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アリババが小売り大手「百聯集団(Bailian Group)」に資本参加して2年間、ようやくニューリテールプロジェクトが発足した。
最近、上海の大寧中心広場に「逸刻(Yike)」というハイエンドコンビニが姿を現した。これは「上海逸刻新零售網絡技術有限公司」の店舗だ。企業調査会社「企査査」のデータによると、同社は2018年11月に、百聯の完全子会社が5億7000万元(約94億円)、アリババが4億3000万元(約71億円)、合計10億元(約165億円)を出資して設立された。
上海最大の小売グループである百聯は、複数のスーパーと貨物会社の合併によって2003年に設立された。上海市民になじみのある百貨店の「第一百貨」や「第一ヤオハン」、「聯華(Lianhua)スーパー」、「華聯(Hualian)スーパー」、コンビニ「快客(Kuaike)」に加え、薬局や食品専門店まで手広く展開している。上海のビジネスエリアやコミュニティーをカバーしているため、立地の面から高いビジネス価値を持っている。また、同社は上海だけで10万平米以上の倉庫を有しているなど、物流業務を含めサプライチェーンにも深く切り込んでいる。
中国華東地域のオフライン販売において百聯が持つ強い影響力に目をつけたアリババは同社との提携を決めた。
すでに開示されている情報によると、逸刻にはスーパーに近い大型店とコンビニに近いサテライト店の2タイプがある。今のところ構成比率や店舗数は未定だというが、基本的には、大型店で消費者にニューリテール業態を体験させ、コンビニ式のサテライト店で業績拡大を進める考えだ。
コンビニと言っても、逸刻は従来型のコンビニとは大きく異なり、様々なオフラインの小売業態をミックスしたような形だ。逸刻の石霊路店はアリババのスーパー「盒馬鮮生(Hema Fresh)」などのレイアウトに倣って、一階に売り場と倉庫、二階に加工エリアを配置した、レストランとスーパーの複合体になっている。各フロアには約500平方メートルの巨大倉庫があるため、将来的にはここから周辺のサテライト店に商品を配送する予定だ。
逸刻が目指しているのは従来型のコンビニブランドの一つになることではない。というのも百聯傘下には700店舗を展開しているコンビニエンスストアチェーン「快客」があり、競合するブランドを作る必要は全くないからだ。実際、両者はそれぞれ独自に運営されている。
アリババCEOの張勇氏は「これまでに見たことがないようなビジネスモデルを模索し、消費者が集まるグルメとアミューズメントの場を作り出せれば、選んだ道が正しかったということになる」と述べた。
関係者によると、主導権を握ってこのプロジェクトを運営しているのは百聯で、アリババは資金や技術を提供し、トラフィックの橋渡しをするにとどまっている。アリババにとって今回の投資は、確実で安定したニューリテールのビジネスモデルを獲得するための、いわば実験だろう。
しかしこれには大きなリスクが潜んでいる。同ニューリテールプロジェクトは位置付けが曖昧で、消費者に与えるイメージもはっきりしない。そのため大規模な展開が難しく、黒字達成にもほど遠い。さらに、類似の業態が複数存在することで、組織内の競争や資源の浪費を招く可能性も高まっている。
「北京商報」によると、現在逸刻は上海で20-30店舗の出店が決まっているが、当初の計画では2019年中に500店舗をオープンするとしている。だが逸刻の位置付けが定まらないうちは、予定通り500店舗を展開するのは極めて難しいだろう。
(翻訳:小林香奈子)
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