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共同購入型ソーシャルEC「拼多多(Pinduoduo)」は、100億元(約1500億円)割引キャンペーンという魅力的な方法でますます多くの若者を引きつけている。現在はデザイナー・トイやスニーカー市場にも注力し始め、有名ブランドのコピー商品を販売するショッピングサイトという評判からの脱却を試みている。
拼多多は先日、WeChat(微信)のミニプログラム「多潮(DUO)」をリリースした。同ミニプログラムは若者がトレンド商品をめぐる意見や交流を行なうプラットフォームとして位置付けられている。
これまでアプリ「得物(POIZON)」や「nice」がSNSの運営を頼りに大々的な人気を博してきたが、ここにきてECプラットフォームを出発点に特定のトレンド商品コミュニティに触手を伸ばした拼多多は、若者ユーザーのニーズをつかめるだろうか。
トレンド商品でも地方都市を抑えたい拼多多
36Krが実際にページを開いてみると、ミニプログラムのトップページの背景はブラックで、ページのスタイルは中国版twitterと言われる「微博(ウェイボー)」に似ている。ユーザーはオススメのニュースフィードの中で、Like、コメント、シェアの全てを行ったり、好みのトピックスに参加したりできるが、モーメンツでは現時点で画像のシェアのみ可能となっている。
中心となる機能は写真と本文に付された「グループ」タグであり、主にスニーカー、服飾、デザイナーズ・トイなどの主流ジャンルをカバーしている。この黄色いタグをクリックするとグループを閲覧でき、加入すると同グループ内でシェアや仲間との交流などが可能となる。とはいえミニプログラムのリリースから日が浅いためユーザー数は少なく、トピックスへの参加人数は200人を下回っている。
時価総額が1000億ドル(約10兆6000億円)を突破し、中国国内の三大ECの仲間入りを果たした拼多多は、なぜ突然トレンド商品市場の開拓に乗り出したのだろうか。
第一の理由として大規模な地方都市市場のユーザーを確保することが挙げられる。やや意表をつく以下のようなデータがある。三~六級都市のトレンド商品の消費速度はすでに一、二級都市を大幅に上回っており、2019年のGMV(流通総額)は前年比571%に達しているのだ。拼多多が販売する人気スニーカーは相対的にメジャーな有名ブランドのものであり、100億元値引きキャンペーンという手法を再び活用することでこうしたユーザーを囲い込むのはさほど難しくないだろう。
スニーカー取引の先駆者的アプリ「得物」と「nice」
アリババ傘下の研究機関「阿里研究院(AliResearch)」が発表したインサイトリポートによれば、昨年のタオバオ(淘宝)関連プラットフォームにおけるトレンド商品の消費は前年比で1000万元超(約1億5000万円)も伸びており、伸び率は224%に達した。スニーカーの消費規模はトレンド商品市場において一貫して大きな位置を占めており、昨年の世界のスニーカーの総販売数は11億8980万足に達し、2010年の6億1350万足から倍近くに伸びている。
中国では「中年の大人は株の売買に、若者はスニーカーの売買にいそしむ」といわれるように、さまざまなスニーカー取引プラットフォームが機運に乗じて登場したが、なかでも「得物(「毒」から改名)」と「nice」は特に評判が高く、事業の出発点にも共通点がある。
2015年9月にリリースされた「得物」は、国内最大のスポーツ特化型BBSの「虎撲網(hupu.com)」に設けられたページを発祥とし、当初は商品の鑑定と画像シェアをメインの機能としていた。2年近くを投じてアプリのコミュニティコンテンツの構築に注力すると、2017年8月には満を持してスニーカー取引プラットフォームをリリースした。得物は「鑑定完了後に商品の受領」という取引方式を採用している。
得物が当初からスニーカー取引に着手していたのと異なり、「nice」はより間接的な方法で市場に参入した。2014年にサービスを開始した当初は、写真共有SNSという位置付けで、「画像+タグ付け」という方法によりおしゃれ好きなファッショニスタを含む一定数の若者ユーザーを取り込むことに成功した。2018年4月には商品取引ができるようになり、スニーカー二次取引市場のブームに乗った。
両アプリは当初のユーザー蓄積とコンテンツ運営の強みをもとに、スニーカーのPUGC(プロフェッショナルと一般ユーザー両方の特徴を備えたコンテンツ)コミュニティを急速に形成した。多元的な交流チャネルがスニーカー愛好者同士の交流ニーズを満たし、補足的なスニーカー情報や業界情報の提供なども、購入頻度の低い一部の消費者が購入欲求を抱く上で一役買っている。
トレンド商品コミュニティへの事業拡大の手段とは
現在の拼多多の「弱点」はやはりトレンド愛好者の定着率が高くないことだ。「多潮」のポジショニングと目標は、コミュニティのコンテンツで消費者を引きつけコンバージョンにつなげることで、プラットフォームのトレンド性を深めることであるのは言うまでもない。
「多潮」のフォローリコメンドとコンテンツをみると、得物やniceとは違い有名インフルエンサーや公式アカウントの権威性により重きを置いており、購入頻度の高い消費者に照準を合わせているようにみえる。
多潮は現時点でNike、DC、Y-3のほか、近年大々的にヒットしているFOG、AMBUSH、KITHなどを含む16ブランドの公式アカウントを抱えている。こうしたアカウントは「トレンド愛好者」にとって一定の吸引力がある。多くのトレンドブランドが中国国内でいまだに「微博」を開設していないなか、ファンが公式情報を得たい場合にはこれまで転載された公式情報に頼るか、またはVPNなどの手段を通してサイトを閲覧するしかなかったが、今後は「多潮」を通してこれを実現できる可能性が出てきた。
もし「多潮」が公式ブランドのアカウントを拡大できれば、「より純粋なトレンドコミュニティ」として有名ファッショニスタを呼び込むことも可能かもしれない。ユーザーのアイデンティティの肯定感を強化する「グループ」という概念およびコミュニティの運営は、今後の発展の基盤ともなるだろう。とはいえ、36Krが同アプリを実際に使用してみると、現在の公式アカウントはいずれもウェイボーやInstagramのコンテンツの転載であり、交流やコメントができないことが分かった。グループ機能も弱く、検索機能がないためユーザーの使用頻度が話題性に追いついていない。
コミュニティ体験の充実によりユーザーの囲い込みを実現し、ECでの経験と割引戦略で購入を促す拼多多のトレンド路線が成功するかに関しては、今後の検証が待たれるだろう。(翻訳・神部明果)
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