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早稲田大学本部キャンパス(新宿区)の西門を出て30秒歩いたところに、中国のスナックを取りそろえた駄菓子屋「高馬零食舖」がある。オーナーは早稲田大学大学院でマーケティングを学んだ元留学生の劉さん(26)。「小学校や中学校の校門近くにあった駄菓子屋を再現したかった」と大学院を修了した2021年の6月、母校のすぐそばに店を出した。今では早稲田に留学する中国人の「憩いの場所」になっている。
高馬零食舖の店内にはグミやチョコレートなどの菓子から、インスタントのラーメンやタニシヌードル(螺螄粉)、大豆ミートを使ったドライソーセージのようなスナック、レモンティーやココナッツミルクなど、約200種類の商品が並ぶ。ほとんどが50円から300円で、中華物産店に比べてかなり低価格だ。
高田馬場や早稲田周辺には大学や語学学校が多く、中国人向けに中華料理を出す「ガチ中華」の店が急増している。「ガチ中華」エリアとしては池袋や西川口も有名だが、高田馬場の特徴は中国各地の若者が集積する点。
定番の火鍋や東北料理に加え、池袋や西川口には少ない湖南料理や、重慶料理、広東料理などバラエティが豊富なのだ。「高田馬場」の略称として中国人の間で定着している「高馬」から名前を取った高馬零食舖も中国人留学生をターゲットにする。
子ども時代に通った駄菓子屋を再現
オーナーの劉さんは山東省出身。2018年に大学院進学で来日し、修了して店を開いた。
早大本部キャンパスには複数の出入口があるが、西門近くに出店した理由を「まず、中国人留学生が多い商学部や政治経済学部の講義棟から近いこと。そして西門が一番人の流れが多いことですね」と説明した。西門は高田馬場から早大まで20分ほど歩く通称「馬場歩き」の学生たちが多く通るため、彼らが足を止めて店に入る可能性に期待できるという。
劉さんによるとお客さんのほとんどは早大に通う中国人留学生。彼らはお店に入ると、小さい頃に食べていたスナックを目にして懐かしがる。一方、たまに入ってくる日本人は中国版ベビースター「魔法士」のような中国独特の漢字のパッケージを見て「厨ニだ!」と面白がることが多いそうだ。
筆者も店舗でソイミートで作った麻辣ステーキ(300円)と、グルテンミートのスパイシーBBQ風味(50円)を購入した。どちらも大豆や小麦粉を使って肉の食感を再現したベジタリアンスナックだ。ソーセージとエリンギを足して2で割ったようなむっちりとしていて、肉だと言われても信じてしまうような食感だった。麻辣ステーキは唐辛子の辛さと花椒の痺れが強く、パンチが効いていて、グルテンミートのスパイシーBBQ風味はクミンの匂いが香るスパイシーな味わいだった。駄菓子というよりはお酒のアテにもってこいのおつまみメニューかもしれない。
駄菓子の販売価格は50円から300円の間で、大した売り上げにはならなそうだが、高馬零食舖の場合、店舗よりもオンラインの販売が大きいという。中国版LINE「WeChat」のミニプログラム(アプリ内アプリ)上にオンラインストアがあり、3000円以上購入で送料300円、6000円以上で送料無料とまとめ買いができるようになっている。「オンラインでは、単価が高めのタニシヌードルやインスタントラーメン、ドリンクの売れ行きが好調です。」と劉さん。他にも中華専門フードデリバリーサービスの「Hungry Panda」やWeChatの店舗アカウントからも直接購入できるそうだ。
SNS映えはしなさそうな見た目や、パッケージの不気味さから、ガチ中華のように日本人の間ではあまり流行らなそうな中華駄菓子だが、早稲田大学の約5000人(2021年11月時点)の留学生のうち実に3374人が中国人。周辺には中国人向けの語学学校も多くあり、マーケットは決して小さくないのだ。
阿生:東京で中華を食べ歩く26歳会社員。早稲田大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、現地中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内に新しくオープンした中華を食べ歩いている。Twitter:iam_asheng
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