「嗅覚市場」は視覚・聴覚の2倍!においで客の満足感高める中国企業「気味王国」
これまでにない消費体験を提供するために、「におい」に着目したスタートアップが中国で登場した。臨場感が大幅にアップするとして、映画館での導入が始まっている。
2015年4月に設立され、2017年に事業を本格化させた「気味王国(SCENTREALM)」は、従来の香料メーカーとは一線を画するアイデアで、未開拓の「嗅覚経済」シーンへ切り込む。嗅覚が大脳と密接な関連性を持っており、人の認知や意思決定に影響を及ぼす点に注目し、ブランド認知に紐づけられると考えた。創業者でCEOの黄剣煒氏は、「商業空間に香りを提供するというと、これまでは単一の香りで空間を満たすことが考えられてきた。我々は複数の香りを同時に用い、ある特定のシーンを再現することを主眼に置く」と説明する。日常生活で接触する大部分を網羅する1700種類のにおいを格納するデータバンクを構築し、ネットワーク化しているという。
まずは映画館への提供をスタートした。映画のシーンに合わせて臨場感を高めるにおいを拡散する。現段階では観客の頭部に装着するにおい拡散器を導入している。通常の映画観賞券に10元(約160円)の追加料金を支払うと拡散器を貸し出すシステムだ。「一度体験した観客はほぼリピートする。嗅覚で感じる映画の臨場感は、そのくらい特別なものだ」と黄CEOは自信を見せる。

頭部に装着する映画館用におい拡散器「X-Scent 2.0」
ただし、課題も存在する。においの持続時間や拡散範囲をどのようにコントロールするかという問題だ。映画を例にとるなら、シーンの切り替えに合わせてにおいも切り替えたり、消したりできるのか。また、においの保管方法や保存期間に関する問題もある。多くの実験を経て、現在ではにおいの変質を防ぎ、比較的長く保存できる高分子素材を採用しているという。また、映画館用機器の次世代機種ではにおいの拡散範囲を25センチ以内にとどめ、においが混ざったり残留したりするのを防ぐ。
気味王国は製品開発に専念し、販売は外部に委託している。すでに約100作品の映画に製品を提供し、年内に国内50館の映画館で導入が予定されている。2019年には300館への導入を目指す。映画館側からも新たな集客ツールとして好評だという。

将来的には小売、旅行、自動車、医療などへの応用を目指す。小売現場ではシャンプーや洗剤などの香りを購入前に確認できたり、飲食店のメニュー選びに役立てたりといった用途を想定している。そのほか、博物館などでより臨場感のある展示を提案できると考える。黄CEOは「視覚や聴覚に関連する事業に大きな商機があると考えている。具体的な数字を出すのは難しいが、視覚・聴覚関連の市場と比較して2割ほどの市場規模があると推算する」と述べている。
気味王国は2017年にプレAラウンドで資金調達後、評価額1億6000万元に達した。従業員はおよそ100人。創業者の黄剣煒はアリババ出身で、過去にも起業経験を持つ。
(翻訳・愛玉)