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電子契約市場では再び大手企業同士の駆け引きが繰り広げられている。テンセントはこのほど、WeChat(微信)上でミニプログラム「騰訊電子簽」をリリースした。同ミニプログラムの基本情報によれば、安全性が高くスピーディーなオンライン契約サービスをメインに提供するアプリであることが分かる。
36Kr傘下のメディア「Tech星球」は今年4月、バイトダンスが自社開発した「電子牽(Letsign)」について報じた。同プロダクトはオンライン契約プラットフォームであり、わかりやすくいえばブロックチェーン技術と暗号技術を採用し、電子文書に電子形式での署名を行うものであり、賃貸契約、提携協議、調達契約、労働契約などの業務にオンライン署名サービスを提供している。
電子契約では法的に認められる契約の締結がオンラインで完結するため、コロナ期間中には多くの企業やビジネスマンに真っ先に選ばれるプロダクトとなった。このため電子契約はバイトダンスの重要な事業展開の方向性となったが、同社に続きテンセントが騰訊電子簽により電子契約事業をひっそりと開始し、この新興市場をめぐる複数の大手企業による争奪戦に加わった。
テンセントの同ミニプログラムは他の電子契約プロダクトに比べよりシンプルだが、操作者の身分情報についてより厳格に定義していることが分かった。
同ミニプログラムで業務上の操作を行う前には厳格な身分認証が必要になる。システムではまずユーザーの基本データの入力が求められ、次に身分確認画面に移る。この画面では個人の身分情報を入力した後、顔認証または「数字読み上げ認証」の選択が必要になる。この数字読み上げ認証とはシステムによって表示される一連の数字を読み上げ、画面を録画するものだ。認証にパスするとメイン画面に進むことができる。
同ミニプログラムはまだテスト段階にあるため、契約機能を利用できるのは一部ユーザーに限られ、メイン画面には署名済みの契約情報が表示されない。お知らせメッセージによると、同ミニプログラムは顔認証を何度か行わないと使用できず、これにより安全性が確保されている。問題が発生した場合はメールからフィードバックを行うことも可能だ。
テンセントはかなり前から電子契約事業に着手しており、昨年3月には第三者電子契約・電子契約プラットフォーム「法大大(Fadada.com)」によるシリーズCでの3億9800万元(約62億円)の資金調達に加わった。これに続き今年2月には法大大と提携し、「企業微信(WeCom)」「微信(WeChat)」「騰訊企点(Tencent Qidian)」の3つのプラットフォーム上で法大大の電子契約サービスを全面リリースした。IDCのレポートによると、テンセントのリソースとユーザー数を後ろ盾に得た法大大は、2019年に26.6%の市場シェアでトップとなり、前年比55.3%増となった。
テンセントがこのたび自社開発した電子契約事業は、同市場に対する試金石であると同時に、WeChatの膨大なユーザーを頼りに同事業を成長させたい狙いがある。
同社の馬化騰CEOは従業員大会のスピーチで以下のように発言した。「我々が管理に関して直面している最大の課題は内部の組織構造だ。現在のテンセントはtoBに関する能力をさらに必要としており、組織構造を内部から外部へ体系的に整理する必要がある」
テンセントがtoB事業に対する自社の狙いに基づき電子契約事業に参入するのも当然といえる。同社の自動車、金融、人事サービス、教育保険、第三者決済、旅行、医療、物流、サプライチェーンなどの100以上の各個別業界においては、電子契約という重要なプロダクトによるサービスが不可欠となっているからだ。
加えてバイトダンス、京東(JD.com)も自社開発の電子契約サービスを今年リリースしているほか、アリババは「e簽宝(Tsign)」との提携を選択した。いずれも企業向けサービスを急速に補完できる電子契約事業の能力を見込んだものであり、to B業界への普及を加速させている。
IDCが9月に発表した最新データによれば、2024年までに中国の電子契約ソフトウエア市場の全体規模は1億8000万ドル(約190億円)に、また5年間の複合成長率は38.9%に達すると予想されている。急拡大する市場はまさに大手企業の垂涎の的となっており、テンセントの参入により同市場はさらなる盛り上がりを見せ始めている。
(翻訳・神部明果)
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