医薬品開発にAI・ロボットを導入、自動化を推進 「Insilico Medicine」がシリーズDで約80億円調達

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エンドツーエンドのAI(人工知能)を用いて臨床段階のバイオ医薬品を開発する「Insilico Medicine(英矽智能)」がシリーズDで6000万ドル(約80億円)を調達した。今回新たに出資に加わった米西海岸の大型資産管理会社や「渤海華美股権投資基金管理(BHR Equity Investment Fund Management)」のほか、これまでInsilico Medicineに出資してきたウォーバーグ・ピンカス、B Capital Group(波士頓投資)、啓明創投(Qiming Venture Partners)なども出資に参加した。さらにInsilico Medicine創業者でCEOのAlex Zhavoronkov博士も自ら出資している。

今回調達した資金は、同社で最も進捗が速く、すでに第Ⅰ相試験(臨床試験フェーズ1)まで進んでいる肺線維症プロジェクトとそのAIプラットフォーム「Pharma.AI」のさらなる開発を含む研究開発パイプラインの推進に充てられるほか、完全自動化されたスマートロボットによる創薬研究所やバイオデータファクトリーの構築を推進し、同社のデータリソースを継続的に補完していくことに充てられる。Insilico Medicineは昨年6月にもシリーズCで2億5500万ドル(約340億円)を調達している。

Insilico Medicineは2014年以来3つのAIプラットフォームを作り上げた。「PandaOmics」が標的検出、「Chemistry42」が化合物設計、「InClinico」が第Ⅱ相・第Ⅲ相試験の結果予測と、医薬品開発が抱える3つのペインポイントに焦点を当てている。21年2月からは先端分野に対応する製品ポートフォリオを構築し、がん、線維症、免疫、CNS(中枢神経)をカバーする約30の研究開発パイプラインを有する。そのうち8プロジェクトは前臨床試験段階で候補化合物に指名され、さらに複数の大手製薬企業と提携関係を築いた。世界の製薬会社上位20位のうち9社が、同社のAI医薬品開発プラットフォームの導入を許諾している。

今年3月には同社のAI創薬(AIDD)プラットフォームで生成された肺線維症の低分子阻害剤が初めて臨床試験の実施許可を得て、第0相のマイクロドーズ試験(超微量の新薬候補物質の投与試験)を終え、現在は中国とニュージランドで健康なボランティアを対象とした第Ⅰ相試験に入っている。

ZhavoronkovCEOによると、上述の抗線維化剤プロジェクトの候補薬物は、新化合物の設計以外に薬剤標的の検出や発見もAIが行ったといい、AIDDが持つ重要なポテンシャルを充分に証明して見せたという。医薬品開発大手「復星医薬(FOSUN PHARMA)」と共同で進めるQPCTL(グルタミニルペプチドシクロトランスフェラーゼ様タンパク質)プロジェクトでもマイルストーンとなる進展があった。新たながんの免疫療法に用いられる「ファーストインクラス(画期的な医薬品)」となり得る、QPCTLを標的とする前臨床候補薬物を発見したのだ。

その他に社内で進行中のプロジェクトでは、新型コロナウイルス(COVID-19)治療に用いる新型3CLプロテアーゼ阻害剤の前臨床候補や、合成致死標的であるメチオニンアデノシルトランスフェラーゼ2α(MAT2A)とユビキチン特異的プロテアーゼ1(USP1)の2つを標的とする抗がん療法を含む7件が新薬臨床試験の申請段階に入っている。

Insilico Medicineが現在までに築いてきた事業マトリクスは前出の3つのAIプラットフォームを用いて顧客企業にサービスを提供する以外に、自社でも創薬パイプラインを有する構成となっている。

Insilico Medicineが現在建設を進めているのは、「ロボット+AI」を使って完全自動化した医薬品開発研究所で、場所は蘇州市のバイオ医薬産業パーク「BioBAY」にある。現在の課題は、検証済みのAIプラットフォームをロボット研究所に応用し、同社の創薬力をさらに自動化していくことだとZhavoronkovCEOは述べる。さらに「我々はさらなる高みを目指している。まずは動物実験を行い、動物の細胞や組織を解析することから人類生物学に関する知見を深めていきたい。動物の組織や細胞から標的を検出し、検証し、人類と結びつけていく方法を学びたいのだ。確実に動物とヒトのデータを完全一致させたい」とも述べている。

このスマートロボット研究所プロジェクトはAIとオートメーションの2つの要素で構築され、4種類のロボットが研究所の日常運営を担当し、24時間無休でハイスループットスクリーニング(HTS)、ハイコンテントスクリーニング(HCS)、生化学解析、細胞解析などの作業を行う。また、この基盤構造が支えることでデータ収集・分析・再利用が完全に自律化され、医薬品開発とアルゴリズム最適化がバージョンアップを繰り返すようになる。

ZhavoronkovCEOによると、スマートロボット研究所は現段階では同社の初期の創薬AIモジュールである標的検出プラットフォーム「PandaOmics」と化学合成プラットフォーム「Chemistry42」のみに接続している。今年第3〜4四半期には稼働をスタートする計画だ。
(翻訳・山下にか)

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