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テスラ車にバッテリーを提供する韓国LG化学(LG Chem)は、欧州市場やテスラ上海工場での新エネ車増産を受け、今年は史上最高の業績が見込まれている。LG化学CEOは、メディアからのインタビューで「バッテリー事業の売上高は今年、過去最高の約13兆ウォン(約1兆1000億円)に達し、2025年には30兆ウォン(約2兆7000億円)に達する見込みだ」と述べた。
中国の大手EV用バッテリーメーカー「CATL(寧徳時代)」にチャンスは残されているかを検証する。
LG化学とCATLの現状
2020年、新型コロナウイルス感染症の蔓延は世界の自動車産業に深刻な打撃を与えたが、LG化学はほぼ無傷だった。
韓国のバッテリー業界専門市場調査機関「SNE Research」のリポートによると、LG化学の今年上半期のEV用バッテリー供給量は前年比82.8%増の10.5GWhで、市場シェアは24.6%だ。2位のCATLは総搭載量は前年比28.1%減の10.0GWh、市場シェアは23.5%である。
LG化学CEOは、「世界のEV車の市場シェアは急速に拡大している。現時点では自動車全体の3%だが、2025年までには10%になると予想される」と述べた。
欧州で急増するEV車需要
今年7月、欧州8カ国の新エネ車の販売台数は前年同期比214%増の9万9700台と急増した。そのうち、英国、フランス、ドイツの販売台数は、それぞれ前年同期比+286%、+298%、+289%である。欧州全体で2019年は56万台販売されたが、2020年には倍増すると予想されている。
証券会社「興業証券(インダストリアル・セキュリティズ)」のリポートによると、ドイツの新エネ車の登録台数は、補助金の開始により7月から爆発的に増加しており、市場の期待を大きく上回って前月比93%増の3万6000台に達した。前年同期比では289%増で、高成長が続いている。欧州諸国で新エネ車に対する補助金政策が新設されるにつれ、他の国でも同様の衝動買い的な状況が出現しており、欧州の年間売上予測は当初の85万台から110万台強まで押し上げられている。
CATLにチャンスはあるか
テスラのサプライヤーになって以来、CATLの株価は上昇し続けており、業績好調と相まって資金調達も順調だ。
2020年2月、CATLは100億元を投じ寧徳市にリチウムイオン電池工場を新設すると発表した。年間生産量は約45GWh、6工場の合計生産能力は300GWhに近く、230GWhの増強になる見込みだ。
CATLは高容量バッテリーではライバルのLG化学に差をつけられているとはいえ、安価なリン酸鉄リチウム電池ではコスト面で優位に立っている。
CATLは昨年9月にモジュール不要でセルを電池パックに直接組み込むCTP(Cell to Pack)という技術をを発表した。これにより省スペース化が可能になり、12〜15%のコスト削減とエネルギー密度10〜15%向上をも実現させた。CTPは欧州で市場開拓する際の目玉だ。南米フォルクスワーゲンのEV商用バン「e-Delivery」、独「Trailer Dynamics」の電気トレーラー「Newtone Trailer」、オランダ「VDL」の電気バスも既に同社CTPを採用している。
今年下半期、CATLがテスラへの供給を開始すれば、利益拡大はさらに拡大する可能性がある。また、メルセデス・ベンツとの提携が決まったことにより、CATLのハイエンド化にいっそう弾みがつくだろう。
提携合意によると、CATLはメルセデス・ベンツの乗用車にバッテリーとモジュールを、EV商用バンにはバッテリーシステムを提供するという。メルセデス・ベンツが重視するCATL独自開発のCTPは、中国で生産している高級セダンEV「EQC」が現在採用しているソフトパックバッテリーセルよりもバッテリーパックの使用効率が高く、総重量を減らしつつバッテリー容量を増やすことが可能だ。
メルセデス・ベンツという後ろ盾を得たCATLは今後、量的優位性から技術的優位性に移行するのは必至だろう。CATLが最近の逆境を切り抜けられた理由はここにある。
ではCATLに機会はあるか。もちろんだ。CATLが今後発展する機会は十分にある。ちょうどテスラの2番手サプライヤーに過ぎなかったLG化学が、テスラとパナソニックの決裂によりトップに躍り出るチャンスを手にしたように。
CATLの新工場が操業を始めれば、生産能力はさらに向上し、業績は大きく上方修正される可能性がある。CATLとLG化学の間で本当の勝負が始まるのは、その時だ。(翻訳・永野倫子)
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