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5月28日の新エネルギー車の販売台数を統計するサイト「EV Sales」のデータによると、欧州におけるテスラの「Model 3」の4月の販売台数は1244台にとどまり、3月の2万8184台から95%も減少した。
中国では、4月のテスラの販売台数は2万5845台だったが、そのうち1万4174台が輸出用だ。つまり中国本土では1万1671台の販売にとどまったことになり、3月の3万5478台から67.10%減少している。これはテスラが中国国内で生産を開始して以来最大の下げ幅だ。
欧州と中国での販売数が同時に減少したことは偶然ではない。顧客トラブルや品質面での問題が浮き彫りになるなか、テスラは対策を余儀なくされている。
欧州市場での低迷の原因
テスラの欧州での販売減少には、季節要因や新型コロナ禍で輸出が制限された影響も大きい。しかし、最大の要因は欧州の自動車メーカーが新エネルギー車を続々と発売したことである。
テスラの販売が好調だった時期は、欧州市場においてはほとんど競合がいなかった。しかし、今はフォルクスワーゲン、BMWなど大手メーカーが新エネルギー車を発売しており、市場の状況が一変している。デンマークの銀行「サクソバンク」のPeter Garnry氏は、今年1月に、ルノー、フォルクスワーゲン、ヒュンダイの新エネルギー車がテスラよりも好調であるとして、テスラの株価の下落に備えるべきだと警告を発している。
なかでも好調なのがフォルクスワーゲンだ。2020年9月に発売されたEVの「ID.3」は、当月に欧州の新エネルギー車販売ランキングでいきなり第3位となり、最新の2021年4月の販売ランキングでは、フォルクスワーゲンの「ID.4」と「ID.3」のワンツーフィニッシュとなった。
同じくフォルクスワーゲングループ傘下で、テスラと同価格帯のアウディのEV「e-tron」も好調だ。当該車種の販売台数は2021年4月に前月比19.45%増となり、ランキングの第12位につけた。
競合他社の好調のほか、テスラ自身にも課題がある。まずは品質面だ。調査会社の「J.D.Power」が発表した2021年度自動車耐久品質調査によると、テスラ車の100台あたりの不具合件数は176件となり、下から4番目だった。
また、5月25日のノルウェーの報道によると、ノルウェーの裁判所がテスラに対し、購入者一人あたり1.6万ドル(約170万円)の賠償金を支払うよう命じたという。テスラが購入者に無断でソフトウェアのバックグラウンドアップデートを行ったことによって、電池の充電速度と容量が制限されてしまったことに対する処罰だ。当該車種はノルウェーで1万台以上販売されている。
さらに、テスラがフランスとイギリスで修理センターをそれぞれ10カ所と13カ所しか開設していないことなど、アフターサービスの不備も購入者を遠ざける一因となっている。
中国での現状とテスラの対策
中国では、4月19日の上海モーターショーである女性から抗議を受けた事件が注目されるなど、テスラはトラブル続きだ。それに伴い、4月の販売台数が急減したことは上述のとおりである。
テスラと対照的なのが中国の新興EVメーカーの好調さだ。4月の「蔚来汽車(NIO)」、「理想汽車(Li Auto)」、「小鵬汽車(Xpeng)」の販売台数はともに5000台を超え、テスラのModel 3に迫る水準となった。
不調は株価にも影響し、現在のテスラの株価は2020年の最高値から20%近く下落している。こうした状況を前に、テスラは中国市場に対し一定の譲歩を示した。最も非難されている、車両が収集したデータを国外に移転するという件について、テスラは中国でデータセンターを立ち上げ、中国市場で販売された車両が収集したデータをすべて中国国内に保存することを約束し、さらに購入者向けの情報閲覧プラットフォームを開設すると発表した。
一方、中国以外の市場を開拓する動きも活発だ。5月21日にモスクワで行われたファーラムにおいて、イーロン・マスクCEOはロシアで工場を建設すること、ロシア、カザフスタンなどでの販売を視野に入れていることを語った。欧州では、テスラのベルリン工場が建設中で、ほかにもインドのバンガロールで工場を建設する意向を示すなど、現地生産によって現地市場をさらに開拓することをテスラは目指している。
(翻訳・小六)
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