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中国の消費者による2019年のラグジュアリー(高級品)消費は世界全体の35%に達し、海外旅行が盛んになったことで、中国人のラグジュアリー消費の70%が海外市場で行われた。しかし、感染症の流行によって海外旅行が禁止された上、接触を伴う実店舗での消費が制限されたため、今年のラグジュアリーの売上高は20~35%減少し、売上高が2019年の水準に回復するのは遅ければ2023年になると資産運用の「ベインキャピタル」は予想する。
今回の危機によって、実店舗を好んでいたラグジュアリーブランドは中国市場での方針転換を迫られ、電子商取引(EC)に力を入れ始めた。ラグジュアリーに特化したECサイトを運営する「寺庫(SECOO)」の李日学CEOによれば、EC拒絶から提携へとブランドの姿勢が変わったことは、ECプラットフォームにとって新たなビジネスチャンスだという。
アリババ、京東、寺庫の三つ巴
大手ECプラットフォームのアリババ系「天猫(Tmall)」と「京東(JD.com)」、ラグジュアリー特化をうたう寺庫はいずれもラグジュアリーECの主導権を握ろうとしている。
天猫は早くも2014年にラグジュアリー分野に着手し、「バーバリー」などが天猫に旗艦店を開設した。2017年にローンチされた「天猫奢品(Luxury Pavilion)」では看板ブランドが最新モデルを販売し、現在は約150社のブランドが出品している。2018年にアリババは、世界最大のラグジュアリーEC「YOOX NET-A-PORTER(YNAP)」と合弁会社を設立すると発表。また今年4月、天猫はアウトレットカテゴリーの「Luxury Soho」を新設し、中古ラグジュアリーを専門で扱うページも設置した。こうしてアリババは、自社内で完結するラグジュアリーのオンライン販売サイクルを構築した。
京東も天猫と同じくラグジュアリーECの拡大を目論んだが、その手法は異なり、投資に力を注いだ。2017年に3億7900万ドル(約410億円)を投じてラグジュアリーファッションECの「Farfetch」を買収すると共に、自社のラグジュアリープラットフォーム「Toplife」をローンチした。翌2018年にはLVMH傘下の投資ファンド「L Catterton」と共に、寺庫へ1億7500万ドル(約190億円)を出資。投資がほぼ完了した2019年、京東は自社プラットフォーム路線を諦め、ToplifeをFarfetch中国に併合した。Farfetchは現在、3400社余りのブランドを扱い、うち500社以上が提携パートナーとなっている。
天猫と京東はどちらも、総合ECプラットフォームとして大量のトラフィックを抱えているのが強みだ。一方、ユーザーターゲットが明確で無いという弱点も共通しており、この点ではラグジュアリーに特化する寺庫が有利となっている。
寺庫に強みはあるのか
中国のラグジュアリーECにおいて、寺庫は天猫と京東よりも経験が豊富だ。2008年に設立された寺庫は業界再編の混乱を抜け出し、2017年に中国のラグジュアリーECプラットフォームとして初となる米ナスダック上場を果たした。
ビジネスモデルを見ると、寺庫はオンラインとオフラインを並行して発展させ、世界で7カ所の体験センターを展開している。体験センターを通じて新規顧客からの信用を勝ち得るほか、既存顧客にはメンテナンスやVIP顧客交流といったサービスを提供する。これも寺庫がラグジュアリー業界の再編を耐え、天猫や京東と競争できている要因の一つだろう。
「中国ラグジュアリーオンライン消費白書」によると、寺庫を通じて商品を購入した消費者の36.3%がリピーターとなり、3回目の購入に至るリピート率は49%に達する。これはサービスだけでなく、寺庫の顧客ターゲットが正確なことを示している。
李日学氏は2018年、寺庫が世界で3000社以上のブランドと提携しており、その半数と直接契約を行っていることを明らかにした。現在、寺庫の提携ブランドは3800社に増えている。天猫と京東よりも長い経験を有することが寺庫の強みだ。
今後はサービスとブランドに加え、鑑定でも競い合うことになる。ニセモノは昔から続くラグジュアリー業界の難病だ。鑑定を手作業に頼っていた時代に寺庫は多くの鑑定士を抱えていたが、AI鑑定となった今では天猫や京東と同じ土俵に立っている。寺庫は2018年6月、ラグジュアリーの偽造防止にブロックチェーン技術を応用し始め、その1年後には中国科学院と共同でAI鑑定システムをリリースした。アリババと京東も2017年にブロックチェーンによるニセモノ監視を開始。技術に大金を投じることにおいて、寺庫はこの2社にかなわないだろう。
ラグジュアリー販売は実店舗が非常に強いという特徴があるため、これまでラグジュアリーECの成長はゆっくりで、欧州の老舗ブランドが一朝一夕に販売チャンネルを変更することはなかった。しかし、感染症の流行は各ブランドに「オンライン化」を迫り、ラグジュアリーECの競争が始まるきっかけを作った。現状を見ると、当面は強みを持つ天猫、京東、寺庫による三つ巴の局面が続くだろう。
(翻訳・神戸三四郎)
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