高解像度カメラによる次世代実写立体動画 広告や教育業界への応用が進む

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技術的な限界から、動画は目の前の世界を平面上に映し出すことしかできなかった。しかし、技術の進歩がよりリアルで立体的に世界を再現することを可能にした。「実写立体動画(Volumetric Video)」は全く新しい3D動画制作技術で、100台以上の上高解像度カメラを使用して多くの角度から人物と動きを捉え、3D空間に再現する。この技術はVR(仮想現実)映画の制作やAR(拡張現実)、MR(複合現実)を用いたコンテンツ制作に利用できる。

実写立体動画技術は2015年に登場してからすでに数年経ち、第一世代から第二世代へと進化を遂げている。第一世代は米グーグルやマイクロソフトなど大企業がリードした。多くのメーカーは、撮影用に建てた工場のように大きなスタジオで、大量のカメラを使って全てのシーンを記録し、コンピュータールームにアップロードした後、コンピューターで動画を制作する。この方法ではリアリティーのある世界を再現できるものの、極めて高いコストと専門的な撮影・編集技術が必要な上、制作時間も長く、1分間の実写立体動画を制作するのに6~8時間かかる。第二世代の実写立体動画技術は第一世代の技術を基盤に、設備の軽量化やコスト削減、リアルタイム制作を実現し、ソリューション全体のコストパフォーマンスを向上させている。

36Krはこのほど、第二世代の実写立体動画技術を手掛ける中国スタートアップ「普羅米修斯(PROMETHEUS)」を取材した。同社は2018年、深圳市で設立され、実写立体動画技術を利用して動態3D撮影ソリューションや撮影用ソフトウエア(SaaS)サービス、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)とSDK(ソフトウエア開発キット)を組み込んだサービスを提供している。張煜CEOによると、同社はディープランニングなどを利用したアルゴリズムで一般的なカメラの精度を補い、組み立て式の移動スタジオと軽くて一般的なカメラによる撮影でも、第一世代の実写立体動画と同等の効果が得られるようにした。また、プロセスを最適化することで処理速度を上げ、リアルタイムで実写立体動画を制作することを可能にした。1分間の撮影内容を1分間で15~20フレームの動画にすることで、撮影とほぼ同時に動画を完成させられるという。

 

張CEOは中国国内における実写立体動画の活用事例として広州市の不動産業者に依頼されて手掛けた大規模なバーチャルコンサートを挙げ、来場者はスマートフォンを舞台に向けるだけで、あらゆる角度から本物の演奏者がバーチャル空間で行う演奏を鑑賞することができたと説明。10人がスマホを取り出して輪になれば、360度からコンサートを見られただろうと述べた。

同社が現在重点を置いている事業はホログラム広告だ。張CEOはXR(クロスリアリティー、VR・AR・MR等の総称)環境においてはコンテンツのニーズが大量にあると考えている。ホログラム広告は最も参入しやすく、利益も上げやすい。同社は屋外広告を手掛ける企業と提携し、XR技術を利用した屋外看板に広告を展示することで、従来型の広告をアップグレードする計画だ。同社はさらに、教育分野におけるXR技術の応用も検討している。中国国内でVRを利用した教育関連企業と提携し、K12(幼稚園年長から高校生まで)分野でVRとホログラムを利用した教師によるMOOC(大規模公開オンライン講座)を開発中だ。

実写立体動画の市場はまだほぼ手つかずで、関連技術を持つのは大部分がスタートアップ企業だ。世界の実写立体動画市場規模は2019年には5億7900万ドル(約620億円)となっており、英「Volcap」の予測によると2022年には27億8000万ドル(約3000億円)に達する見込みだ。

投資家もこの分野に注目している。2017年、実写立体動画技術を手掛ける
「猫頭鷹視界科技(Owlii)」と「畳境数字(DGene)」、ホログラム技術の米「8i」が、それぞれ真格基金(Zhen Fund)、アリババグループ、バイドゥ・ベンチャーズから資金を調達している。Owliiは昨年ショート動画プラットフォームの「快手(Kuaishou、海外版は「Kwai」)」に買収された。

PROMETHEUSは現在、販売経路の構築やSaaSプラットフォームの開発、リアルタイム3D動画配信技術への取り組みなどに充てるため、プレシリーズAで600万元(約9000万円)の資金調達を検討している。これまでにシードラウンドで「睿鼎資本(Reading Capital)」から資金調達しているほか、エンジェルラウンドで「同創偉業(Cowin Capital)」などから400万元(約6000万円)を調達済みだ。

同社のパートナー4人のうち3人は技術分野の出身で、張CEOは中国の名門「清華大学」で博士号を取得しており、所属していたラボは「マイクロソフトリサーチアジア(MSRA)」の協力メンバーだ。同社は現在、技術開発に注力しながら資金調達を模索している。
(翻訳・山口幸子)

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