ファーウェイ、ハイエンドチップ「Kirin」の生産停止 次なるグローバル化の切り札はHMS

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ファーウェイの独自ハイエンドチップ「Kirin」は9月15日以降、生産停止となる。

米国がファーウェイの供給先に圧力をかけているため、傘下のHiSiliconは主力のKirinチップの生産が継続できない見通しだ。ファーウェイのコンシューマー端末事業CEOの余承東氏は「AIチップを製造できなくなるのは我々にとって大きな打撃だ」と述べた。

「Kirinチップの性能、コンピューティング能力は非常に強力だ。これは新しい技術であり、我々はこの分野でリードしている」と余氏は述べるが、米国の規制により米国の技術を使用しているファウンドリ(半導体受託生産会社)がファーウェイのチップを生産することは禁止される。

「残念ながら半導体の製造において、我々はチップの設計は行うが、チップの製造は手掛けていない」と余氏は述べている。

チップの生産ができなくても、ファーウェイには別の切り札がある。昨年、米国による最初の制裁によってファーウェイは、グーグルのエコシステムであるGMS(Google Mobile Service)を使うことができなくなったため、独自のエコシステムHMS(Huawei Mobile Services)の推進を加速してきた。

一般的に海外の消費者がGMSに対して持つイメージは「グーグルアプリの全部乗せ」で、アプリストア(Google Play)、メール(Gmail)、動画アプリ(YouTube)、地図アプリ(Google Maps)、ブラウザ(Google Chrome)など主要なアプリを含むものだ。これらは海外ユーザーが基本的なスマホアプリとして必要とするものだが、米国による制裁が強化されてから、海外で販売されるファーウェイのスマホにはグーグルアプリが搭載されていない。

HMSはチップの生産ができなくなった後のファーウェイの次なるカードとなりそうだ。

大きな期待を背負うHMS

ファーウェイ消費者BGグローバルエコシステム業務発展部の章立副部長はインタビューに応じ、ファーウェイが新たに発表したHMS Coreに基づく「次世代ライブ配信ソリューション」について語った。これはライブコマースの際に背景を切り替えたり、商品のスペックをビジュアル化して表示することが可能な機能だ。

「次世代ライブ配信ソリューション」はファーウェイのHMSが描く大きなビジョンの中の1つのピースだ。

「次世代ライブ配信ソリューション」を実現するためにファーウェイは、DV Kit(画角切替)、HiAI(リアルタイム背景)、Camera Kit(ハイビジョン動画)、Wireless Kit(ストリーミングメディアの加速)などのサービスを開放しており、パートナーはデベロッパーコミュニティから必要なリソースをダウンロードし、自由に組み合わせることができる。

HMSをより魅力的なものにするために、ファーウェイは「ベンチャーキャピタル」ともいえる姿勢でオープン化に踏み切っている。

4年前に誕生したHMS Core 2.0にはアカウント、支払い、PUSH(開発者のためのツール)という最も基本的な3つのサービス(Kit)しか含まれていなかった。2016年当時、ファーウェイはオープン化に対して非常に慎重で、その後2019年までHMSはアップグレードされなかった。

しかし、米政府のファーウェイへの制裁によって状況は一変し、HMSの存在が一気に重要性を帯びてきた。

2019年、ファーウェイは3カ月の間に、全世界の開発者が最もよく使う、測位、地図、分析、広告などを含む12のサービスを選別し、同年8月にHMSを全面的にオープン化した。その後5カ月をかけて、HMS Core4.0をリリースした。

ファーウェイ内部でHMS事業の優先度は高く、5カ月ごとに新たなバージョンをリリースしている。今年6月末、ファーウェイはHMS Core 5.0をリリースし、新たに8つの開発者向けサービスと3つのツールを追加した。

今年8月、余氏は「HMSを全面的に搭載したファーウェイP 40はすでに世界中で販売を開始している。ファーウェイのアプリマーケットは世界の3大アプリマーケットのうちの1つであり、中国のアプリだけでなく、世界のアプリを取り込んでいきたいと考えている。我々は米国の制裁を打破し、グーグルのGMSに代わるグローバルなリーダーを目指していく」と述べた。

ファーウェイの取締役で戦略研究院院長の徐文偉氏は詳細なデータを挙げ、「HMSの海外進出は加速しており、全世界の月間アクティブユーザー(MAU)は7億人を超え、登録された開発者は160万人に達し、すでにHMS Core向けに8万以上のアプリが開発されている」と述べた。

HMSのターゲットは海外マーケット

チップ、ハードウエア、オペレーティングシステムはHMSエコシステムの基礎で、この上にHMS CoreとHMS Connectがある。HMS Coreはファーウェイのサービスをオープン化して開発者が使えるようにし、HMS Connectは開発者が開発したアプリやサービスをHMS対応にする際の橋渡しの役割をする。

HMSに対応するアプリにはファーウェイビデオ、ファーウェイミュージック、ファーウェイライブラリなどのファーウェイによる公式アプリのほかに、サードパーティーのアプリも含まれる。これらを総称してHMS Appsと呼ぶ。HMS AppsはHMS Core、HMS ConnectとともにHMS Coreエコシステムを構成している。

画像提供:ファーウェイ

消費者がHMSを搭載したファーウェイのスマホを選ぶかどうかは、HMSにどれくらいのアプリがあるか、それが使いやすいかどうかにかかっている。

実際のところ、ファーウェイは迅速にHMSのサービスをオープン化しているが、それでもHMSの開発者は全世界の開発者の10%に過ぎない。8万件というアプリ数もグーグルプレイの280万件には遠く及ばない。海外の消費者が使い慣れているグーグルアプリをファーウェイアプリに置き換えるのは容易なことではない。

2012年、アップルはiOS6で、デフォルトのグーグルマップをアップルマップに置き換えた際、製品の差があまりに大きかったため、わずか1週間の間に多くの苦情が寄せられた。このためアップルのティム・クックCEOは公式に謝罪文を発表した。

ファーウェイにとっては、アプリの開発はサードパーティーに託す方が良い。消費者業務HMS Coreプラットフォーム部の望岳部長は、ファーウェイの地図サービスKitは昨年8月にリリースされ、今年1~6月で利用量が16倍になったと語った。

しかし、グーグルアプリへの挑戦の道は険しい。ユーザーの長年の習慣を変えるには、これまでのアプリよりもっと良いものを出さなければならない。

この点について望氏は楽観的だ。「体験が十分に満足できるものであれば、ユーザーの習慣は徐々に養われていく。例えばQRコードは数年前はどのようにスキャンすればよいか誰も知らなかったが、今では皆がよく知っている。すでに一部のユーザーはファーウェイペイを利用して、銀行カードや交通カードを使うことが習慣になっている」と述べた。

サードパーティーの開発者がHMS対応アプリの開発にどれくらい積極的に取り組むかは、HMSが搭載されるスマホの出荷台数にかかっている。2020年第2四半期には、ファーウェイのスマホの出荷台数は前年同期比5%減の5580万台だったが、依然として首位の座にある。しかし、販売台数を牽引しているのは中国国内販売で、海外販売は前年同期比27%減だった。

インターネットサービスの年間売上高を見ると、アップルの480億ドル(約5兆770億円)、グーグル1400億ドル(約14兆8100億円)に比べて、ファーウェイの50億ドル(約5300億円)はまだ小さい。「インターネットサービスの利益率は非常に高い。我々は全世界に向けたビジネスを行いたい。中国の人口は14億だが、世界の人口は70億だ。先の道のりはまだ長い」と余氏は述べた。(翻訳・普洱)

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