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6月18日前後に開催される中国最大級のECセールイベント「618セール」が目前に迫るなか、ショート動画プラットフォームの「抖音(Douyin、海外版はTikTok)」とアリババ傘下のECプラットフォーム「淘宝(タオバオ)」の競争の激化によって、互いの機能を制限する動きが見られている。現在抖音のライブコマースにタオバオの商品のリンクを貼ることができなくなっている。これは抖音でタオバオの商品を紹介しようとしている出店者にとって寝耳に水の事態だ。
数カ月前には、同じくショート動画サービス大手の「快手(Kuaishou、海外版は「Kwai」)」とタオバオの間でも機能を制限するトラブルがあった。両社は昨年のダブルイレブン(アリババ主催の11月11日に開催されるECセール)で提携したが、その1カ月後の12月から、快手のライブコマースにタオバオの商品のリンクを貼ることができなくなった。快手は公式には「システム更新のため」と説明しているが、実際は快手を介したタオバオの取引のデータの提供をタオバオが拒んだこと、タオバオが快手の配信者を引き抜こうとしたことなどに、快手が報復をしたのが原因である。
今年3月から、再びタオバオのリンクが快手で使用できるようになったが、快手に近い関係者の情報によると、両社の蜜月期はすでに終了し、今後快手は自身のプラットフォーム上でオンラインショップを育成することに注力するため、タオバオにトラフィックを提供し続けるようなことはありえないという。
アリババと全面的な競争を展開しているEC大手の「拼多多(Pinduoduo)」は、2019年5月に快手と戦略的提携を始めたが、同年10月に早くも提携を解消したという。前出の関係者によると、快手はオンラインショップの開設ページやチュートリアルなどで拼多多について全く触れていないため、拼多多としては提携の効果を実感できず、関係解消に至ったのだという。
快手からすれば、拼多多は元々理想のパートナーではない。拼多多で販売されている商品は利益率が低く、配信者がそれを紹介しても十分な収益が見込めない。また、両社のターゲット顧客層は近いため、拼多多でのショッピングに慣れたユーザーが快手を利用しなくなる可能性がある。提携解消後、拼多多は2019年11月に自社のライブコマースを始め、快手との競争はより激しくなった。
残るEC大手は「京東(JD.com)」であり、快手は618セール直前に京東との提携を発表した。京東に近い関係者によると、京東は快手が得意とする地方都市在住者からのトラフィックを必要としており、快手のユーザーは京東が扱う低価格の家電製品を求めている。そのため、両社の提携交渉はすぐにまとまったという。
ライブコマースは2019年から急成長し、コンテンツプラットフォームの抖音と快手、ECプラットフォームのアリババ、京東、拼多多がともに参入したことで、複雑な競争・協力関係が生まれている。
EC側の3社は、抖音または快手のどちらかと同盟関係を結び、ライブコマースの市場拡大を望んでいるが、トラフィック面で抖音と快手に過度に依存することは避けたいと考えている。トラフィックを持つ抖音と快手は、EC側のサプライチェーンがなければ十分な売り上げが期待できないが、その一方で自社のサプライチェーンを構築する野心も捨てていない。
後者の動きが顕著に見られるのは、抖音が5月中旬から618セールに合わせて始めた出店者募集計画である。抖音に出店するオンラインショップ向けの店舗管理アプリの内部テストを始め、出店者にはトップページの目立つ位置で掲載、トラフィックの提供、販売手数料1%などの好条件を出している。
抖音と快手の間でも当然競争はあるが、アリババに対する態度では一致している。そのためアリババは難しい判断を迫られている。両社との提携をともに打ち切れば、トラフィックが見込めなくなりライブコマースの成長の波に乗り遅れる可能性が高い。しかし、提携を継続すれば、主導権を相手に握られかねないのである。
もちろん、アリババのサプライチェーンへの影響力の強さは強力な武器になり得る。それにより、これまでのアリババは、トラフィックを持つ相手との交渉で優位に立ち続けていた。しかし、今回の相手は単なるトラフィックの提供者ではなく、巨大プラットフォーマーを目指す抖音と快手である。両社は様々な手段でサプライチェーンを構築しようとするだろう。アリババにとって、同じEC側にある京東と拼多多が、一時的な盟友になる可能性さえある。
いずれにしても、大手5社の混戦は避けられない。
(翻訳:小六)
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