総規模1.5兆円、中国政府主導のスーパーファンドが中小企業支援に向けて始動

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中国政府が主導するスーパーファンド「国家中小企業発展基金」の設立から1カ月、早くも最初の一歩を踏み出した。

国家中小企業発展基金はこのほど、「第1次子基金管理機関選考の公示」(以下「公示」)を発表した。「公示」では、株式投資を通じてイノベーション型中小企業の成長を後押しする目的で、傘下ファンド運営管理機関の選考を行うことが示された。受付期間は8月5日から25日までとなっている。

同ファンドは国家が主導するファンドとしては、初の中小企業の支援に特化したマザーファンドであり、中央政府が直接リミテッドパートナー(出資者)として関わるのも初めてのことだ。ベビーファンド投資や直接投資により1000億元(約1兆5000億円)規模になるとのこと。その株主はこの上なく豪華な顔ぶれだ。筆頭株主の中国財政部をはじめ、「中国烟草(China Tabacco)」「上海国盛(Shanghai Guosheng)」「上海浦東科創(Pudong Kechuang)」「中国人寿(China Life)」などの国有企業が名を連ねる。

新型コロナウイルス感染症のあおりを受けて、多くの中小企業が経営上の難局に直面している。国家中小企業発展基金がこの時期に設立されたことには、市場や投資家を奮い立たせ、中小企業の資金繰りを助ける狙いがあるものと見られている。

高すぎるハードル

ただ、「公示」に付帯する「運営管理機関の申請指南」によれば、その選考基準は相当厳しいと言わざるを得ない。

まずファンド運営管理機関には、強力な資金調達能力が求められる。具体的には登記資本金が3000万元(約4億5600万円)を超えていることや、各ファンドの総規模が15億元(約230億円)を下回らないことなどだ。

また過去の実績も重視され、少なくとも10件以上の中小企業投資案件を成功させていることが条件となる。その上で終了した投資案件のリターン平均が50%以上、管理している投資組合の内部収益率(IRR)が12%以上、実現倍率(DPI)が80%以上、という3つの項目のうち1つを満たす必要がある。

そして発行市場で早くから投資を行っている必要があり、「中国証券投資基金業協会(AMAC)」に登録して3年以上経過していることなどが求められる。

この選考基準はかなりのハードルだ。同時に政府が望んでいる管理機関のイメージが浮き彫りになっている。先に行われたプレート除幕式でも、中小企業発展基金は「同じ条件の場合は、業界大手の企業やマザーファンド株主企業の設立したベビーファンド、ならびに中国中西部に設立されたベビーファンドを優先する」と言明している。

すでに5年のキャリアを持つスーパーファンド

国家中小企業発展基金の運営会社は今年6月に設立されたばかりだが、ファンドそのものはすでに5年近く運用されている。

2015年9月、「中小企業促進法」に基づいて、国家中小企業発展基金の設立が中国国務院常務会議で決定した。シード期や創業初期にある成長中の中小企業を支援する目的で、中央政府が150億元(約2300億円)を拠出して民間・国営企業、金融機関、地方政府などに参加を呼びかけたもので、総規模は600億元(約9100億円)に達した。その後、中小企業発展基金は4つのベビーファンドを立て続けに立ち上げ、それぞれ「国中創投(Guozhong Venture Capital)」「毅達資本(Addor Capital)」「東方富海(Oriental Fortune Capital)」「清控銀杏(THG Ventures)」に運営管理を委託している。

中国工業・情報化部が公表したデータによると、中小企業発展基金傘下の4つのベビーファンドは、2019年4月までにハイエンド設備製造、新エネルギー、新素材、バイオ医薬など戦略的な新興産業のプロジェクト222件に総額60億元(約910億円)以上を投資したという。

新型コロナウイルスの流行期間中には、4つのベビーファンドで20件以上の投資案件を成功させ、直接的および間接的な投資額は総額28億4800万元(約430億円)に上るという。(翻訳・畠中裕子)

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