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フードデリバリーを中心とした生活関連O2Oサービス大手「美団点評(Meituan-Dianping)」が今月6日、法人向け事業として新たな物流サービス「美団配送」を正式スタートした。カルフールを筆頭に、飲食・青果・薬品などの小売企業が顧客に名を連ねている。
昨年9月に香港上場を果たした美団はそれに先だって、配達事業「美団閃購」も展開している。スーパー、コンビニ、生鮮食品、生花などを扱う小売店と連携し、受注から30分以内に商品を購入者に配達するサービスだ。
今回、美団は新事業を通じて自社の物流網を外部に開放することにより、同社の加盟企業でなくても同社の物流サービスを利用できるようにした。
中国のデリバリー市場は、取扱い商品数・サービス網・ユーザー数ともにすでに一定の規模に到達している。美団がその次に見据えているのは、加盟企業とのより緊密な連携だ。同社のシニアバイスプレジデント王莆中氏は、「配送事業を我が社のインフラと位置づけ、より多くの業界と連携し、さらに多様な商品をユーザーに提供したい」と述べる。
競合が乱立する即配業界
中国では2014年、同一市内即配サービスに参入する企業が続出した。2016年になると、フードデリバリーを中心としたO2O事業がさらなるポテンシャルを発揮する。オンライン注文で、生花やケーキ、生鮮食品、医薬品などがすぐに自宅へ届くサービスが登場したのだ。
その結果、即配事業とO2O事業が結びつくのは当然の成り行きだった。美団創業者の王興氏はこれを「インターネット発展史の後半戦」と表現し、美団のライバル企業「餓了麼(Ele.me)」創業者の張旭豪氏は「即配事業は長期にわたって競争力の中核となる」と見据えている。
ただし、即配事業に参入する企業はECから物流まで多岐にわたる一方、いずれも受注件数の拡大のみに目を奪われがちで、差別化に成功する企業はほぼなく、どの企業のサービスも似たり寄ったりというのが現状だ。
その中で、美団が持つ強みは、これまでにフードデリバリー事業で培った技術力、配送網、マンパワーをほぼそのまま新事業に流用できることだ。
ただし、前出の餓了麼が擁する配送事業「蜂鳥配送(Fengniao)」と激戦になるのは明らかだ。フードデリバリーでは後塵を拝した餓了麼だが、その背後には、出資者であるアリババグループの巨大なリソースが存在し、これまでにスターバックスのデリバリー業務を一手に受託したという実績もある。
法人向け事業でさらなる成長を狙う
美団配送は、これまで自社の中核事業であるデリバリー事業を支えてきた物流チームを第三者に開放した。このスキームはEC大手「京東集団(JD.com)」傘下の「京東物流(JD Logistics)」にも類似する。
同じ稼働時間、同じ配送距離なら、その間にさばく受注件数が多ければ多いほど人的コストの効率を上げられる。フードデリバリーに特化した場合、業務には必ずピークタイムとアイドルタイムが存在するが、そのアイドルタイムの人員をフード以外の商品配達に回すことができる。
美団のフードデリバリー事業は過去2年間、同社の総売上高の6割前後を占めているとはいえ、実は赤字状態が続いている。また、売上総利益率は、80%以上で推移する予約サービス事業やホテル・観光事業と比べて、フードデリバリー事業は2018年時点で約10%にすぎない。
また、配達員にかかる人件費は同社最大の出費要素となっており、過去2年間では出費全体の43%を占めている。一方で、フードデリバリーの受注件数は増加ペースが鈍りはじめており、2017年には158.04%だった成長率が2018年には63.93%まで落ち込んでいる。一方、配送1件あたりにかかる人件費は、2017年の4.48元(約71円)から2018年の4.77元(約76円)に上昇している。
中国インターネットデータセンター(DCCI)による2019年2月の発表では、フードデリバリーサービスのユーザー数はすでに頭打ちとなっている。つまり、ユーザー増による経費率の低減は実現不可能になったということだ。そこで、美団は新たな収益源を求めて消費者向け事業から法人向け事業に目を向けつつあるという。
美団は今年、法人向け事業に110億元(約1700億円)を投じて、加盟店のマーケティング、配送、IT化、サプライチェーン構築、経営、ファイナンスなどを支援し、店舗の立地選定から内装、SaaS構築、決済端末設置、融資まで一括でまかなえる体制をつくる予定だ。
このほど開放した美団配送は、あくまでその一環だ。受注件数はすでにフード系を除いても100万件を突破しているという。
(翻訳・愛玉)
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