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半導体受託生産(ファウンドリ)中国最大手の「中芯国際集成電路製造(SMIC)」が2020年(1~12月)の財務報告を発表した。年間売上高は前年比25.4%増の39億700万ドル(約4300億円)、売上総利益は同43.3%増の9億2100万ドル(約1000億円)だった。親会社株主に帰属する純利益は7億1600万ドル(約800億円)と、前年から204.9%の増加となった。
これに先立つ2月には、2020年第4四半期決算(10~12月)と未監査の通期決算を発表していた。
米中貿易摩擦など負の原因が重なった2019年、SMICの売上高と利益は共に落ち込んだが、2020年は世界的なチップ不足により業績はV字回復を遂げた。
このところ自動車、電子製品、スマートフォンなどに必要な半導体チップの供給不足が深刻化しており、在庫を極力持たないジャスト・イン・タイム方式を採用する自動車メーカーが特に大きな打撃を受けている。
中国新興EVメーカー「蔚来汽車(NIO)」は3月26日、チップの供給不足を理由に安徽省合肥市にある工場での生産を5日間にわたり停止すると発表した。今年に入ってから、フォルクスワーゲン、トヨタ、ホンダ、フォード、GMなど自動車大手もチップ不足のため生産の一時停止を余儀なくされている。
さらに悪いことに、3月19日に自動車向け半導体の大手「ルネサスエレクトロニクス」の主力工場で大規模な火災が発生、12インチウエハーの生産ラインがストップし、全面復旧には3~4カ月を要するという深刻な被害となった。ルネサスの柴田英利社長は30日に記者会見を行い、チップの在庫が切れる4月下旬にはメーカーへの供給が停止するとの見通しを明らかにした。
チップの供給不足が長期化するなか、「TSMC(台湾積体電路製造)」やSMICなどファウンドリ大手は生産能力の増強に力を注いでいる。
SMICは3月17日、深圳市政府と提携を結び28nm以上のプロセスを採用した新工場を建設することを発表した。新工場は2022年に生産開始の予定で、12インチウエハー月産4万枚を目指す。投資総額は23億5000万ドル(約2600億円)に達するとみられる。
中国におけるチップの受託生産は今後の増加が見込まれるものの、2020年のチップ需要が8インチウエハー換算で月産200万枚に対して、実際の供給能力は月産150万枚にとどまっており、チップ不足は深刻さを増すばかりだ。
米調査会社ICインサイツによれば、世界最大手TSMCの月産能力270万枚と比較するとSMICは月産わずか40万枚ほどで、中国第2位の「華虹半導体(Hua Hong Semiconductor)」は月産22万枚と、生産能力の拡大が急務となっている。
生産力強化のほかに、先端プロセスの開発も大きな課題だ。
先端プロセスの研究開発に必要な資金やマンパワーは加速度的に増加を続けている。例えばTSMCは今年1月に、本年度の年間支出が過去最高の280億ドル(約3兆1000億円)に膨らむとの見通しを発表した。増大する研究開発費に耐えかねて、先端プロセス技術の開発から撤退するファウンドリが後を絶たない。現時点で開発競争に身を投じているのはTSMC、インテル、サムスンくらいだ。
SMICは28nm、14nmなどのウエハーに関する技術は成熟しているものの、米国の禁輸措置の影響で10nm以下の先端プロセスの研究開発は大きく滞っている。仮に米国が技術輸出の制限を緩めたとしても、チップの製造プロセスは半導体設備、材料、EDAツールなどインダストリアルチェーン全体の連携が不可欠で、これら分野の多くが空白状態にある中国での技術開発は困難を極める。
「方正証券(Founder Securities)」のテック業界チーフアナリスト陳杭氏は、SMICが行うべきこととして第一に国内のチップ安定供給を確実にコントロールすること、そして現有生産能力の正常な稼働を維持していくことを挙げた。先端プロセスのブレイクスルーに関しては、企業単独で成し遂げられるものではなく、国内のインダストリアルチェーン全体が一丸となって挑むべき体系的なプロジェクトだと語った。
(翻訳・畠中裕子)
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