを少し修正したロボットを使用している。

普渡科技CEOの張涛氏は配膳ロボットの作業効果について「実はレストランというのは屋内移動ロボットの作業シーンで最も複雑なシーンだ。レストランはレイアウトが複雑で、通路は狭く、店内の状況に規則性がなく、動く障害物も多い。そのため、病院での配膳ロボット運用はレストランよりはむしろ簡単で、技術上のチャレンジは大きくない」と語った。

交差感染を防ぐため、隔離エリアでの1室の患者数は基本的に1人だ。通常、病院のフロアあたりの病室数はは20前後となっている。張涛氏は、普渡科技のロボットなら各フロアにロボット1台の配備で足りるという。現時点で約60台が既に配備され、配備待ちが300台ある。カバー地域は浙江、広東、重慶、四川、湖南、江西、湖北などだ。

擎朗智能科技は既に中国各地に数百台のロボットを提供している。また、積極的に病院にアプローチし、需要をヒアリングしている。

擎朗智能科技CEOの李通氏が、配膳ロボット導入について現時点での問題を3つ挙げた。

物流:突発的な感染症の流行により物流輸送の安定性が低下している。高速道路の封鎖と全件検査により普段より輸送に時間がかかっている。患者の爆発的増加のため病院が必要とする物資も届いていない。

スタッフの安全:ロボットの配備には現場でサポートするスタッフが必要だ。流行が深刻な地域では、スタッフが感染したり、隔離されるリスクがある。

許認可申請:ロボットが感染地域へ入るには病院や政府からの承認や認証が必要だ。特に湖北省などの感染が深刻な地区では、救援物資は特別ルートを通過しなければならず、輸送と配置に時間がかかってしまう。

今回の新型コロナウイルス肺炎の流行は屋内配送ロボット業界にも影響を与えるだろう。屋内配送ロボットはレストランなどで既に運用が始まっており、レストラン側は効率化や人件費削減により基本的に1年で投資回収ができるようになっている。短期的に見れば、感染症の流行が収束するまで、外食産業における配膳ロボットの需要は大幅に減少するだろうが、長期的に見れば、今回の感染症流行は業界への教育的作用をもたらし、顧客がロボットの利便性に気付く契機になった。これらの状況により、業界の将来的発展は有望だと考えられる。

擎朗智能科技と普渡科技、両社は病院へロボットを配備したが、どちらも初期段階である。例えば、普渡科技のロボットは病院内での薬の配達を行える。ここで使用される密閉式ロボットは、高精度の視覚情報を得ることができるため、正確に人に配送できる。擎朗智能科技も、院内配送、隔離サービス、受付ニーズなどに対応するシステムソリューションを提供する計画を発表した。 ただし、これは特殊なニーズが引き起こした短期的な需要の市場であり、長期的に見ると、医療分野での配膳ロボットの発展にはまだ一連の課題が残っている。

医療現場のような特殊な場所に配膳ロボットを大規模に導入させるには、技術、チャネル、許認可の課題に加え、病院関係者に長期にわたって働きかける必要がある、と一部の投資家は指摘する。設備の導入には基本計画の練り直しが必要となる。まず、多くの病院のインフラはそれに対応できるレベルに達していない。また、配膳ロボットの適時かつ効果的な消毒をいかに保証するかも病棟ならではの課題だ。最後に、配膳ロボットが看護師に代わって配送する際に万が一事故が起きた場合、誰が責任を負うか。これらは今後のスマート病棟が検討すべき課題でもある。
(翻訳・永野倫子)

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